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  ●京都教育センター通信 
復刊第121号
 (2017.11.12発行) 
 
話し合いより、心がけ?―民主主義を学ぶ学校―

     
西條 昭男(京都教育センター「ひろば」編集長・ 京都市つづり方の会)

 

 今秋、近隣の小学校で授業を参観する機会がありました。5年生の教室を覗くと道徳の授業です。テーマは、「いらなくなったきまり」。

  教材の概要―ある学級で、それぞれの子どもたちが家から本を一冊ずつ持ち寄って学級文庫をつくることになった。しかしそのうち表紙が破られたり、使い方がだらしなくなってきたので「学級文庫の使い方」を議題に、きまりを作ろう派、いらない派で話し合ったものの結論は出なかった。
 翌朝、登校してみると本が整理されている。A子(話し合いでは発言しなかった)が整理していたのだ。「きちんとしているところには、いいかげんに置けない気分になるようで」他の子どもたちもA子にならって整理しだした。学級文庫にはきまりはいらなくなった。

 授業は、前半を教師が読み聞かせた後、きまりを作ろう派といらない派、双方の気持ちを考えさせ、発表させる。その後、後半部分(結論)を教師が読み聞かせ、そこで考えたこと(感想)をノートに記入させて終わりました。

 さて、教室の後ろに立って授業を見ていたのだが、どうしようもない違和感にムズムズしてきました。そのムズムズ感は子どもや教師に対するものではなく、道徳教材そのものが持つ思想性に対してでした。

  いくつかの疑問があります。
①「学級文庫の使い方」というからには、どんな使い方(ルール)がよいかを論議するのが肝心かなめのはず。だが教材では、それ以前のルールを作るか作らないかという論議に終始させ、話し合いは不成立のままで終わらせています。粘り強く活発に話し合いを続けさせるべきではなかったでしょうか。(きまりはいらないとする結論へ導くための意図的な筋書なのでしょう)

②教材は、何故A子を話し合いの場では発言させず、一人で本の整理をさせたのでしょうか。率先して行動で示す(「よい子」の「よい行い」)ことを否定するものではありませんが、文脈では、みんなで話し合ってモタモタしているより、一つの行動で一発解決、そうすればみんながついてくる、と読めます。みんなで話し合ってルールをつくるより、心がけが優先されており、話合いの軽視、或いは否定とも取れる内容です。

 新しい社会―多様な価値観を共有し、共に平和に生きるーの主人公になる子どもたちの学びとして、これでいいのでしょうか。

 心がけも大切ですが、自分たちの問題解決のためには、いろいろ知恵を出し合い、少数意見を大事にしつつ、活発に話し合って一番いいと思われる方法をさぐり、みんなの合意形成をはかる。その上でみんなで行動する。この民主主義の原則を学ぶことこそ、新しい人、子どもたちに必要な学びです。

 民主主義を学ぶに最もふさわしい所はどこか、それは学校です。多様な子どもたち(家庭も価値観も能力も個性もそれぞれ違う)が集まり、集団生活をする学校は、まさに民主主義の学びに最も適しているではありませんか。

 国会でまともに話し合おうとせず、民主主義を足蹴にする権力者たちが政治を動かしている現在日本。子どもたちには民主主義とは何かを学ぶ権利があります。

 学校で子どもたちに民主主義を教えてほしい、先生と子どもたちが共に未来を語り合う学校であってほしい、これは大勢の市民の願いです。はたして学校にはそんな市民の願いが届いているでしょうか。

 *【出典】「いらなくなったきまり」―来年から使用される道徳教科書(光文書院版・六年生)

 

みんなで21世紀の未来をひらく教育のつどい 教育研究集会2017in岡山

体育・健康・食教育分科会「中学校での食育(食教育)」

       野中 明子 (府内中学校栄養教諭)


 

はじめに

 本市は平成18年に4町が合併してできた市で、そのうち1町の中学校ではすでに中学校給食が実施されていた。合併したことにより、同じ市内なのだからどこの中学校も給食を実施してほしいという要望もあり、アンケート調査を経て、中学校給食導入計画がスタートした。

※「あり方検討委員会」の答申では、

①今日の中学生の食に係わる現状を踏まえ、食に関する幅広い取組を中学生全体に進めていく上でも学校給食の意義は大きい。

②この地域では米を中心に農作物が生産・供給されており、地産地消、食材への感謝、地元を愛する心を育てることにつながる。米飯給食を中心とした食生活の形成、伝統的な食や郷土食を学校給食に取り入れることは、地域の食文化の継承と発展という点で重要である。

③親子の絆を深める架け橋の役割を果たしてきた「弁当」を、教育課程に「弁当の日」として位置づける。

 という3点が出され、これまでから小学校で実施されてきた給食の形を中学校にも広げていく方向が進められた。


1 本校の給食指導について

 生徒数412名、学級数14(特別支援学級2学級を含む)の中学校。市の中学校給食導入の計画により、平成26年4月から給食を実施している。

①平成26年度は配膳の際、給食当番以外の生徒は廊下に出て配膳が終わるのを待ち、準備ができた状態で教室に入るという形態をとっていた。

②平成27年度からは、当番以外の生徒は、自席で読書をして配膳が終了するのを待つ「配膳読書」を取り入れた。給食実施による時程表の変更で朝読書の時間が隔週になり読書量が減少したこと、廊下で待っている時間を有効に使い、静かに読書をすることで心を落ち着かせて食事に向かえるように、静かな中で配膳できるようにという目的で導入した。

③担任・学年担当教師はもちろん、担任外の教師も白衣を身につけ、配膳室前や廊下で身支度の指導や安全に運搬できているか見守り、全教職員が指導にあたっている。

④「給食の手引き」「朝活指導メモ」の給食メモを活用し、共通理解のもと指導を行う。

 「給食の手引き」は、年度当初の学級活動で、生徒に指導してもらうための資料として準備。給食の栄養のことや配膳方法、食器やゴミの片付け方など細かく記載している。教師用には、ポイントとなるところを吹き出しにして記載したものを配布した。

 「朝活指導メモ」は、生徒指導部が毎朝発行しているもので、その中に「給食メモ」のコーナーがある。給食の盛り付け方やゴミの片付け方、食物のアレルギー対応、前日の残菜量など全職員で確認しておきたいことを載せてもらっている。


2 生徒会給食部の取組

 給食開始2年目に設けられた給食部。

 1年目は「給食の時間が一番楽しい時間になるように!」、2年目は「食に興味を持ってもらう」をテーマに本校が大事にしているブロック活動(異年齢集団活動)の力も活用しながら活動した。

 給食部長は、生徒会専門部長に立候補し選挙で選ばれる。各クラス2名ずつの給食部員を決め、25名で活動している。

(1)給食準備スピードアップ大作戦

 生徒会PUZZLE完成計画(生徒主体の各イベントをパズルのヒースに見立て、1年間でパズルを完成させるという企画)の取組として、給食部と図書部の共同企画で実施した。

 給食準備をできるだけ早くし、食べる時間を少しでも長くすることで給食をおいしく食べる。配膳読書に取り組むことで読書への関心と集中力を高める。

 結果を目に見えるようにすることで、各クラス、学年の課題を見つけ改善するきっかけにしてほしい、という目的で実施した。給食準備・食事・片付けはそれぞれ15分ずつである。

(2)給食放送

 「風邪予防献立週間」、「まめまめ献立週間」、「和食の日」などの献立に合わせて、食材の栄養や特徴、地産地消、和食のよさなどについて、給食部が2名ずつ担当し、給食時間に放送した。原稿は栄養教諭が準備し、事前に生徒に渡しておく。給食準備時間に放送室で練習をしてから放送する。

(3)身支度・配膳読書の啓発

 3年生給食部が、レポーター役・給食当番役を演じてビデオ撮影し、(特に帽子のかぶり方)や配膳読書の意義について給食時に放映した。

 正しい身支度の仕方

 撮影・編集は教師が行ったが、シナリオは給食部長・副部長が考えた。

(4)セレクトデザート、3年生リクエストメニュー

 アンケートの集計

 セレクトデザートは年1回、3種類のデザートからひとつを選ぶもの。アンケートは各学級でとり、各クラスの給食部員が集計する。

 毎年、2月から3月のメニューには、小学6年生と中学3年生のリクエストメニューを取り入れている。中学生は、9年間食べてきた給食も、最後になることから「もう一度食ぺたい給食メニュー」としてアンケートをとっている。(12月ごろ)

 今年度、中学3年生リクエストメニューは、  ①カレーライス②鶏肉のから揚げ③ハンバーグであった。

(5)手洗い石けん・消毒用アルコールの補充、

配膳台の清掃

 各クラスの配膳台には、ストローやゴミ用袋を保管している給食ケースがあり、定期的にもたれる一斉専門部会の日には補充も行っている。


3 2年生 道徳+総合的な学習の時問:「食でつながる豊かな心の取組

 学校給食が生産者や商店、共同調理場など多くの方々の手によって作られていることを知り、感謝の気持ちを伝えるとともに自分自身の食生活についても考えていけるようにと学年全体で取り組んだ。

 事前に、栄養教諭による授業や生徒会給食部による調理場や農家の方の取材を行うことで、当日の授業内容を充実させた。給食部の生徒がまとめたプレゼン資料は、「感謝の会」で使用した。

(1)第1次 道徳の授業

 「学校給食の歴史を学ぶとともに、給食の役割や給食に込められたたくさんの願いを知る。」  ことをねらいに、栄養教諭が2年生全員を対象に授業をする。 
   ↓ 
ひとこと感想を書く。
   ↓ 
掲示する。

(2)第2次 総合的な学習の時間

 「食に対する考えを深め、給食に携わる方への感謝の気持ちをもつ。」ことをねらいに給食部生徒による取材報告、感謝の手紙、農家の方のお話、栄養教諭のまとめを「感謝の会」として行う。
   ↓ 
学んだことを感想用紙にまとめる。


4 家庭科1年生 「朝ごはんづくりに挑戦しよう!」

 夏休みの宿題レポートとして実施した。2学期最初の家庭科の時間に、朝ごはんづくりで使用した食品を6つの基礎食品群に分類し、不足している食品群がないか栄養バランスを確認した。

 その後、献立名や工夫した点、苦労した点、栄養バランス、家の人からのコメントを発表した。「いろどりを考えた」「栄養がバランスよくとれるように野菜を入れた」「家族分作るのが大変だった」などの感想があった。 10月の文化祭には全員のレポートを掲示して、保護者にもみてもらった。


5 食に関する掲示・食育だより

 生徒の食に関する関心を高めたり、啓発のために掲示物を工夫したりした。クイズは家庭科の教科書から考えたり、社会科を意識して都道府県クイズなども掲示したりした。

 食育だよりは毎月1回程度発行し、内容は、栄養に関することはもちろん、配膳の取組や食育の取組についても掲載した。
※中学校に勤務して‥・今年3年目。

 小学校勤務・センター勤務(小学校籍)30数年にして、初めて中学校に勤務することになった。それも、食に関する指導充実事業のため、中学校に常駐する形で。給食開始2年目の時だったので、とにかく、何事もなく給食時間をスムーズに終わらせること、先生方が給食指導しやすいようにということを考えた。

 残菜して当たり前ではなく、少し量を減らしてでも食ぺきらせる、感謝の気持ちで残さす食べることなど、先生方の前向きな給食指導により、給食が定着してきた。

 配膳に手をぬく子、度々白衣を忘れる子など、中学校では生徒指導部との連携は欠かせない。また、全教職員で指導にあたることは大切である。

 「おいしかった、また作ってなー」と、声に出しては言わないけれど、お弁当にはない給食の良さに気付いている子はたくさんいる。体の成長にとって「食」は重要であるが、好き嫌いや食べる量など思春期の子どもの「食」は難しい部分もある。しかし、栄養パランスのとれた、みんなで食べる給食の意義は大きいと感じた。これからも、「食」の大切さを伝えていきたい。

 
   
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