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  ●京都教育センター通信 
復刊第117号
 (2016.4.10発行) 
 
「自己肯定感」と安倍政治

     高垣 忠一郎(京都教育センター代表)


 

 いま、わたしの心理臨床の仕事との深いかかわりで、「安倍政権の歴史認識を問う」ならば、まず、次のことを問います。

 いま何ゆえに、日本の子どもや若者のなかに「自分が自分であって大丈夫」だという自己肯定感をなくし、「自分など生きていてもしょうがない、消えた方がましだ」と自分の存在そのものを否定する者が多数いるのでしょうか?

 私が長年かかわってきた登校拒否(不登校)やひきこもりに悩み、苦しむ子どもや若者たちの自己否定は「自分にはこんなダメなところがある」という部分否定ではありません。「生きていてもしょうがないダメな奴」という全否定なのです。

 そういう子どもや若者たちに必要な「自己肯定感」はある部分的な性能や特性を褒めて評価し、それによって自分を肯定するような「自己肯定感」ではありません。だが、「自己肯定感」という言葉が流行語のように独り歩きをして、褒めてそだてればよいという「評価」の「自己肯定感」がまかり通っています。それは、私に言わせれば人間に必要な自己肯定感ではなく、いまの時代の文脈では「人材」の自己肯定感にすり替えられているとしかいえません。

 いま、子どもや若者たちが自己肯定感を失っているのは、安倍政権が「自虐史観」と呼ぶ「南京虐殺」や「従軍慰安婦」など過去の戦争の不正を教える「歴史教科書」で教えられているからでしょうか?自分の国が過去に不正な戦争をやってきたことを「自虐的」に教えられるから、日本の子どもたちは自分の国に誇りを持てず、それゆえに自分にも誇り(自己肯定感)を持てなくなっているのでしょうか?

 安倍政権や「新しい歴史教育をつくる会」(以下「つくる会」と略称)は、そのようにいいます。過去の道徳的に許しがたい不正な事実を正直に認め、反省することを「自虐的」と誹謗し、過去の歴史を美化し「日本の歴史に誇りをもてる教科書」で教えることで、日本の子どもに「自己肯定感」を持たすことができるのだと「つくる会」はいうのです。

 わたしが自らの心理臨床実践のなかで、大事に育ててきた「自己肯定感」ということばを、このように彼らは歪めて使います。

 いま、日本の子どもや若者が「自己肯定感」を失い、自分を責め、存在そのものを否定する「地雷」を心に埋め込まれているのは、歴史教科書のせいではありません。

 「売りもの」「使いもの」になる性能を持たない奴は見捨てるぞと脅され、一人ひとりが「個人」として尊重されるどころか、「人材」として使い捨てにされる「戦場」のような社会で育てられ、生きているからではありませんか。その日本の子どもや若者の姿は、「企業が最も活動しやすい国」をめざす安倍政治が、日本の国を内なる「植民地」として搾取するようになっている姿そのものではないのでしょうか?私にはそのように見えるのです。
 
 

第一回センセイたちの京都ふぇすた  レポート交流会 「より良い職員室のつくり方」分科会より
事務職員からの職員室づくり

       仙波 尚子(京都府内小学校事務職員)


 

はじめに

 みなさんはこれまでいろんな事務職員と出会い、ともに仕事をされてこられたかと思います。ですが私たちが実際にどんなことをしているのか、どんな思いを持っているのか、わからない方も多いのではないでしょうか。なかには「一人職の先生に声をかけづらいな…」と感じている方もいるかもしれません。仕事内容に触れながら、日々感じていることをご紹介します。より相互理解を深め、教職員集団として高まっていくことを期待してのレポート報告です。


こんな仕事をしています ①給与、旅費、福利厚生(共済組合・互助組合)

 毎月決められた時にする業務に、給与や旅費請求があります。基本的な給与とは別に実績に応じて部活動指導手当、特殊勤務手当(修学旅行等)が対象者に支給されるように、旅費は出張にかかった交通費や宿泊費等が対象者に支給されるように請求事務を行います。共済組合に関しては、先生ご自身の健康にかかわることやご家庭の状況の変化で手続きを行います。結婚、出産、お子さんの進学にかかわって貸付を利用する際の手続き、人間ドック受診票の発行、紛失した保険証の再発行申請等…様々です。互助組合は長期療養見舞金や宿泊施設利用補助金といった私たちの暮らしを支える給付金の手続きがあります。本来は本人の届出で事務手続きを始めますが、教職員との会話の中で気づいた時には「これが該当すると思いますよ」とお伝えしたり、事務だよりを発行して、制度変更や耳寄りな情報をお伝えしたりしています。

こんな仕事をしています ②就学保障

 家庭の経済状況によって子どもたちの学校生活に支障をきたすことがないよう、また子どもたちが悲しい思いをすることがないように、担任からの情報や教材費・給食費の支払状況から就学援助が必要な家庭はないか日頃から注意してみています。 就学援助制度を保護者に周知してもらうために、お知らせを配布したり、入学説明会といった保護者が集まる機会に伝えたり、学校のホームページに記事をあげたりしています。また周知をして保護者からの申請を待つだけでなく、「あの家庭は経済的に厳しくなりそうだ」と情報をつかんだ時点で、担任と連携した上で自・ら保護者に連絡をする方もいます。ただ制度を勧めるだけでなく、親身な姿勢で保護者の話を聞きます。子どもが安心して学校生活が送ることができるよう、国・京都府・地域が全力で子育てを応援していることを伝え、十分にご理解を得た上で手続きをとります。周りの人には知られたくないことだけに非常に気をつかいますが、ここで得た保護者との信頼関係は、学校にとってもプラスになっているのではないかと思います。兄弟が中学校と小学校にいる場合は相手の学校の事務職員と連携をして手続きをとることもあります。また教職員の中には就学援助制度について、制度そのものをよく知らない方もいます。教職員にも理解が深まるように、学習の機会の提供等に取り組んでいかなければならないなと感じています。

こんな仕事をしています ③教育環境整備

 授業で使用する物品を把握し、切らすことがないように日々計画的に購入します。特に大きな金額の備品の購入や修繕は市町村の法令や規則に従い、業者に見積もりをとり、契約書を交わす等、手順を踏むことになります。大変時間かかかるため、いつまでに備品が必要なのか、業者が修繕しやすい時期はいつなのかを逆算して、授業に支障が出ないように手続きを行います。

 市町村で異なりますが、私か勤務している京丹波町では毎年12月に次年度の予算要求があります。教職員に出してもらった要望をもとに、「子どもたちが安心して楽しい学校生活を送る」こと、「よくわかる授業作りができる」こと、「教職員が快適に働ける」ことを考慮して、要求書を作成していきます。なかには緊急性の高いものや小額のものが要望に出されていることもあるため、早急に対応をします。「要望を出すと改善される(かも?)」という意識を、特に若手の教職員にもってもらえるように心がけています。予算要求時期に関わらず、「こんなものはないだろうか」と相談された場合は、用務員と協力して作成することもあります。今年度は運動会の得点板が小さすぎて得点がわからないという訴えから、安さと見栄え、耐久性、利便性を追求した得点板を作成し、児童や観客席にいる保護者に好評を得ました。(と勝手に思っています)

職員室の中(先生たちの姿)はこう見える

 私の採用当初の話なのですが、一人職のため、日々の分からないことは前任者と近隣校に聞く、月に1回ある支部の事務職員研究会で学習する…の繰り返しでした。「この手続きはこれで正しいのか」「事務職員としてどのように立ち振る舞うべきなのか」確かめようにも頼りになる人は校内にはいません。釈然としない思いや不安、疑問を抱えていました。そんな状況ではありましたが、先生たちが心から児童の成長を願い、一人ひとりのよいところを認めて伸ばそうとされている姿を見た時、ありきたりな言い方になりますが、教育への熱い思いを感じると共に、感動しました。

 こんな先生たちと一緒に仕事ができるなんて嬉しい、教育現場を選んでよかったなと感じるとともに「事務職員の立場から何ができるのだろう?でも、きっとあるに違いない」と思うようになりました。

 一日の大半は職員室にいるため、それぞれの先生たちの考え方や思いに触れることがあります。共感することもあれば共感しづらいこともありますが、改めて気付かされることもあります。忙しくされていることは重ノマ承知していますが、ささいなことでも積極的に相談してもらえるように普段から声をかけたり、子どもたちのよい姿を見た時には担任に伝えるだけでなく、周りの教職員とも共有したりと心がけています。

職員室の外はこう見える

 職員会議や生徒指導部会で情報を得る他に、保護者にまぎれて授業参観や、授業記録(写真撮影)を依頼された時に授業を見せてもらったことがあります。「あの子、きちんと理由づけをして発表できてすごい!今度話しかけてみようかな」「デジタル教科書フル活用している!こう使うのか…他の教科は欲しくないのかな?」「先生、結構前から学校にある備品を使っているけれど、新しいものが必要じゃないかな?」教室での児童と教員の様子をみると、新たな発見の連続です。残念なことに、なかなかこのような機会は多くないのですが、機会を逃さないようにしたいと思っています。

私たちを取り巻く状況

 今年度の総合教育センターで行われた「学校事務職員講座」では、府教委の「学校の組織力向上プラン~チーム学校の推進~(以下組織力向上プラン)」(中間案)についての説明がありました。その後決定された「組織力向上プラン」では、教員の多忙化問題に対する更なる業務改善の取組を進めることや、事務職員は校長の学校運営を補佐する役割を担うことから、事務職員に対する学校組織マネジメントに関する研修を充実すること、小中学校の事務職員の共同実施について言及されています。

 事務職員からの業務改善とは何か。有効的な予算の使い方、保護者負担軽減を考慮しだ適正な徴収金の取り扱い、地域連携を推進する一員として整備に関わる等、事務職員ができることを探してチャレンジして、主体的に進めることは大切ですが、あわせて私たちが動きやすくなるように環境を整えていくことも重要です。そのためにはまず、教職員の事務職員に対する従来の意識を変えてもらわないといけないと思います。また、これまで慣例でやってきていた業務体制を校内全体で見直す必要があると言われているところでもありますが、そのことも切実に感じています。効率よくこなすためにか誰が担当すればいいかではなく、誰と誰が担当すれば、効果的でより一層充実した教育活動につながるのかを念頭において、時間を確保した上で、公務分掌の再編・再構築について教職員ともっと検討していかなければならないと思います。

 
   
  学習会や集会、研究会などのお知らせ
 
京都教育センター紹介 

 1960年に設立された京都教育センターは、初代代表の故細野武男氏(元立命館大学総長)を中心に京都における教育運動と教育実践を統一した理論構築を手がけてきました。

 国民教育の三つの原則[全面発達・集団主義・科学的認識]を提言し、半世紀を経た今もこの原則は生き続けています。九つの研究会を持ち、公開研究会や研究集会などを広く呼び掛けて開催しています。ごいっしょに研究会で学習していきましょう。

連絡先:旧教育会館2階  TEL&FAX075-752-1081
新学習指導要領を問う第2弾
「道徳教科書」の検定結果と採択に向けて(仮題)

◆日時 5月27日(土)13時30分~16時30分
◆会場 教文センター302号
◆講師  石山久男さん(元歴史教育者協議会委員長)

  道徳の教科書検定の結果が公開され、検定の問題点も見えてきました。
新学習指導要領は、パブリックコメント受け、内容変更がされました。また、政府は「教育勅語の使用を認める」閣議決定をしました。これらを含めての話にしてもらう予定です。

主催 : 教科書連絡会・京都教育センター・京教組
・新日本婦人の会京都府本部 
2016国連子どもの権利委員会カウンターレポートをつくる「連続学習会」
第9回学習会
支援が必要な子どもの子育て・教育の現状と課題
~子どもの権利条約に照らして考える~
◆日時 4月23日(日)13時30分~16時30分
◆会場 教文センター公益事業室(地下)
◆内容 
報告①「気になる子どもの乳幼児期の支援の現状と課題」
池添素さん(NPO法人福祉ひろば理事長)
報告②「特別支援学級の子どものたちの権利状況」
      松岡寛さん(京教組障害児教育部)
報告③「障害児学校の子どもの権利状況」
生水淳稔さん〈京都府立高教組〉
主催 : 京都から国連子どもの権利委員会への代替報告書をつくる会 
《京都教育センター学習会》
6月10日(土)午後  会場 職員会館かもがわ2階大会議室
「日本の教師 困難から希望の途を求めて」(仮題)
講師 久富 善之さん(一橋大学名誉教授) 
 
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