トップ 事務局 京都教育センター通信

   
  ●京都教育センター通信 
復刊第112号
 (2016.10.10発行) 
   
この夏の雑感

生水 淳稔 (府立高教組書記長)

 

 8月6日、7日に京都で「全国障害者問題研究会」の大会が行われ、全国から三千名の参加者が京都を訪れた。障害児教育に携わる私たちにとって「全障研」はたいへんポピュラーな研究会であり、大会や各支部の学習会は毎年多くのみなさんが参加している。今回は全国からの仲間をむかえる立場となり、多くの教職員がレポーターやスタッフ・要員として参加し、「全障研ははじめて」という人にも誘いかけ、大会成功に貢献できたのではないかと思っている。加えて、個人的に感動していたのが、今回、大会の準備委員として活躍してくれたスタッフの殆どが20代、30代の若者であったということである。福祉や教育・保育職場の多忙化がすすむ中、会議に出てくるだけでも大変だったはずだが、文字通りその努力が〝エネルギー〟となって周りのシニア(?)を動かしたのではないかと思っている。

 さて、大会準備におわれていた7月末、私たちのみならず、全国の障害を持つ人、そして関係者にショックを与えたのが相模原の障害者施設での殺傷事件である。あまりに痛ましい報道に「いのち」が奪われることの理不尽さを強く感じたことが第一だが、「家族の心情を察した」とされる被害者の実名報道の問題や、厚労省の対策チームが措置入院制度の見直しや福祉施設の警備強化などの方向性を出しているとされる報道などを見ると、もっともっと「人権」の問題が議論されなければならないと感じざるをえない。障害者権利条約批准のための法整備がようやく完了、障害児教育の分野にもインクルーシブ教育の概念が提唱されているものの、通常学級に在籍する発達障害児への対応や、交流教育の推進などに矮小化されているものでしかない。最近、養護学校の義務制前後の運動について学ぶ機会があったが、たしかに、当時と比べると障害のある子ども達の権利は確実に拡大してきている。しかし、それが「個人としての尊重」をともなったものであるのか、しっかり吟味された施策で無くてはならないと改めて思う。

 また、相模原事件では福祉施設で働く労働者の置かれている深刻な状況が背景にあるという指摘も行なわれていた。労働組合の役員としては見逃せない。先日、働き方を見直す京都集会での発言で、低賃金にもかかわらず、夜勤に入ると20時間以上連続で働かなければ職場をはなれられない介護職場の実態を聞いた。障害のある人や介護の必要な人を支える人たちの権利が守られていない現状。さまざまな人達が「貧困」の状態にある中では、弱者の「入れ子構造」の解消がなによりも優先されるべき課題だとおもう。

 全国から全障研大会に参加する人々をむかえるために、文字通り汗だくになりながら奔走した若者に感動しながら、こういう「想い」が障害者の人権を確立する運動につながるのだなあと感じる。今年の京都大会のテーマは「プラスワン あなたと次の一歩を」というものであった。私もそのパワーに動かされているだけでなく、いつでも「プラスワン」を重ねていけるようにしなければと改めて感じている。
 
 
みんなで21世紀の未来をひらく教育のつどい 教育研究集会2016

国語教育分科会 「今、中学校の国語学習をどう構想するか」

綾部教職員組合 山口 茂樹
 
 

1.はじめに・・・京都教研レポートの動機

 あと2年で退職を迎える年齢となった。ここまで来て、まだ授業のたびに産みの苦しみを味わい、現在の子どもたちの状況に悩みながら毎日の授業をしている。

 近年、思わぬ所で『国語の学習』がイメージ通りにできないことを強く感じるようになった。きちんと分析ができない中で感じる「違和感」の正体を知りたくて、昨年度、小学校の授業研究会に積極的に参加したり、京都市内の国語サークルに参加したり、自分でも私のいる地域で国語サークルを立ち上げたりした。そういう中で、20年ぶりで京都教研の国語分科会に参加した。この間は、知り合いがレポートをしていたり、自分でもレポーターになったりして、文化活動や生徒指導の分科会に参加していた。さて、国語部会は、気がつくとレポーターが小学校と私立の高校や附属中学校の方ばかりで、中学校は…一本もない。聞くと、もう何年も同じ傾向だという。それは国語だけではないとも聞いた。「中学校が忙しい」からなのか、しかし、小学校が忙しくないわけでは決してないし、小学校の先生たちが複数の教科を教えなければならないことを考えると、中学校で専門教科を持っている人間がレポートできないはずはないと思う。このままでは、中学校の先生を教科の分科会には誘えない。

 自分がすばらしい実践を発表できるとは思わない。しかし、「こんなことで悩んでいる」でもよいからレポートを…という呼びかけを知ったことで、とにかく出してみようと思った。そして、そういう目で見ると、今の国語教育がどうなっているのか、気になる部分は大変多いとあらためて思った。具体的な実践は資料にするが、どんな問題意識を持っているかを提起し参加者の皆さんのご意見をお聞きしたい。そして、できれば、今の状況の中で、どんな研究が必要なのか、方向性が見えればうれしいと思う。


2.研究会で感じること

 組合やサークルではなく、官制研(地域や府段階の研究会)に参加していて思うことは、まず、「授業研究あって教材研究なし」ということである。授業形態や工夫ばかりがあって、教材そのものの読み間違いと思うことや、「読む」ということの手順や本質を教材に即して考えていない(どんな教材でも同じような授業形態をとっている)と感じることが増えた。

例1

 最近、府段階の国語教育研究大会があったが、そこで、ある地域からは「単元構想表」を精力的に推進してきたという報告があった。ただ、その『成果と課題』の「課題」では、「単元構想表をどう活用するか」が上げられていた。「単元構想表」の考え方についての評価は別にしても、推進しておきながら「活用が課題」というのでは本末転倒ではないか。「実践に生きる」からこそ、指導案を作るのであって、形だけ作ってから活用を考えるというのは明らかにおかしいのではないか。と思っていたら、今年に入って、文部科学省から「今後、『単元を貫く言語活動』といった言葉は使わない]という通達が出たというニュースを知った。地域の官制研究会にも参加して、「活動あって学びなし」という問題への反省からと言う話も聞いた。「やっぱり」という印象である。

例2

 私のいる地域では、「あいのある学習」というかけ声で授業改善が呼びかけられている。「おしえあい」「まなびあい」「たかめあい」というが、授業形態の問題である。小学校の授業研に何度か参加したが、たとえば説明文の場合、「班活動」「ワークシート」「調べ学習」といったことにとても熱心で、ホワイトボードを使っての発表や、電子黒板の活用なども進められている。しかし、たとえば「分類をする」という内容があって、「分類」には「視点」が重要だと思うのだが、「子どもたちが自由に話せるように視点は話し合わない」といわれることがあったり、授業者自身がその文章を分析している様子がなかったりする。文章については、「指導書任せ」の記述になり、特に批判も検証もないように思える。

例3

 府段階の研究会で見た授業も、授業形態の工夫は班活動を取り入れるなど努力されているのだが、「発問」があいまいで、焦点があっていない、あるいはわかりきった発言だけで授業が進んでいるように思えた。小学校で時々見かける、大勢発言するが、どれもすでにワークシートにまとめられていたり、大きく模造紙に書かれて教室に張ってあるものと変わらなかったり、一読で分かることばかりだったりで、発言によって読みが深まらない授業のように感じた。

例4

 研究会で、指導計画について疑問を言うと、授業者が若手の先生に聞いてみるという。理由は、彼らが新採研修で一番最近の指導案を学んでいるからと言うのだ。国語教師は、まず「文章を読む」ことが好きで、「自分の読み」を大切にし、指導書も懐疑的に読んでいるという自分のイメージははるか時代に遅れているらしいと感じるようになった。

 そんな中、アクティブラーニング、パフォーマンス評価といった言葉で紹介される実践を見ていると、「昔、やったことがある。(見たことがある)」「利点もあるが弱点もあり、教材によって使い分けることが必要」と思うものが、違う形で紹介されていて、「新しい実践」と受け止められていることもよく見るようになった。

 府段階の研究会でのある地域の先生のレポートはおもしろかった。レポート自体は2枚程度で「おつきあいで出しました」的なイメージがあったが、その先生が「実践の継承」ということで、同じように「以前にやったことがあるよ」というものが多いことを話しておられたり、昔の府段階の研究会では「平等院の見学というフィールドワークがあった」といった、教材の基礎研究的々取組を紹介しておられたりと、今の問題について共通認識ができるのではないかと思った。

最後に

 「組合的視点」とか、「新しい実践」をというのでなく、自分なりに教材を読み取り、それを生かした授業を構想して取り組んできたものを、地元の研究会では発信してきた。それをそのまま、この場でも資料として出させていただき、問題提起としたい。


3.実践レポートの内容

①「故郷(中学3年)の実践」

一昨年、私のいる地域の学研国語部の授業研でだしたもの

 ・研究授業をすることになって、若い先生たちから、「『故郷』をどう授業するかが分からない」という声があって、取り組んだものである。もともと昔から数え切れないほど取り組んできたものであり、また研究会でも扱ってきたので、その授業のオーソドックスな展開を若い人たちに分かりやすくと言う思いでつくった指導案。ただ、オーソドックスを意識しすぎたかも

②「脳の働きを目で見てみよう(中学1年)の実践」

ブロックの研究会で出したもの

③ 短歌、俳句、詩「私を束ねないで」パロディ、のはらうたのパロディ作品集

 *これらの作品は読み取りの授業のあと、書かせたものをである、当たり前の授業のあとにも「書く」言語活動は入れられる。これらの活動は、生徒の意欲を引き出したり、理解を深めたりする上で必要だと思って工夫している。

 これら、自分が日常取り組んでいることを形にしている。しかし、公的な研究会のものなので、多少制約があることをお許しいただきたい。また、今の子どもたちには、授業の入り口から拒否反応を示されることを感じる部分もある。今の小学校教育の現状や中学校現場の実態、子どもたちを取り巻く状況などを考え、どこがフィットしないのか何かヒントが得られれば嬉しい。


4.終わりに

 国語教育の現状認識を交流したくてレポートをしました。全国の小学校、中学校の状況を知りたいなと思っています。よろしくお願いします。

※編集部より
実践報告は、今回紙面の都合上載せられないので、ほしい方は、京都教育センターまでメールで連絡ください。データーを送らせて頂きます。

 
   
  学習会や集会・研究会などのお知らせ 
 

2016年 第1回 京教組・京都教育センター地方教育行政研 合同学習会

テーマ『子ども達とともに、こんな教育・学校をつくりたい』
     -新学習指導要領移行期前に取り組むことを考える-

主催 京都教職員組合
    京都教育センター地方教育行政研究会

日時 2016年10月15日(土)13:30~16:30

会場 京都教育文化』センター 会議室101号室

日程 13:30 開会あいさつ
    13:40 講演「中教審の『審議のまとめ(案)』を検討する」(仮題)
          講師 中田 康彦(一橋大学教授)
    15:30 報告 中教審「審議のまとめ(案)」の「資質・能力」の強調を批判的に検討する
              安倍内閣「憲法改正」の動きを学校現場から考える
              他(検討準備中)
          討論
    16:30 終了

連絡先 京都教育センター 地方教育行政研究会 (電話 075-752-1081)
     京都教職員組合(電話 075-752-0011)

 

高校問題研究会公開研究会

テーマ『初めての選挙、高校生はどう考え行動したか』

主催 京都教育センター高校問題研究会

日時 2016年10月15日(土)13:30~16:30

会場 職員会館かもがわ 3階 大多目的室

内容 
◇問題提起の講演
  「高校生と教育現場を取材して」(仮題)
   ~ジャーナリストから見た18歳選挙権~
  講師 小河雅臣 さん(朝日新聞大阪本社社会部・教育担当)
◇レポート
  授業・ホームルーム等で高校3年生接する高校教職員から

連絡先 京都教育センター 高校問題研究会 (電話 075-752-1081)
 


第66次 京都高校教研

テーマ 『楽しい学校、わかる授業とは?』

日時 2016年10月23日(日)10:00~17:00

会場 京都リサーチパーク(KRP)
    (JR丹波口駅より西へ徒歩5分、お車の方駐車料金補助)
日程 
◇午前の部(10:00~13:00)
  教科別分科会(国、地公、数、理職、英、家・・・・の6つ)
◇午後の部(14:00~14:00)
  課題別分科会
  1 主権者教育 講演:宮下与兵衛教授(首都大学東京)
  2 学校づくり~各校の教育課程
  3 高校での特別ニーズ教育~高校の通級指導
  4 図書館教育・・・・の4つ


 
 


第46回 京都市教育研究集会

テーマ 『子どもたちに平和を 憲法の息づく教育・社会を』

日時 2016年11月4日(金) 5日(土)

◇11月4日(金)
会場 京都教育文化センター103号室
日程 18時40分開会
    子どもと教育にかかわる基調報告・実践報告
    記念講演(19:10~20:50)
    「どの子もわかって楽しい」授業をみんなのものに
    ~新指導要領に抗して、「人格の完成」を目指す教育を~
    講師 熊谷 陽子 さん(東京都八王子市の公立中学校教員)
        (東京民研・21教科書ネットで活動)

◇11月5日(土)
会場 ラボール京都(四条御前)会議室
日程 教科別分科会(9:30~12:30)
    課題別分科会(13:30~16:30)

 
トップ 事務局 京都教育センター通信