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  ●京都教育センター通信 
復刊第106号
 (2016.3.10発行) 
   
要求実現の運動をこれからも
-京都市長選を終えて-

本田 久美子(京都教育センター事務局長)

 

 2月7日、投開票でおこなわれた京都市長選挙では、多くの方からご支援いただいたにもかかわらず勝利できなかったこと、残念としか言いようがありません。

 立候補表明以来5か月間、どこへ行っても大きな励ましを受け、元気をもらい、最後まで自分の力を出し切り、全力で戦い抜くことができました。ご支援くださった方、応援してくださった方に心からお礼申し上げます。本当にありがとうございました。
 安倍政権が戦争法を強行し、それに反対する多くの方々が私の立候補の決意を後押しし、「教え子を二度と戦場に送らない」これを原点として教師をしてきたものとして、戦争法が強行可決され、3月には施行されるという歴史的情勢の中でたたかわれた京都市長選挙で、国と地方は別とか、このことは横に置いといて市長選挙をたたかう訳にはいきませんでした。京都市民のみなさんのいのち、安全をまもるために、戦争法廃止、原発再稼働NO、平和憲法を守り生かすことを、前面にたたかいました。小林節さん、内田樹さん、佐藤学さんなど安保法制に反対する学者やママの会、SEALDs関西のみなさんなど全国から支援・応援のメッセージが寄せられました。また、私を応援しようと個人の方々が勝手連を立ち上げ勢力的に動いてくださったことは、私の宝物であり大変感謝しています。これからの市民運動にとっても大きな輪が広がったと確信しています。

 また京都市いたる所で、私にとっては、市民のみなさんの悲鳴とも思える声、願いをお聞きしてまいりました。「国民健康保険証とりあげやめて」、「敬老乗車証有料はやめて」、「保育所に入れない」、「仕事が回ってこない」、「まちこわしひどすぎる」などなど、聞けば聞くほど「住んでいる人にやさしくない市政だ」。これが率直な感想でした。京都をかえるために私が打ち出した「5つの京都再生ビジョン」の政策は、これらの市民のみなさんの声を反映させたもので、論戦では決して相手陣営に負けてはいなかったと、自負できます。これが広がらなかったことが残念です。結果が出て次の日すぐ自宅の近くの方が「お疲れ様」と花束を持って来てくださいました。「京都に住むの、いやになったわ。まともなことを言っているのが通らへん」とおっしゃっておられました。

 市長にならなくても市民のみなさんと力を合わせて実現できるものはたくさんあります。これまで運動されておられた方、変えたいと思っておられる方とごいっしょにそれぞれの要求実現の運動を草の根からはじめましょう。ごいっしょに、住んでよかった、住み続けたいと思える京都をつくってまいりましょう。

 最後に、京都市では初の女性市長候補として奮闘しました。「女になんかに政治はまかせられない」という発言にみられる男女平等の問題も含めて、ヘイトスピーチの問題、性的マイノリティの人権の問題等、誰の人権も大事にすることが根付くのも、まだまだだなと実感いたしました。もっとも基本的な民主主義がいきる社会をつくっていきましょう。

 あらためて、ご支持・ご支援していただいた方々、支えてくださった事務局・スタッフの方々、そして家族に感謝の言葉を述べてお礼の言葉とさせていただきます。ありがとうございました。

 
 
第46回京都教育センター研究集会生活指導分科会レポート

今じゃなくていいよ、あまえてもいいよ(後半)

                府内公立小学校 瀬戸 有佳子
 
 

8 クラスは・・・

 6月に、体育でリレーをした。1チーム10人、3チームでの勝負だ。今までずっと参加してこなかった俊を何とか説得し、それにつられて明もやる気になった。二人とも本人が希望してアンカーになった。俊に「アンカーでいいの?よけいドキドキしいひん?」と声をかけると、「大丈夫!」とのこと。めちゃくちゃ心配だったが、初めて明と俊が走るということでチームが盛り上がっていたので、とにかくやってみた。

 1回目。明はダントツのトップでバトンを受けとり、そのままゴールへ。チームは大盛り上がり。俊は途中で抜かされ、拗ねてバトンを放り投げ、逃亡。(やっぱり・・・)チームの子たちは唖然としている。だが、「もう一回するよ!」と言うと、「俊~!早くバトン持ってきて~!」と呼びに行き、何事もなかったように走順の相談を始めた。俊に「真ん中らへんがあんまりドキドキしいひんから、おすすめやで。」と伝えると、チームの子が「じゃあ5番に入り。」と譲ってくれた。

 2回目。明も俊も何とか走りきったが、今度は明がゴール直前で抜かされ、座り込んで拗ねた。チームの子が呼びに行き、泣きながら帰ってくる。俊は途中で抜かされたが、拗ねなかった。

 3回目。全員が本気で走りきった。だれも拗ねていない。リレーの授業を始めてから「明君や俊君が『オレもやりたいな』って思うくらい盛り上がって楽しくやろう!」と言っていたのがようやく実現して、大盛り上がりだった。

 学年全体に「ちょっと変わっている子」が多く、そのせいか、子どもたちの「変わったやつ」に対するキャパシティは大きい。特に女子は、頭が下がるほど丁寧に根気強く明たちに関わっている。だが、もう4年生。今まで当たり前に受け入れていた事に対して疑問を持ったり、反発を感じたりする子も出てくるだろう。明たちが排除されないように人を見る目を育てていきたいと思うが、ただ受け入れるだけでなく批判する力を持ってほしいとも思う。リレーでは明と俊を「チームに巻き込む」ことが目標だったので、アンカーを譲ったり途中でバトンを投げ出したりしても誰も批判しなかった。「批判や要求をしてもいいんやで」というメッセージを送り続けた。

 はちゃめちゃな男子を穏やかで優しい女子が支えながら、クラスで色々な取組をした。チャイム席や発表競争で班ごとにポイントをため、全部の斑が目標を達成するとイベント(祝う会)をする。始めは、明や俊はなかなかチャイム席ができなかった。うろうろしても、誰も声をかけなかったからだ。「明君や俊君だけ特別なんじゃない。みんなでがんばるためにポイント競争をしてるんやから、二人にもちゃんと声かけよう。」「ふざけてわざと座らへん時は怒っていいんやで!」と声をかけ続け、7月頃からようやくリーダー格の男子が「明、座れよ」と声を出すようになった。


9 運動会

 9月、運動会の練習が始まった。4年生は空手と太極拳を取り入れたダンスをすることになった。

 運動会練習の心配は、学年で集まると不機嫌になる明が練習に参加するかと俊が拗ねないかだった。明は案の定、練習中の体育館を走り回り、全くやろうとしなかった。放課後、話をした。

 私「明君、運動会どうしようと思ってる?」
 明「出るし。出るに決まってるやん。」
 私「でるんやったら練習せな。練習なしでできるほど、4年生の運動会は甘くないで。なんで練習しいひんの?」
 明「うっとしい!むかつくんじゃ!」

 何にむかつくのかははっきりとは言わなかったが、お説教から始まる学年練習に明はNOを突きつけているように感じた。

 お母さんには、練習での様子と練習をせずに本番だけ出るということはできないと伝えた。そして、少しでも練習に向かえるように励ましてあげてほしいとお願いした。その後、支援員の先生に横についてもらってダンスの動きは覚えたが、ふざけたりうろうろしたりはずっと続いた。最後の練習も途中でやめてしまい、もう本当に出られないかもしれないと思った。その日は、放課後に休みがちだった花の補習練習をすることになっており、明にも参加するよう


に伝えていた。「誰が行くか!」と言っていたのできっと帰ってしまうだろうなと思っていたのだが、さようならをした後に「先生、練習しよ。」と言ってきてめちゃくちゃ驚いた。「運動会に出たい」という気持ちをちゃんと持っているんだと思い、諦めかけた自分を反省した。次の日のリハーサル、明は明なりに一生懸命踊り、やる気満々で本番を迎えることができた。

 俊のネックは80m走だ。タイムごとに走順を決めたので「勝てそう」と思ったのか、練習でスタートはきれた。だが途中でぬかされ、拗ねて走るのをやめてしまった。

 私「抜かされていややったん?」
 俊「・・・」
 私「1番じゃなくてもいいんやで。一生懸命走るのが大事なんやで。」
 俊「・・・」
 私「お母さんは、俊君の一生懸命な姿を見たくて、応援に来はるんやで。1番でも1番じゃなくても、一生懸命走るのがかっこいいんやで。」 
 俊「・・・わかってる。」

 そう、頭ではわかっているのだ。でも気持ちがついて行かないところに俊の苦しさがある。俊には「大丈夫やで」「いいよ」「がんばってるよ」を連発して、少しでも安心させられるようにした。

 4年生の団体競技は、ピックアップリレーだ。
 チームで作戦を立てるのが面白いのだが、自分がどこの玉を取りに行くのかを覚えておかなくてはならない。俊の前の走者は里香なのだが、2回目の練習の時、里香が間違えて俊の玉をとってきてしまった。俊は怒り狂った。もうだめだと思ったが、なんと俊は、かわりに里香の球を取りに行き、次の走者へとバトンをつないだ。信じられない気持ちだった。きっと6月の俊なら、里香が間違えた時点で逃亡していた。成長を目の当たりにし、教師としての喜びをかみしめた。


10 誰のため?

 何とか本番に帳尻を合わせられたが、「何のため(誰のため)にするのか」を強く感じた今年の運動会だった。良いものを見せたいと思う教師、それを期待する保護者。その中に「運動会を通して子どもをどう成長させるか」という視点がなければ、また、子どもの中にも納得がなければ、本番のための運動会練習になってしまう。その波に乗れない明だからこそ、NOを突きつけてきたのだと感じた。

 一息つく間もなく、学習発表会の練習が始まった。運動会を教訓に、「どんな学習発表会にしたいか」「そのためにどんな練習をしていくか」を、子ども達と話し合いながら練習を進めた。内容は歌と合奏だ。明はリコーダーは全く吹けないのだが歌は抜群にうまいので、リコーダーは始めの一小節だけ吹いて後は吹きまね、その分歌を頑張るという目標を立てた。1回だけ練習に向かえないことがあったが、あとはほぼみんなといっしょに練習することができた。

 本番は大成功だった。子どもたちがノリノリで、歌や合奏を楽しんでいるのが伝わって  くるような、会心のできだった。お客さんにたくさんの拍手をもらって、教室に帰るなり「バッチリやった!」「大成功やった!」と子どもたちから声が挙がった。教室が『がんばったな』という充実感でいっぱいになった。私も本当にいい発表になったと思ったし、運動会や学習発表会などの行事は子ども達がこの達成感を味わうためにするのだと感じた。


11 最後の(?)大爆発

 宿題をめぐって12月に明の大爆発があった。明の宿題は他の人の半分の量なのだが、一つもやってこない日が続いたので居残りをするように言ったのが始まりだった。机や椅子をなぎ倒し、わんわん泣きながら殴りかかってきた。手を押さえるとその手にかみ付き、足を蹴り、頭突きをしてくる。小さい子のかんしゃくのようだった。1時間半の格闘の末、疲れて静かになった明を家に送っていったが、その日はまともに話をすることができなかった。

 次の日、痣だらけになった腕を見せた。明はばつが悪そうにしていた。すごく痛かったこと、次にこんなことをしたら私も普通じゃないくらい怒ることを伝えると、小さな声で「わかった、ごめん・・・」と言った。そのかわり、明がイライラするときや立ち歩きたくなったときは、前に来て私の椅子に座っていいことにした。

 それからは、明は一度も私に暴力をしていない。宿題も、自分で職員室に拡大に行き、家で出来なかったときは学校でしている。あの大爆発が、揺れ動く明の最後の大きな揺れ戻しだったのか。このまま落ち着いて5年生に向かっていけますように・・・

 
   
  京都教育センター 2015年度活動の報告
 

1 第46回京都教育センター研究集会(12月19日・20日、教育文化センター)

 集会テーマの「戦後70年、戦争と平和を考える~戦争をくぐった生き証人から学ぶ~」は、戦争法案をめぐる国会内外のたたかいと戦後70年という歴史的な節目を反映して2015年の研究集会にふさわしく、学校や教師の戦争責任を問うた佐藤広美氏の記念講演や戦争をくぐった二人の生き証人から学ぶ企画もテーマを具体化した相互に響き合う深い内容となった。二日目は9の分科会を行い、参加者は一日目61人、二日目107人。


2 公開研究会の開催

 各研究会が企画開催した公開研究会は九回開催された。センターとしては、6月27日、「子どもが人間らしく育っているのか―地域・学校・生活での人間形成を―」開催した。(内容はひろば182号特集②参照)


3 京都自治体問題研究所との合同研究集会の開催

 11月6日、教文ホールで「歴史と京都のまちをまもろう~まちづくりと学校統廃合・跡地利用~」シンポジウムを開催。平日の夜にもかかわらず240人が参加。学校跡地利用問題など、京都市の新たなまち壊しを知らせ、京都市のまちづくりにかかわる市民的な運動が結集する契機にもなりました。


4 教育研究集会・民主教育推進委員会への参加

・第65回京都教育研究集会(「教育のつどい2015」:11/28~29、教文センター他)には、共同研究者として二日で延べ46人が参加し、各分科会での任務を果たしました。また、民主教育推進委員会には共同研究者・世話人として18人(5/30)、 21人(7/4)、30人(11/14)、20人(2/13)が参加しました。


5 戦争立法反対の取り組み

・「子ども・青年を戦場に送らない!5・31戦争立法を許すな!つどい&パレード」のアピールへの賛同を募り、センター通信第99号に一言とともに賛同者氏名を掲載しました。「子ども・青年を戦場に送らない5.31戦争立法を許すな!つどい&パレード」には、850人が参加しました。


6 京都市長選挙への本田事務局長の立候補推薦

・2月7日投票の京都市長選挙に教育センターの本田久美子事務局長が立候補を決意し、教育センター運営委員会として9月12日に推薦を決定しました。本田久美子さんは選挙戦を通じてかつてない共同の取り組みを築き健闘しましたが、勝利することはできませんでした。


7.季刊誌『ひろば・京都の教育』の発刊

・182号( 5/1) ①戦争する人づくりと教科書問題 ②地域で子どもを守り・育てる

・183号( 8/1) ①戦後70年、戦争と平和を考える ②子どもは人間らしく育っているのか

・184号(11/1) ①これでいいのか、京都市のまちづくりと教育  ②主権者として育つ-18歳選挙権-

・185号( 2/1) ①第46回京都教育センター研究集会に学ぶ  ②あるがままのあなたでいいよ


8.「センター通信」の発行<2015年度執筆者一覧>

95号  長尾 修/京教組青年部① 
96号  高垣忠一郎/京教組青年部② 
97号  今滝憲雄/東 辰也(宇久) 
98号  安嵜 正/石山久男 
99号  河口隆洋/「戦争立法」を許すな!アピール文および賛同者の一言 
100号  富山仁貴/伊藤正信①(京都市) 
101号  市川章人/伊藤正信②(京都市) 
102号  原田 久/海田勇輝①(綴喜) 
103号  中野宏之/海田勇輝②(綴喜) 
104号  第46回教育センター研究集会特集号 
105号  大平 勲/瀬戸有佳子(綴喜) 


9.出版活動

 今年度は教育センターとしての新たな刊行物はありませんでした。これまで出版してきた教育センターの刊行物の普及に引き続き努力します。


10.研究活動

 「地方教育行政」「生活指導」「学力・教育課程」「発達問題」「子どもの発達と地域」「家庭教育・民主カウンセリング」「高校問題」「教科教育・国語」「障害児教育」の9つの研究会があり、それぞれ独自に研究活動を展開している。研究会員募集中


11.事務局・運営委員会体制 

代表:高垣忠一郎、
顧問:野中一也、
研究委員長:高橋明裕、
「ひろば」編集長:西條昭男、
事務局長:本田久美子 
運営委員(上記含め):築山 崇、川地亜弥子、倉本頼一、下田正義、原田 久、中西 潔、大平 勲、
富山仁貴、深澤 司、松岡 寛、得丸浩一、西田陽子
 
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