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  ●京都教育センター通信 
復刊第90号
 (2014.10.10発行) 
   
「地蔵盆」と地域の教育力

                      京都教育センター 浅井 定雄

 

 京都には地域の伝統行事として「地蔵盆」がある。人口13万6千人の山科区では約260カ所で地蔵盆が開催されており、そこには大人1万2千人、子ども8千人が参加をしている。その中では、僧侶の読経・数珠繰り・福引・行灯・灯籠飾りなどの伝統儀式だけでなく、所によっては、昼食・夕食を共にしたり、盆踊り・夜店・懇親会をしたり、さまざまな行事が営まれている。そして、同時に子どもたちのための行事が組まれ、絵画展、作品展、行灯や地蔵飾りに子どもの役割があるなど、教育的配慮もなされている。何よりも、今日の地蔵盆は、地域の絆を取り戻し、地域の大人と子どもとが共に過ごし、交流を深めるコミュニティの形成の場となっている。

 子どもが大人と接して「うれしい」と感じるのは、「褒められる」「認めてくれる」「サポートしてくれる」「話を聴いてくれる」といった時で、反対に「納得がいかないこと」は、「話を聴いてくれない」「一方的な行為」「大人にとっての都合のいい使い分け」「不公平な扱い」「比較される」といった時である。また、大人の「マナー・ルール違反」「モラルの低下」に対する批判の目も厳しい。最近では

、大人の全体的イメージについても、プラスイメージより、犯罪や子どもへの暴力、自己中心性などのマイナスイメージが強くなっている。このような子どもたちのまっとうな批判の声に、大人は真摯に向き合っていかなくてはならないし、大人自らが、弱さや未熟さをも合わせ持った存在として、子どもと共に大人も成長しようとするようなあり方が求められている。しかし、現実は、何よりも「大人と子ども」が接する時間そのものが少ないし、家族でもそうであるのに、地域であればなおさらである。

 そうした点で、この地蔵盆の機会は、子ども達が「手際よく」あるいは「かいがいしく」働いている大人の姿を目にする機会でもあるし、「子どもと遊んでくれる大人」に接する機会でもある。こうした人間的な接触は、子どもの人間に対する信頼を広げるし、地蔵盆そのもの本来の理念からして、大人は子どもに対して「地蔵菩薩の心」で接することを求められるから、そうした信頼関係を構築するまたとない機会ともなっているのである。こうした「生」の人間的接触は子ども達の願いに応えることにもなるであろう。

 地蔵盆はまた、地域の大人同士も結びつけている。多くの地蔵盆では、子ども対象の行事と共に、大人の親睦を図る行事も組み込まれている。「子どものための」地蔵盆は、また、そのために集まる大人同士をも結びつけているのである。
 
教育研究全国集会in香川 体育分科会

子どもとつくる、低学年の体育
−子どもどうしの教えあいのある授業をめざして−

                   京都市立太秦小学校 大味 祥恵
 
 

1.はじめに

 京都市では、指導計画(京都市スタンダード)にしたがって、体育の授業を進めることがあたり前のこととされている。例えば、2年生の「マットあそび」では、いろいろな場で自分のできる回り方をしたり、ちょっとがんばればできそうな回り方に挑戦したりするということがねらいとして進められる。しかし、いろいろな場を作るだけで、技ができるようになるのだろうか。自分のやりたい場にあつまってきた仲間だけと教えあって学習をすすめることができるのだろうか。共通の課題がはっきりしていれば、低学年であっても子どもたちは、見あったり教えあったりできる。また、グループの中にできる子もできない子もそれぞれに役割をはたしている。異質共同のグループで学習を進めることがとても大切であると考える。

 本校は、子どもの数が多い大規模校である。そのため体育では、運動場や体育館の割り当ての時間や場所を確保できないという悩みがある。また、学年には若い担任が多く、スタンダード通りにやらなければならないという意識を強く持っているように感じる。その先生たちに、一つひとつの取組の大切さや運動の持っている価値を理解してもらい納得してもらって一緒にやっていくことにも難しさを感じながら、日々の授業に取り組んでいる。


2.2年生で取り組んだ実践から

 1クラス29人の5クラス(145人)。学級数が多く、運動場・体育館・プールは、1クラスでは使うことができない。2年2組は、男子14人、女子15人の学級である。1年生のころは、教室内でのごっこ遊びを好む児童も多かったが、2年生になるとほとんどの児童が外遊びを楽しんでいる。ボール遊びを楽しむグループと、鬼遊びやリレー遊びなど走りまわって楽しんでいるグループとに分かれている。車いすで生活しなければいけない児童も1人、みんなと同じようにできないことが多いが、できなくてもわかって友達に教えるという関わりができるようにと思い、声かけをしている。

 子どもどうしの教えあいのある授業をめざして取り組んだ単元についてレポートする。

3.教えあい確かめあいを通してどの子も側転ができるようになることをめざした「マットあそび」

@ 目標
 ・側転ができるようになる。
 ・技の持つ技術ポイントを理解し、教えあい確かめあいを通して技ができるようになる。

A子どもたちの様子
 マット遊びは同じ時間に2クラスまたは3クラスでの体育館使用になる。1年生の時には、動物歩きとお話マットをクラスごとに取り組むことができた。くまさん歩きで、「手のひらをしっかりマットにつくことができているのか」、「目は爪を見ているか」「腰が高くあがっているか」の3点に着目し、グループでできているかどうかを見あったり、お話マットでお話を横で友達が言って演技するという学習をしたりした。やり方がわからない友達に「こうやるんやで。」と教えることや、横でお話を言ってあげて進めることはできるが、くまさん歩きの3つのポイントを見ることについては、できているのか、できていないのかを見極めることが子どもにとってはとても難しかった。クラスには、器械運動に関して怖さから何をしても体が固まって動けない子どもや不器用で自分の思うように体を動かすことができにくい子どもたちが数名いる。

B授業の実際

【1時間目】
 ・学習の進め方についての説明
 ・ねこちゃん体操

 グループは、6人グループ4グループと5人1グループで縦に2枚のマットをグループごとに準備し学習を進めた。ねこちゃん体操については、1年生のとびばこの時にも経験している。DVDを見て一つ一つのポイントを話し合った。6人グループの中でもペアになってポイントがちゃんとできているか見あいながら毎時間学習のはじめに行うこととした。

【2時間目】
 ・ねこちゃん体操
 ・ライオンさんがガオーからの山とび
(とびばこ1段を使って)

 2クラスでの合同の授業となった。はじめにねこちゃん体操を他のクラスの友達に教えてあげる時間となった。はじめのねこちゃん体操では、どの子も教えることが上手になり、他のクラスの子どもたちにとっては、初めてのねこちゃん体操になったが、楽しんで活動できていた。そのあとライオンさんがガオーで、側転につながる山とびをグループで練習した。グループの人数が多くなると、友達に関わっていく子どもと、ただ見ているだけの子にはっきりと分かれてしまった。山とびで側転の足の動きをわかってほしいと思ったが、理解が難しい子も見られた。補助をしながら全員が手・手・足・足を体験することができた。

【3時間目】
 ・ねこちゃん体操
 ・ライオンさんがガオーからの山とび
 ・マットでの川とび

 前の時間のとびばこを使っての山とびで、ガオーのポーズから手・手・足・足のリズムで山とびをすることを復習してから、とびばこを外してマットの上で川とびをする練習をした。グループで、手・手・足・足のリズムで川とびができているかを見合って教えあう活動をした。とびばこがあるとできていた子でも、とびばこを外すことで落差の大きさに怖がる子も見られた。もう一度とびばこを使ったり、励まし合ったりする中でどの子もマットの上での川とびはできるようになってきた。

【4時間目】
・ねこちゃん体操
・手・手・足・足でのリズムでの側転

 足・手・手・足・足のリズムをつかませるために、まず自分の手や足がマットの上でどのようについているのかを確認させた。グループで、手型・足型を使って手と足のついた場所に置かせた。手と足を見る役割分担をして正確に置くことができていた。置くことには一生懸命になるが、そのあとそれをどう見るのか意識させることが薄かった。手・手・足・足のリズムはできてきたが、腰がくの字にまがってしまってなかなか腰が上がらない。腰が上がっていない児童の多くが踏み込むあしの膝の引き上げが少ないことも気になった。

【5時間日】
・ねこちゃん体操
・うで支持・足のふり上げ・はじめの手の位置を少し遠くしてみるなど、ポイントを意識しての側転の練習

 腰が上がらないのはまず、しっかりと手で体を支えることができていないのではないかという視点で、友達どうしで手の平を合わせて押しあったり、1年生の時のくまさん歩きをしたりして、手で体を支えている感覚を思い出すようにした。また、足の振り上げが後方に高く上がっているか、はじめの手の場所をもう少し遠くしてみるとどうなるか、せなかは「ふ一」か「はっ」なのかなどその都度意識させるような声かけをしながら、グループで練習を進めた。

【6時間目】
・ねこちゃん体操
・グループ練習の後、発表と振り返り

C授業を終えて(成果と課題)

 まず、技術面での変容については、山とびの段階で横とびこしのように両足で着地し、おへその向きも反対なってしまう子が数名見られたが、手型や足型を使うことで、どの子も側転の手と足の運びを理解することができた。また、幼稚園の時から側転をやっていた子もいたが、グリコポーズの手の振りおろしからできている子はいなかった。今回は、「ライオンさんがガオーから山とびをするよ。」ということを繰り返ししてきたので、グリコポーズからの側転ができるようになった。とびばこを置いての山とびから、とびばこを外してマットの上での側転となった時に、もともと苦手な子は、お尻をついてしまったり、怖くて腰が引けてしまったりすることから、なかなか思うように体が使えていないことがわかった。「側転ができるようになる」という目標で取り組んだ学習であったが、2年生の段階では「ライオンさんがガオー、山をとびこえくるりんぱ」のお話マットで山とびで腰が上がることをめざすことや、着地の時の足の向きで前転につなげることなどを考えさせることの方がよかったのかもしれないと感じている。

 しかし、「どの子も腰の上がった側転ができる」ところまでは至らなかったが、グループでの学習の中に子どもたちが教えあう姿や「もっとできるようになりたい。」と、進んで練習する姿が見られたことはよかったと思う。

 また、ねこちやん体操や山とびの学習を他のクラスと合同でしたことによって、同じ学年の先生たちに「ともに取り組むことで技術要点をわかること、指摘することで相互の人間関係が深められる」など同じ課題で取り組ませることの大切さや、ただやらせるだけの運動ではいけないことにも気づいてもらえたように思う。ねこちゃん体操を教えあった時には、「それまでの体育館体育の準備運動では、音楽に合わせてのサーキットをしていたけれど、子どもたちの様子を見ていてもねこちやん体操の方が楽しんでやっていて、子どもに合っていますね。」や「今まで高学年で組体操をするときにブリッジをこんなにちゃんと教えてませんでした。」等の会話もあり、今までの体育でよかったのかなという問題意識も持ってもらえたように思う。しかし、側転につながる山とびが全員できた時に「先生がやってくれたからできたんです。わたしでは、できません。」という先生もいた。

 教材研究の段階からもっと学年の先生たちと話し合って一緒に作っていかないと、みんなのものになっていかないということが今後の課題である。

 ※ねこちゃん体操について

 学校体育研究同志会の大会に参加して学んだ。ねこちゃん体操のよさは、楽しみながら「からだの屈曲」「からだの反らし」などの体幹の動きができるようになることや、ねこちゃん体操の動きを意識することでできるようになることが増える。(例えば、このクラスでは、たくさんの子が鉄棒の逆上がりができるようになった。)

 「ねこちゃん体操からはじめる 器械運動のトータル学習プラン」山内基広著(創文企画)を参考文献として1年生の時から取り組んでいる。

 
   
  連続学習会「安倍政権の教育改革のゆくえ」(第5回) 
 
「教科書問題と『戦争する人づくり』」


日時 2014年10月25日(土) 13:30〜16:30
会場 京都教育文化センター 101号室
講演 「沖縄から見た教科書問題」
講師 高嶋 伸欣 さん(琉球大学名誉教授)


 八重山問題を中心に教科書問題とはどんな問題なのかを、問題の具体的展開を通じてお話を頂きます。「国民(人々)にとって教科書とは」について、考え合いましょう。

報告 「来年度から使用する小学校教科書(国語・社会)の問題点」
報告者 倉本 頼一さん

報告 「来年の中学校教科書採択に向けて」
報告者 大八木 賢治 さん

参加費 500円 どなたでも参加できます。

共催 京都教育センター 京都教科書連絡会議

連絡先 п浮ax 075−752−1081

  連続学習会「安倍政権の教育改革のゆくえ」(第6回) 
 
「6・3・3・4制」改革で、学校をどう変えようとしているのか


日時 2014年11月8日(土) 13:00〜14:30
会場 職員会館かもがわ(河原町丸太町東南下がる)
講演 「6・3・3・4制」改革で、学校をどう変えようとしているのか
講師 川地 亜弥子 さん(神戸大学)

参加費 500円 どなたでも参加できます。
主催 京都教育センター
連絡先 п浮ax 075−752−1081
 
 
 「安倍政権の教育改革のゆくえ」連続講座第3回は、「道徳の教科化の動きと、文科省副読本『私たちの道徳』分析」をテーマに8月23日おこなわれました。文科省副読本の分析を、大平勲さん、西條昭男さん、倉本頼一さんに報告してもらい、参加者で交流しました。交流の中で、「我々は学校全体の活動の中でおこなってきた。その中に我々の実践があるのではないか。」「生活に根ざした考え方、子どもたちの価値観と結ぶつけた実践はたくさんある。」「日常の中で一つ一つ考えていくことが大事」など、私たちのつくる道徳の実践の大切さが出されました。教育センターは、近く道徳の実践も含めた冊子「私たちの道徳教育」(仮名)を刊行予定です。
 
  第45回 京都教育センター研究集会(第一次要項)  
 
◇ テーマ(案)  「憲法が生きる教育・地域の創造」

◇日 時12月20日(土) 13:00〜17:00 ( 「全体会」 教文センター 302号)
         21日(日) 10:00〜16:00 ( 「分科会」 教文センター 全館)

◇会場 京都教育文化センター 各室

◇[全体会]
 記念講演 「憲法が生きる国・教育のあり方―安倍政権の歴史観・教育観とはー」(仮題)
 講   師 石川康宏氏 (神戸女学院教授)
 パネルトーク  「すべての子どもに夢と希望を」

◇[分科会] センター研究会による9分科会

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