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  ●京都教育センター通信 
復刊第85号
 (2014.4.10発行) 
   
憲法9条の精神を生かす教育実践を創造しよう

          京都教育センター代表         野中一也

 
 4月の新学期を迎え、お互いにしっかりと足元を固めて前進していきましょう。

 安倍政権は、憲法違反の秘密保護法などを制定し、日本国憲法とくに9条を改悪しようともくろんで暴走しています。そのために「教育再生」を最重要課題にすえています。自民党改憲案(2012年4月)では、「天皇は元首」であり、日本国は「長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を欺く国家」であると天皇主権の国家像を描いています。そしてそんな国家に忠実に奉仕する「人材」の育成をねらっています。憲法は、主権在民と平和主義です。

 安倍首相は昨年12月に、「太平洋戦争」を「自存自衛の防術戦争」であると主張している靖国神社を参拝し、世界から多くの批判を浴びました。しかし反省はまったくありません。日本は韓国・中国など多くの国を侵略した「悲しい歴史」をもっています。この歴史的事実に向き合うことによって、戦争責任を果たしていくことになるのです。

 1945年の敗戦で、日本は戦争犯罪を痛切に反省しました。そして私たちは、憲法前文には「政府の行為によってふたたび戦争の惨禍が起こることがないようにすることを決意」したと謳い、世界に誇る平和主義の日本国憲法を制定しました。

 しかし安倍政権は、戦前の天皇制国家・「教育勅語」体制との連続性を強引に追求しています。

 戦前のような「戦争する国」を目指し、「教育再生」政策を推し進めています。その中心的位置にあるのが道徳の「教科」化です。すでに文科省は「わたしたちの道徳」という副教材を編成し発行しています。歴史を改ざんしようとする「新しい歴史教科書をつくる会」の流れをくむ「道徳教育をすすめる有識者の会」が編集した『はじめての道徳教科書』(育鵬社)が出版されました。これらが集約されて「道徳」の教科書が出てくるのでしょう。人権意識がまったく欠如した態度主義になっています。日本の未来を担う子どもたちが「戦争する国」に忠実に向かっていく心の持ち主になっていくのではないかと心配しています。戦争は人を殺すのです。
 道徳が教科になると教育評価が伴います。「道徳」教科で、「戦争する国」へと進む心の評価を教師がしなければならないのは、恐るべき非人間的教育行為です。こんな教育を許してはなりません。

 競争と管理の厳しい現実ですが、私たちは目の前の子どもたちの姿を理解し、父母・地域の人たちとつながりあって実践を創造していきましょう。そして憲法がもつ「人類普遍の原理」を理解し、深化した運動により、改憲賛成の人たちにも共同の輪を広げ、人類の良心を内包する憲法が守られるような教育実践を創造していきましょう。

 
 
京都教研2013「学校づくり」分科会報告 スモール・イズ・ビッグ 小ささの教育力
こうして六年生になる!
〜サーティーンたちとともに歩む 普賢寺小学校最高学年の一年〜(後半)

                 京田辺市普賢寺小学校分会  府金 隆清

 


3.6年生サーティーンのスタート 名実ともの最高学年めざし

(1)あおぞらグループのリーダーとして

・6年生は13人。グループは赤3、白3の6グループです。6年生は各グループ2、3人で担当します。グループ分けは担任が前年度の組み合わせや、運営力量のバランスなどを考えて組みます。5年以下も上の学年のメンバーを見ながら決めていきます。運動会の赤白対抗のリレーの走力の均衡ができるだけ図れるように配慮します。

・まず「1年生を迎える会&グループ開き」をします。それだけでは遊び足りないので、中間休みに第2回目の班遊びとグループ全体遊びに取り組みました。

・夏祭りは、地域の自立支援施設と市内の作業所の方、特別支援学校に通う地域在住の児童を招いて開かれます。6年生がリードして、グループとしての願い事を決め、読み上げる練習や、短冊、飾り作りをし、ゲームなどをしながら一緒に給食を食べました。当日はグループごとに席を取り、お客様を交えての願いごとの交流、笹飾りづくり、クイズの答えの相談などをして過ごしました。

・運動会では児童会種目でグループ対抗の競技があります。今年は班対抗にさらにひと班が助っ人に入る「プラス綱引き」という競技をしました。

・12月にもう一度班遊びに取り組みました。

・3学期は大縄の取り組みです。8の字とびで引っかかっても通過すればOKというルールです。今年も大縄週間に入る前に6年生による1年生への8の字特訓授業を組みました。こんなときには優しい優しい6年生の顔になります。月曜から木曜は練習期間で、金曜日が大会です。だいたい6年生は回し役。メンバーのレベルに応じてスピードを調整するリーダーらしい役どころを担っています。学年が上がるにつれて背中を押してもらう側から、押してあげる側への成長が感じ取れます。

・大縄大会が終わると「6年生を送るとりくみ」がスタートします。

(2)児童会・委員会活動

・本部に当たる運営委員は5年生、6年生各3人。現6年生は1人を除いて全員経験しています。月3回ある児童朝礼の仕切り役、毎水曜の終わりの会の司会が日常的にあり、企画・実行していく行事も多く忙しいです。大きな行事での挨拶(離任式、着任式、入学式、運動会、学習発表会=原稿を見ずに)も6年生には必ず回ってくるので、注目度も高く、逆に達成感も大きい役回り。これだけの人数がやれるのは値打ちのあることです。

・委員会は前後期制で運営のほかに6委員会あるので、委員長枠が12あり、ほとんどが委員長になります。5人〜6人の委員会活動ですがそれなりの活動はあり、教職員と一体となって学校を回しているという感じがします。

(3)地域のリーダーとして

 6地域と特認校(京田辺と呼んでいる)の7班ありますが、6年生はほぼ全員地域長または班長。徒歩の班は3地域、小さいころからの付き合いがあるので仲がいいです。早くにバスがつく地域、放課後バス待ちがある地域は、6年生が自然にリーダーになって遊んでいます。小さな単位の集落でもそれぞれに運動会があり、とんどもまだかなりの地域で残っています。こうした地域の自立性が地域の子どもたちをつなげているという側面も見逃せないと思います。

(4)掃除班

 縦割りだが、一ヶ所の掃除班に全学年が入ることはなく、2人〜5人の編成。6年は当然のこと、一部5年生も班長になります。3箇所の名誉あるトイレ掃除は必ず5、6年生のペア。低学年のうちはちょっとふざける子もいますが、高学年ともなるとさぼりなどという言葉とは無縁。指導性のレベルはいろいろですが、ほとんどの子どもはよく働きます。


4.行事を節目に・・しょっちゅう主役になる

[運動会]

 一人三役、いや四役?開閉会式にかかわる役目を必ず持つので全校のリーダー集団という姿が引き立ちます。高学年の演技は組み立て表現です。3回目(4年生から参加する・・せざるを得ない)でもあり、最後でもあるということで6年生の組み立て表現にかける意気込みは並々ならぬものが・・。基本の技はすでに身に付けているので、4,5年生を引っ張りながら、教師と一緒に仕上げていきます(30分弱の長編)。総合の時間も当てるので、みっちり練習をしますが、いいものにしたいという意欲が強く嫌がりません。なんとずっと保護者席の方を向いて繰り広げられる、よくまとまった美しい演技に、全校児童、保護者、地域の人たちからの賞賛の拍手が贈られ、子どもたちは成就感に満たされます。退場とみせかけて、自分の地域のテントの前で、地域別グループの技を披露する一幕もあり、ここでも音頭を採るのは6年。翌年から参加する3年生はいよいよかという思いで見つめています。「自分たちも作った」というかかわりを作りたくて、BGMを推薦させることとテーマに使いたいフレーズ、詩(140周年にちなんだ私のオリジナル)に入れてほしい言葉を考えさせました。持ち寄ったCDを聴いて学級で選定し、推薦人の曲は必ず1曲は入れるように編集しました。自分たちで選んだ納得のBGM、きりりとした声での詩の朗読、完成度の高い技の成功、充実感に満ちた組み立て表現になりました。それぞれの役割を全うとしたことと合わせて、最高学年としての誇りが生まれ、下学年からの憧れも一層強くなっていきます。

[学習発表会]

 人数の減少に伴って低中高のユニットでの発表になりました教師の側も二人で相談しながら、複数で取り組めるようになり大きなメリットがありました。一人一人にせりふがある低中学年と違って、高学年は合唱、合奏が通例となっているので、一人一人の出番としては、間の語りをいれています。また合奏では6年生はリコーダー・鍵盤以外の楽器を必ず一度は担当して見せ場を作ります。これまでの6年生は、いわれるまでもなく、とっとと始める自主練習、全体練習の時には確実に前回よりうまくなっていました。苦手な子も着実に我が物にしてきた伝統があります。今年の6年生はちょっと心配・・・でした。もっと出来たかなと思われる子どもも何人かいましたが、充分に教師の指導力のなさを補って余りある演奏をしました。4年生以下の児童は「あんな楽器を演奏できるんだ」という羨望の眼差しで舞台を見つめ、参観の保護者・地域の人たちからはいっぱい誉めてもらって、達成感を味わいました。それが一部の子どもだけでなく全員にいきわたるよさが本校にはあります。(1月までの活動です)


5.異年齢活動が学級の課題となる

 小さい学校での異年齢活動は、6年生にとって、個々に委ねられる課題ではなく、学級全体がやらなければらない重要な課題になります。ここが力の発揮しどころなのです。ですから担任は6年生全体が成功させるべきこととして、その意味と具体的な手立てを全体に教え、促すことができます。児童会担当が、関係する一部のリーダーを集めて指導するのとはかなり違います。6年生が丸ごと関係するわけですから、学級で時間を取って準備することも可能なのです。そうした前段階があってこそ、6年生も自信を持って下級生の前に立てるわけです。そしてやりきっていくことが一人一人のものだけでなく、学級としての積み重ねられた歴史ともなっていくのです。出番があるだけでなく、学級集団の課題として取り組め、準備して臨めるという点も、小さい学校ならではの利点ではないかと思います。


6 終わりに

 決して、きらりと光るものばかりを持った13人の六年生ではありませんでした。課題も個々にはいろいろあった六年生でした。しかし、この2年間を振り返ってみて、豊富な出番と体験の中でこうしてそれぞれに六年生になりました。小さな学校の力が、今年のこの子どもたちにも確実に受け継がれてきました。それは間違いのない事実です。

 日本の教育界では小さいといわれる学校規模の地域に密着した学校こそが、子ども・教職員・保護者地域が共同して、親密な人間関係と豊富な出番と体験の中で人間としての力を身につけていく子どもたちを育てていくことができる」これは私の教師生活の最後の10年で得た確信です。

 「小さくても」でも「小さいけれど」でもなく、「スモール・イズ・ビッグ」だし「スモール・イズ・ベスト」なのです。「ただ小さければよいのか」という問いがあるかもしれませんが「ただ小さいだけでも随分よい」と私は考えています。スモールにすることの波及効果は、実際小さくなってしまった学校では実証的に示されているのではないかと思っています。


   
 

大規模な学校統廃合による地域生活の変化に関する研究
−−京都市東山区を事例に−−


 学校統廃合と小中一貫教育を考える実行委員会は、3月25日、大阪市立大学生活科学部居住環境学科教授の小伊藤亜希子教授と研究調査した学生さんをお呼びして、上記の研究調査結果を伺いました。

 その概要を紹介します。

1.研究背景

 京都市立東山開睛小学校・中学校は、2011年4月に東山区の5小学校と2中学校という大規模な統合を行い、9年間の一貫教育校として設立。小学校区は7校区と広域になり、一部の生徒は通学バスを利用。子どもの遊び行動や放課後の生活、地域とのつながりが変化したことも考えられる。

2.研究の目的  3.研究方向

 子どもの地域生活がどのように変化したかを、主に「登下校」、「遊び」、「つながり」に着目して明らかにする。保護者へのヒアリング及びアンケート調査、子どもへのアンケート調査で実施。

4.5.6.調査・分析

 子どもの通学、子どもの遊び、子どもと保護者の地域活動とつながりの3点で調査分析。

7.まとめ

 統廃合の結果、校区が広くなったことで学校から家までの距離が伸び、通学に負担を感じている子どもは多くみられた。バスを利用している子の方が、徒歩通学をしている子よりも負担を感じている子どもが多いことが明らかになり、地域によって負担の差が生じている。

 統廃合により住んでいる元学区外の友だちができ、遊びに出かける際に少し遠くまで足を伸ばす子どもが増え、その移動手段にバスが含まれるようになった。子ども同士の遊び生活では、学校からの距離が遠い地域では、家から家への移動手段と距離により保護者が気を使う場面が増え、遊びに出かける際には送り迎えをする保護者が多いことが明らかになった。

 保護者・子どもともに大半が身近な自治組織である元学区での自治活動や地域行事へと参加しており、それらが地域とのつながり・人同士のつながりを維持するのに有効に働いていると評価されている。子どもたちの間でも元学区の認識が薄れつつも完全にはなくなっておらず、元学区のまとまりは根強い。

 徒歩圏を越えた大きな学区は子どもの遊びや登下校に大きな負担がかかることが明らかになった一方、統合されたとしても京都独特の元学区のつながりを重要だと考える方は多い。それらの小さいまとまりを維持しつつ大きくなった校区の中で連携をとっていくことで大きな校区の問題が緩和できる可能性もある。統廃合による子どもの地域生活の変化及びそこに生じる地域格差を考えても、学校の統廃合は地域主体の地域の目線で行われていくべきであると考える。

以上概要を示したが、詳しくは大阪市立大学生活科学部居住環境学科小伊藤研究室ホームページをご覧ください(近日公開予定)。


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