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  ●京都教育センター通信 
復刊第78
 (2013.9.10発行) 
   
終戦68年目の夏 「悪魔の飽食」ロシア公演に参加して

          京都教育センター  中須賀 ツギ子
 

 この夏、混声合唱曲「悪魔の飽食」ロシア公演に参加しました。この曲は旧日本陸軍731部隊の罪状を告発し、不戦の誓いを込めた合唱組曲で、198410月制作(森村誠一原詩、池辺晋一郎作曲)以来、全国各地で歌われ、全国縦断公演、海外公演(中国、韓国、ポーランド、チェコ)と大きな広がりを見せています。

 第二次世界大戦中、ナチスドイツによるユダヤ人虐殺の蛮行と罪状は、戦後世界中で告発され、当時国ドイツ国内では厳しい反省の下、ナチズムの抬頭を法律で禁じています。その一方で、731部隊による罪状は、長い間隠されたままになっていました。森村氏調査(731部隊所属の隊員の協力を得て)人間が人間を虫けら同然に切り刻む生態実験を行っていた事実が「悪魔の飽食」として公表されると、国内外は騒然となり、様々な脅し、妨害、嫌がらせなどが続きました。しかしながら、真実のペンは強し、著書は多くの人々に読まれ、さらに発展して合唱組曲となり、今回のロシア公演へとつながっています。この曲に寄せられる全国各地の皆さんの情熱とエネルギーには、いつも驚かされ、私自身も退職後、ずっと歌い続けています。

 今回訪れたロシアも、被害を受けた国の1つ(ロシア人母と娘のマルタがガス室内で殺される場面は凄絶です。)で、モスクワとペテルスブルグのステージでも、この場面で涙ぐむ人も多かったです。演奏の後、戦争の悲惨さと平和への祈りに共感、連帯して下さった皆さんから、総立ちで拍手を受けるという本当に感動的な体験をしました。第二次世界大戦中、世界最大、2000万人以上の犠牲者を出したロシア人の哀しみと平和への願いを肌身で受けとめ、日本の平和憲法は何としても守り生かさなければならないと決意を新たにしました。

 モスクワから遠く離れたチェルノブイリから参加されたニーナさん(元教師)との出会いもありました。彼女はチェルノブイリの原発事故以来、原発ノ−の運動をされている方で、福島のことを我が事のように受けとめ、共に運動を広げようと訴えられました。公演に先立つ記者会見で、池辺団長は「戦争は被害と共に加害も語らなければならない。過去を凝視することは未来を見つめること。本当の平和、地球の未来へ向けて、ロシアの人々に我々のメッセージを伝えたい。」と語っていました。そのメッセージが、合唱を通してロシアのみなさんに伝わったのだと思い、無理を押してこの舞台に立てたことへの喜びと感動を味わいました。

 会場の移動はバスと飛行機で、至る所に火力発電所の巨大な煙突。地平線まで続く緑の大地には、豪邸と見まがう畑と庭つきの別荘が建っていました。冬の長いロシアでは、夏の暮らしは貴重で、長い休暇を別荘で家族そろって過ごすのが、普通の人達の暮らし方とか、ついつい日本と比較してしまいました。

 参院選挙後の安倍政権はどの分野をとっても国民の願いを裏切り、改憲を振りかざして、日本を戦争する国づくりへと突き進んでいます。教育の問題でも。教科書、ハダシのゲン閲覧制限発言、大勢の人に親しまれている「世界に一つだけの花」にまで、子どもの意志まかせだけではダメと非難する報道(教育再生会議の八木秀次氏)等、攻撃はすざましさを増しています。

 広島、長崎、そして福島。原爆、原発事故の被害を体験した日本人として、戦争はごめん、命こそが大事だと主張し行動する人々の輪を草の根から広げようと心から訴えます。

 

平成25年 全国学力テスト算数についての考察

                      京都教育センター 下田 正義

 

【はじめに】

 4月に実施された、全国学力テストの、結果が8月27日に公表されました。都道府県別の結果がどうだったかが、大々的に報道されました。多額の費用がかかるテストは廃止し、その分で、教職員を増やすことこそ必要です。そのことを前提にしながら、今回の報告では、@問題そのものが妥当であるかどうか。A誤答分析から指導のありかたを考える。この2点を中心にすることにします。

【算数6年B問題の問題点】

(1)2は振り子の実験にかかわる問題です。

 ? 実験3では,ふりこの長さを変えて10 往復する時間を調べ,下の表にまとめました。

ふりこの長さ(cm) 25 50 75 100
10 往復する時間(秒) 10 14 17 20
      実験 3 の結果

 この結果から,次のことがわかります。

 「ふりこの長さを 2 倍に変えたとき,10 往復する時間は 2 倍になっていない」ことを,上の表の中の数と言葉を使って書きましょう。

 この問題は比例していない例として適切なのでしょうか。10往復する時間に目を向けると、25pで10秒が100pで2倍の20秒になります。ここにはある法則が含まれています。中学校では、理科で「振り子の長さが振り子の往復する時間(周期)の2乗になる」を学習します。正比例ではありませんが、2乗に比例するのです。こうした問題を比例しない例として扱うことが学力向上になるのでしょうか?疑問です。

(2)グラフを使った問題が2つありました。資料の信ぴょう性はとても大切です。一つは、4女子サッカーチームにかかわる問題です。ワールドカップ前の2試合約2200人となっていますが、元データーは2287人ワールドカップ後の3試合約33000人元データーは33985人です。両方とも切り捨てれば問題文で扱われた数になりますが、四捨五入すると2300人、34000人になります。こちらが実際の数値に近いのです。もう一つは、5ある町の図書館の資料に基づく問題です。どこの町なのかは、資料に載っていませんでした。数値を見ていて本当に驚きました。本の貸出数は棒グラフで、来館者数は折れ線グラフで表されています。

 1年間の来館者数一番多い年で、4000人。本の貸出数は、7000冊です。1年間に開館している日を300日とすると平成23年度の1日の利用者は8人、貸出数は23冊になります。こんな図書館がどこにあるのでしょうか。こんなでたらめな資料を使って考えることで本当の学力がつくのでしょうか。

 結果公表後、誤答分析で明らかになったこと

(1)1(2)0.75+0.9  正答率全国71.5%、京都府69.3%です。この問題の誤答例は@0.84、8.4、84など14.5% A0.084 5.7%になっています。つまり、小数のかけ算との混同が誤答の中心になっているのです。小数の加減では、位ごとに計算するという原理があります。それに対して小数のかけ算で末尾をそろえて計算するのはその方が計算しやすいからです。合理性の問題なのです。ところが、実際の学習は、計算方法を覚えて、あとは繰り返し練習になっています。やり方をただ覚えるのではなく、筆算の仕組みを実感もって学習するための手立てこそ(たとえば、小数で表された大きさがわかるタイルを使うなど)必要です。

(2)3ある数を 3 でわったら,商が 9 であまりが 2 でした。ある数を求める式を,下の1 から 4 までの中から 1 つ選んで,その番号を書きましょう。
1 9÷3+2(10.4%)  2 9÷3−2(11.6%) 3 3×9+2(正答71.8%) 4 3×9−2(4.3%)

 誤答例としては 1と2を選んだ者が、22.0%です。文章の「3でわったら」と言う表現から÷3のある式を選んだようです。文部省の報告書では、4年での学習例が挙げられていますが、この問題は、3年のあまりのあるわり算の学習で、かけわり器にブロックを並べてわり算を解決する操作とつなげて学習するとよくわかります。全体量を□で表し、□がいくつになるかを、かけわり器に並べたブロックで考えるわけです。教科書では、2年のかけ算ではアレー図で答えを考えることをしますが、3年のわり算やかけ算では、導入でブロックをちょっと扱うけど、あとは、数字でと言う風になっています。2年のアレー図を3年のわり算や整数の乗法につなげていけばよくわかります。

 人数(人)面積(m2 )A126B85 (3)4AとBの 2 つのシートがあります。下の表は,シートの上にすわっている人数とシートの面積を表しています。どちらのシートのほうがこんでいるかを調べるために,下の計算をしました。

A 12 ÷ 6 = 2 B 8 ÷ 5 = 1.6

 上の計算からどのようなことがわかりますか。次の 1 から 4 までの中から1 つ選んで,その番号を書きましょう。

1  1 m2あたりの人数は 2 人 と 1.6 人 なので,Aのほうがこんでいる。 (正答50.2%)
2  1 m2あたりの人数は 2 人 と 1.6 人 なので,Bのほうがこんでいる。 (  11.7% )
3  1 人 あたりの面積は 2 m2と 1.6 m2なので,Aのほうがこんでいる。 (  16.8% )
4  1 人 あたりの面積は 2 m2と 1.6 m2なので,Bのほうがこんでいる。 ( 18.7 % )

 誤答例からわかることは、単位当たり量の学習で式の意味が量の関係で理解できていないことです。日常生活でも、円/L(ガソリンスタンド)とか、km/h(車のスピードメーター)などの単位当たり量が使われています。単位当たり量・いくら分、全体量の関係をかけわり図に表すことも含めて豊かに学習する必要があります。特に5年生では、啓林館以外の教科書の扱いを参考にして、啓林館の不十分な内容を補うことが必要です。

(4)5? 1 a( 1 アール)と同じ面積になる正方形の 1 辺の長さを,下の 1 から 4までの中から 1 つ選んで,その番号を書きましょう。

1 10cm (10.3%)   2 1 m (12.2%)   3 10 m (正答52.5%)  4 100 m (23.6%)

 4年の面積でa ha が出てきますが、その時だけで、その後ほとんど扱いません。面積の単位は正方形と同じ大きさを単位にしています。一辺の長さが1mmの時1mm2、10mm(1p)の時1p2、10p (1dm) の時1dm2、10dm(1m=100cm)の時1m2、10m(1dam)の時1a、10dam(1hm=100m)の時1ha、10hm(1q=1000m)の時1q2になっていることをぜひ扱いましょう (これも多くの教科書で触れています。) 。蛇足ですが,皮革製品を作るとき材料の皮革の単価は1dm2でつけられているそうです。

(5)7右のような円柱があります。

 この円柱の展開図を,下のように側面を長方形にしてかきました。次の問題に答えましょう。

 ただし,円周率は3.14 とします。

? 辺アエの長さを求める式と答えを書きましょう。(正答66.5%)
誤答例 8×3.14や4×2×3.14など 7.3%
14.0%は「6×8」や「6×8×3.14」のように、出てきた数値をかけているなど問題場面の意味をとらえることができていないのです。

【終りに】

今回の結果を本当に子どもたちの指導に生かすためには、問題の誤答分析と、その学習でどんな指導をしてきたのか、どのように改善すればいいのかについて議論し、子どものつまづきを力に、単元の基本的な内容を友達と一緒に豊かに学び合う授業を創造するための教材研究と実践を積み上げていくことが大切です。教科書と指導書に頼っている現状から、少しでも改善するためには、他社の教科書の扱いを知ることです。職場や地域で、そうした機会を作りましょう。資料提供をしますので、連絡ください。

 
   
 

「教育のつどい」開会全体集会に1800人

       記念講演 椎名誠さん「風の中の子どもたち」
 
 

 椎名さんの講演は、世界の基準と日本の基準の違いに大きくスポットをあて、世界の中での日本の位置を気づかせてくれる内容でした。

 水のきれいな国として日本は特筆できます。7割の森林に覆われ、周りは海という条件の中で、急峻な川が3万5千本あるという話です。しかし高度成長の中で川をいじくってしまい、ダムのない川は四万十川だけになってしまいました。長良川は河口堰をつくってしまったために川が死んでしまいました。

 メコン川で遊ぶ子どもたちは目をきらきら輝いていることが特徴でした。女の子は水くみ、男の子は魚取りをして家の手伝いをする。これが当たり前になっています。そこが日本と大きく違うところです。自分の子育てからいって「女の子は賢くあれ、男の子は健康であれ」ということを言ってきました。

 「地球が100pの玉だったら」という本を読んで考えさせられたことは、この本でいけば大気圏は1oしかない、その中で生きていることをもっと考えるべきだということです。

 最後に「死」ということについて多世代の人が考えています。自死する人が3万居る国です。これは異常なことです。大人たちが命がけで子どもたちを守っていくことが大事です。                     (教育のつどい速報より抜粋) 

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