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  ●京都教育センター通信 
復刊第75
 (2013.5.10発行) 
   
4・28「主権回復の日」の歴史認識を許さない

          京都教育センター 高橋 明裕
 
 4月28日、政府主催の「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」が開催される。「平和条約の発効による我が国の完全な主権回復・国際社会復帰60年の節目を記念」するという。第2次大戦の対日講和条約(サンフランシスコ平和条約)は1951年9月8日に調印され、発効したのが翌年4月28日であった。安倍内閣はこの日をもって「完全な主権回復」の日として記念・奉祝しようというのである。これに対して、この日以降もアメリカの施政権下に置かれ、1972年に本土復帰したとはいえ今なお米軍基地を押しつけられている沖縄から抗議の声があがっている。

 翻って、沖縄にとどまらず現在の日本が主権の制限を受けていないといえるであろうか。4月28日には講和条約とともに日米安全保障条約(旧安保)・日米行政協定(日米地位協定の前身)も発効している。話題の近刊、前泊博盛『日米地位協定入門』(創元社)は米軍基地の自由使用、日本全土の米軍の「潜在的基地」化という属国的な内容を押し込むための要が行政協定であり、そのために安保条約があり、安保条約を割り込ませるための条文が講和条約に盛り込まれている(第6条)ことをするどく指摘している。

 前年9月の講和条約の交渉と調印、条約内容にも忘れてはならない大きな問題がある。講和条約をめぐっては、西側諸国とのみ講和する早期講和(単独講和)論と、日本が戦争・植民地支配した全ての国と講和する全面講和論とが国論を二分していたにもかかわらず、当時の吉田首相は単独講和に踏み切った。そのため社会主義諸国の一部は招請に応じず、または調印を拒否したし、日本の最大の戦争被害を受けた中華人民共和国・中華民国は招請さえされなかった。日本の植民地だった朝鮮半島の韓国と共和国も対象とならなかった。さらに講和条約第2条に日本の領土の放棄が定められたが、戦後の日本の領土についてはカイロ宣言にもとづくものとポツダム宣言にあるにもかかわらず、千島をソ連に引き渡すヤルタ協定の内容が盛り込まれた。これは今次の戦争による領土の拡大、不当な領土変更を否定した大西洋憲章・連合国宣言に反するものである。また講和対象とならなかった韓国に関しては、日本が朝鮮に対して放棄する領土の項目から竹島(独島)が最終的にはずされて曖昧となったことから李承晩ライン設定という強硬策を招き、今日の竹島・独島問題の火種を残した。尖閣諸島は南西諸島(沖縄)とともにアメリカの施政権下にあったが、1972年の沖縄の本土復帰に際し中国外務省から尖閣諸島(釣魚島)の領有権が声明され、同年の日中国交正常化交渉では領土問題については賢明にも棚上げとされることとなった。これら北方領土、竹島、尖閣諸島といった日本が抱える領土問題の火種は、日本の戦争責任・戦後処理を曖昧に付したサンフランシスコ平和条約の調印内容、単独講和に問題があったといって過言ではない。

 自民党の選挙公約では次の2・11「建国記念の日」の国家式典を開催するとしている。4・28「主権回復」とは日本の戦争責任・戦後処理を未だに曖昧にした歴史認識の現れである。2・11不承認とともにこの日を戦後史を見直していく運動のきっかけとしていきたい。

 
 
2012年京都教研「平和・国際連帯」分科会報告
感じた心、みたものの事実、伝えたい声に思いを寄せて、若ものらしく平和を紡ぐ
−ふりそでの少女「みらいいろ」2年目のとりくみ−

                      新庄 久美子(中丹支援学校)
 
 
1 はじめに

 平和教育が学校現場で取り組むことが難しくなり、子ども達はもとより、平和教育をくぐっていない先生達が教壇にたつようになってきている。そうした中、京都の北部にあって、長年「ふりそでの少会女像をつくる会」を中心に平和活動を続けてきた先輩の先生方と一緒に活動することになった私は、今だからこそ、こうした草の根の地道な活動の意義を感じている。

 「ふりそでの少女像をつくる会」結成15周年を機に発足した、高校生平和サークル「みらいいろ」。2年  目になった高校生のとりくみは、小さくともしっかりした思いでとりくむようになってきて、高校生の底力を感じました。

 今回のレポートは、この1年間の歩みをふりかえって、その意義を確かめていきたいと思います。


2 1年間のとりくみ

(1)4月例会・川口地域の戦争遺跡を探る

 福知山川口中学校区のお寺は大阪からの学童疎開の受け入れさきだった。今も平和の大切さを維持しようとしている年輩の人たちの想いにふれればと企画した。中学生の参加もあり、その後、会に入り活躍します。

(2)5月例会・活動計画を考える

 新しい仲間を迎え、今年度の活動を考えた。昨年の長崎行きで感じた自分の体験をあつく語る先輩高校生。今年も原水爆禁止世界大会(広島)に参加したいということになった。そして、広島にいくなら、もう一度、芦田晃さんの話を聞こうということになった。

(3)6月例会・芦田晃さんの被爆体験を聞く

 広島原爆で被爆された福知山市在住の芦田晃さんからその被爆体験をうかがった。芦田さんは手書きの地図や手記も用意されていて、それらを使って原爆投下直後の様子、翌日以降広島の焼野原を歩いた体験をリアルに話された。被爆者の体験談は、はじめての生徒もあり真剣に聞き入っていた。高齢にもかかわらず、しっかり話される姿から「若い人に伝えたい」という思いがひしひしと伝わった。

(4)7月例会・冊子づくり(3回)

 原水禁世界大会に行くことを決めたみんなは、昨年の体験をもとに自分たちで仕事を分担し、てきぱきとすすめていった。
・冊子 自分たちの決意や、昨年度からの活動記録や前回の長崎・原水禁世界大会の感想などをのせた。
・カンパの訴えの文章つくり
・カンパの訴え・・各団体の集まりに積極的に分担して訴える。保育園の夏祭りでは浴衣で参加。

(5)8月例会・原水爆禁止世界大会参加・現地フィールドワーク

 広島原爆投下の日と翌日に芦田さんが歩かれたであろう道を歩くことに決め、直前の学習としてご自宅を訪問し、最終的に歩くコースとその周辺の原爆投下直後の被爆状況を確認した。
この学習会には4つの新聞社が取材をしてくれた。
以下@〜Dは主に歩いた地点と内容。
@ 広島三菱造船所 8月6日学徒動員の動員先
8月6日に被爆された場所。幸いほとんど負傷はされず、午後に宮島の宿舎へ戻られる。造船所では人間魚雷の製造に携わる。中には入らせてもらえず。
A江波の海 8月7日朝本川河口(江波)の海では死体が浮かんでいた。みんな静かになって見つめていた。
B江波山横の脇道 広島の街が廃墟となっているのを見られた場所。民家の細道を歩いた。
C住吉橋・明治橋 おそらく8月7日に渡られたと思われている橋。死体が道を覆い尽くしていた所。
D広島高等師範学校 当時在籍しておられた学校。
○他のヒロシマツアーでの内容
  ・各バスに乗り込んでカンパの訴えをする。
  ・被爆瓦で作られた子ども像の慰霊祭参加・貴重で、悲惨な被爆体験を聞く。
  ・全国高校生平和集会への参加・活動報告、交流

(6)9月例会・綾部戦争展・福知山戦争展での報告

 ヒロシマから帰って、一週間で「芦田さんの被爆コースを歩いた」事実を模造紙にまとめ、綾部戦争展、福知山戦争展で、高校生達だけで報告。
・綾部河川敷キャンドルアピールで発言
・石巻ボランティア参加の高校生に体験談を聞く。

(7)10月例会・フィールドワーク

・原発の町・大飯を歩き、見て、感じたあと「生物学から原発を考える」島田先生(元宮津高校の先生)の話を聞く

(8)11月例会・紙芝居づくり、横断幕つくり

 芦田さんの、伝えたい思いから、他の人にも伝えたいという高校生が、いよいよ、紙芝居つくりにチャレンジ。場面ふりや絵の構成をみんなで意見を出し合った。やはり、イメージがあるとこんな風になるのかと感心するほど意見が飛びだした。また、「みらいいろ」の横断幕づくりは、美術部の生徒が手伝い、後に紙芝居作りの大きな力につながる。

(9)12月例会・紙芝居つくり

 作成した文章を何度も検討。「本当に意味がわかるか、客観的な立場でどうか」論議が深まっていった。寒い夜なので、持ち寄りの具材で、鍋を囲んでの会だった。一つの物を作り上げる大変さと、あたたかいこのサークルの一体感もでてきた。

(10)1月例会・トマトの検証・紙芝居つくり

 紙芝居の重要なポイントになる芦田さんがふるさとに帰ってきたときにトマトを拾う場所を芦田さんとみんなで歩いた。そこに立ってこそわかることがある。それは、芦田さんのつらい体験からのがれ、我が家に「帰りたい」思いだった。この思いがラストの場面になり、チラシとなった。

 更に、文章・絵の検討がされた。「芦田さんの話を聞いて、現地を歩いてきたのに、もっとリアルにならないかなー。感情が伝わるようにならないかなー。」たくさん意見がだされ、書き直された。

(11)2・3月例会・紙芝居作り

 美術部の友達にも手伝ってもらい色塗り開始。試験の合間をぬって、精力的にとりくむ。ふりそでの少女像を製作した余江夫妻をよんで、浮島丸の絵本つくりの話しを聞き、思いや技法を学んだ。完成。

 地域のFM放送の番組にパーソナリティーとして参加高校生だけで、生出演。堂々と話しびっくり。

3 まとめにかえて

とりくみのなかで、続けていくことの大切さを感じました。今年は体験したことをもとに、模造紙にまとめてみるとか、紙芝居をつくるとか「形にしていく活動」にいきいきと取り組む姿がみられました。その原点には学んだことを他者に伝えたい、たくさんの人に知ってほしい願いがふくらんできたのではないかと思います。

 活動の中で「震災のボランティアにいきたい」など、具体的な行動に結びつける高校生も出てきました。その仲間をみて、もっと学びたいという声もあがり、いろいろな学習会に広がった。また、紙芝居作りでは絵の上手な人、文章の組み立てがうまい人、…とそれぞれ得意な分野が生かされ、互いを認め合い、「やるなー」とほめあうことがありました。高校生同志で刺激し合い、高まっていることが受け取れました。

 さらに、知識としての情報は多いものの、経験の少ない高校生にとっては、実際にその場に立つことで、いろいろ純粋に感じていると思いました。これがフィールドワークの魅力なのだと思いました。

 「ここへくると、思わず、ただいまといってしまいそう。」「私には学校にはない別のグループがありいそがしい」活動を通じ、仲間同士への安心感や成長できる集団を感じています。競争をあおり、自分をだせない高校生活になってきている現状の中で、そんなサークルを大切にサポートし、たくさんの高校生を迎え入れたいといいます。しかし高校生三年生は受験に向けて、活動を控えていきます。その点では、一年生にたくさん入ってきてもらうとりくみを考えていかなければと模索中です。

 そして、サポートする私達も大変忙しい状況ですが、互いの良さを出し合いながら、この地域にある平和の財産を生かして、地道に楽しく続けられるよう今後もがんばります。(2012京都教研分科会報告より抜粋)(追記)3月31日に、完成した紙芝居の報告のつどいを、福知山市・綾部市の後援を得て、広く呼びかけ、開催できました。

 
   
 
管理と競争の教育に抗して、子どもの豊かな発達を保障する教育を!
―2013年度の京都教育センターの活動方向―


 
 
1.(1)基本方向

 ・新自由主義と復古的教育観による統制的教育に抗して「子ども論」を軸に、すべての子ども達の豊かな発達を保障する教育活動や教育実践を現場教職員との連携を強め、普及に努める。
 ・医療・福祉分野との連携を探り、地域における学校のあり方を父母とともに探求する。

(2)活動の重点

 ・安倍の教育再生、橋下維新の会の動向に注視し、本来の教育のあり方を探求し、広める。
―教育委員会制度、道徳教育教科論などー
 ・いじめ・体罰、発達障害など子どもの発達に関わって子どもの人格形成上の課題を探求する。
 ・現行学習指導要領、教科書の問題点、学力テスト体制を検証し、自主的な実践をつくる。
 ・地域での子育て運動とともに今日の学校のあり方を父母・教職員とともに考え、共同を広げ、課題を探る。       ―高校教育、学校統廃合、部活動、土曜授業などー
 ・福島の実状を直視し、原発問題と子どもの育ちと教育のありようを検証する
・来春の知事選に向けた府政のあり方を検証する。

2.センター体制

・代表:野中一也 
・研究委員長:高橋明裕 
・事務局長:本田久美子 
・事務局 下田正義
・運営委員(上記含めて18人)浅井定雄 大平勲 川地亜弥子 倉原悠一 倉本頼一 相模光弘 西條昭男 高垣忠一郎 築山崇 中須賀ツギ子 中西潔 原田久 得丸浩一(細田俊史)
・「ひろば」編集委員:西條(編集長)、倉本、川地、本田、下田
・HP管理 浅井
◎ 各研究会事務局担当
 地方(葉狩) 生指(横内) 学力(市川) 発達(大平) 地域(姫野) 高校(原田)カウンセリング(原木) 国語(西條) 障害児(西城)

■運営委員会 (会議)第2土曜 (学習会)第4土曜 いずれも午前中 センター室にて

3.恒例のとりくみ

◎第44回教育センター研究集会 12月21日(土)、22日(日)教文センター
〇「センター通信」の発行:毎月10日 教育実践の紹介を
〇 季刊誌「ひろば」の発行:5月、8月、11月、2月 定期読者募集中
※ 教育センター室は別館2階(月・水は10:00〜16:00)

今後の予定

 学力・教育課程研究会公開学習会
  6月2日(日)13:30〜 教文301号室
       教育実践に学ぶ:久保齋、乙訓青年教職員(予定)

京都教育センター公開学習会 「安倍政権の教育改革のゆくえ」
     6月16日(日)13:30〜  教文センター103号室
     講師 石井拓児 (愛知教育大学准教授)
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