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●京都教育センター通信 
復刊第53号
 (2011.5.10発行)

「言論の自由」を求めて都教委を提訴
   「嘘」が「嘘」を証明した

           元東京都立三鷹高等学校 校長 土肥信雄



 3月17日、東京地方裁判所527法廷で第9回目の裁判(口頭弁論)が行われました。被告(東京都教育委員会)側の証人として加藤学務部課長(当時)が「米長氏を原告(土肥)が批判したという情報は、1回目の指導と2回目の指導の間に入手した」と発言した時、私は「ふざけるな。1回目から米長氏の件で指導を受けたぞ。そんな嘘つくな」と心の中で叫びました。

 私は現職中に様々な言論弾圧を都教委(東京都教育委員会)から受け、最終的には非常勤教員不合格という報復措置を受けました。現職中に何度も都教委に対して「言論の自由」の問題で公開討論を申し込みましたが、全て断られたため、裁判という公の場で公開討論を行いたいと思い、都教委を提訴したのです。(現職中の私に対する言論弾圧と裁判の内容につきましては、「それは、密告からはじまった」(七つ森書館)に詳しく書いてありますので是非お読み下さい)

 裁判の中で最も許せなかったのが、私が当時教育委員であった米長氏を批判したことを都教委に密告され、指導された内容が、私の主張と都教委の主張が全く違っていたことでした。密告により、指導されたのは3回(2006年10月6日、23日、25日)で、25日には米長氏が三鷹高校に視察に来ることを告げられたのです。一方、都教委は、指導したのは2回(10月6日、24日)で、米長氏が三鷹高校に視察に行くという指導はしていないと主張したのです。恐らく米長氏の三鷹高校視察の件は、全くなかったことにしたかったのだと思います。私にとって米長氏の三鷹高校視察の件は、私の言論を封じるための脅迫そのものであると感じましたし、このことが都教委の横暴を社会に訴えようと私が決意した原因だったのです。

 米長氏を批判したのは理由がありました。皆さんもご存じだと思いますが、2004年10月、天皇の園遊会に呼ばれた米長氏は、天皇にお褒めの言葉をもらおうと思い、「日本中の学校で国旗を掲げ、国歌を斉唱させることが私の仕事です」と話しかけたところ、逆に天皇に「やはり、強制になるということではないことが望ましい」と諌められました。自分の尊敬する人から諌められたら、「申し訳ありません。今後は強制しないようにしていきます」と答えるのが当たり前です。しかし都教委の国旗・国歌の指導は、それ以後も天皇の意思に反して、ますます強制の度合いを強めていったのです。だからこそ私は米長氏を批判したのであり、それが密告されたのです。

 そして1回目(10月6日)の時から、米長さんを批判したことを都教委から強く指導(私への言論弾圧)されたのです。そのことは私の手帳にも明記されています。だからこそ加藤氏が発言した時、嘘をつくなと心の中で叫んだのです。この加藤氏の嘘は絶対に許せませんでした。この思いが、ジャーナリストの池添徳明氏を思い出させたのです。池添氏は、私が三鷹高校に赴任した2005年4月から私を取材していたのです。もしかすると池添氏に密告の件を話しているかもしれないと思い、すぐに連絡をしました。すると、池添氏の取材ノートに、私の主張とまったく一致する記録が残っていました。「10月23日(2回目)、土肥氏が都教委に指導を受けた帰りに横浜の喫茶店で待ち合わせ、10月6日と23日の指導の内容について取材した。1回目から米長氏の件は指導された。25日(3回目)には午後8時頃土肥氏から電話があり、米長氏が近々三鷹高校に視察に来ることを告げられた」。都教委の主張がすべて捏造されたことが明らかになったのです。加藤氏の「嘘」がなければ池添氏を思い出すことはなく、まさしく加藤氏の「嘘」が、都教委の「嘘」を証明してくれたのです。私にとって裁判上とても有利になったと思います。

 〔1948年生まれ。東京大学農学部卒。現法政大学講師。校長現職中に「職員会議の挙手採決禁止」の都教委通知に撤回要求。1月の京教組青年教研で記念講演。〕






2011年度全国教研社会科 推薦レポート
「憲法を人生のなかに生かそう」

      戸谷 嘉之(宇治市立宇治中学校)


はじめに

 日本国憲法は国の最高法規である。
 第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
 私達、社会科教師は、少なくとも義務教育の段階でそれら憲法の内容を伝えること。そして、憲法を通して生命・自由及び幸福を追求していくことを子どもたちにも教えていかなければならない。求められる法教育の基礎である。憲法によって人生がおおきく創造されるし、その国民の幸福も変わることは歴史の事実が証明している。

1.大日本帝国憲法から日本国憲法にかわって 日本はどのように変わったのか〜憲法は国の最高法規である〜

 憲法によってその国の国民の運命はおおきく左右される
大日本帝国憲法下の国の動きは次の通りである。
1898.2.11:大日本帝国憲法制定
1894〜95:日清戦争 
1899〜1900:義和団事件 八ヵ国連合軍中国出兵
1904〜05:日露戦争 
1910:韓国併合 
1914〜18:第一次世界大戦 
1915:中国への21か条要求 
1917:ロシア革命に対する干渉戦争 シベリア出兵
1923:関東大震災 中国朝鮮人への蔑視
1925:治安維持法 普通選挙法 
1931:満州事変 
1937:日中戦争 
1941:アジア太平洋戦争
1945:終戦

 歴史的分野におけるこの戦争史と対外侵略の歴史の事実を教えることは特に大切である。これらの内容については、事前に生徒に課題を与え調べ学習をさせる。まず、自ら調べることで子どもたち自身が少なからず平和と戦争の事実に関心をもってほしい。

 いま、学校教育のなかでどんどん「平和教育」が遠ざけられている現実からして、あらためて事前の学習を歴史学習として提起することは重要である。それを前提として、授業のなかでは、天皇主権の憲法によって翻弄され、生命をも天皇のためにと犠牲せざるをえない時代。もちろん基本的人権は、法律の範囲内ということで制約を受ける。そのなかで、「忠君愛国」の教育のなかで、「天皇陛下のために戦場でいのちを投げ捨てることが名誉である」という教えられた時代。こどもたちは、そのような奇妙さに戸惑う。……ひとつひとつ何が正しくておかしいことなのかをきちんと自分自身で考えて検証していくことの大切さも授業を通して考える。このことも社会科の本質である。

 また、日本がおこなった対外侵略の歴史。日清戦争のあとの下関条約や日露戦争のあとのポーツマス条約でも、朝鮮・満州の支配権の目論見は顕著である。そして、それらが韓国併合へとつながる。さらに、満州国の支配ともあわされ、中国侵略、南京大虐殺さらにはアジア太平洋戦争のなかでの東南アジア諸国への侵略と大日本帝国の侵略史の歴史事実を学ぶのである。この歴史学習は、加害の歴史を考える上で重要である。韓国併合のなかでの事実、南京大虐殺は、深入りはしないが、日本が日中戦争のなかでの侵略行為。満州事変も日中戦争も謀略により、開戦したことも大切な事実である。

 そうした中で今日の「歴史の偽造」や「歪曲」ほんとうにあったことをまるでなかったかのように捻じ曲げる そして真摯な反省なく物事を本質をあらためようとしにない。これも日本の恥ずかしい一面であり、今日の政治状況にもそれは反映されている。

 「アジア諸国民を欧米の支配から解放するために大東亜共栄圏をうちたてようとした」開戦の理由は口実であって、いまや偽造であることは明らかである。ここにも騙されない。事実にごまかされない。真実を見抜く視点をもつ大切さ、社会科の本質がある。

2. 憲法前文のなかにこめられたもの

 3年時の公民的分野では、具体的な憲法学習を行う。私は、毎年、テーマソングとして「ケサラ」を歌い、「平和と自由 求めて生きていけばいいのさぁ」と授業開きをする。「平和」と「自由」そして「しあわせ」を獲得するために学ぶのである。

 今の時代は、ある意味自由が保障されてるように感じる。けれども、現実はどうだろうか…。憲法や政治、経済、そして労働や社会福祉、地球環境、国際問題など諸問題の現実をみつめながら、今の色んな日本の社会のあり様を検証して、その中で未来にむけ、どう生きるのか。この日本をどう創造・変革するのかを生徒達と共に考える。日本国憲法の前文の学習も重要である。まず、きたがわてつさんの「日本国憲法前文の歌」を一度目は、テープで、二度目は、私自身が歌う。生徒達はこんな歌があることを驚く。理解のさせ方は難しい課題であるほど、多様に創意工夫をこらさなければならない。現実の生活が日本国憲法と関わっているなんて考える生徒達はほとんどいないだろう。だからこそだ。続いて、日本国憲法前文を歌をイメージしながら読み解く。

 ☆ 日本国憲法前文を読んで感じたことは、1889年2月11日に出された大日本帝国憲法とはぜんぜん違うということです。昔の憲法は、天皇が政府の中身で、国民のことを何も考えずに戦争を平気でやって、独裁的な政治だったと思うが、今は国民が中心で平和を願う国をつくる政治のやり方なので、私は、昔の憲法から日本国憲法に変わり、「日本」という国が変わったのではないかなあと思いました。もしも、今の日本が昔の大日本帝国憲法で政治をおこなっていたとすれば、戦争はまだ続き平和な国になれなく国民も自由ではなかったと思います。この憲法があるおかげで、今現在の日本があると思います。

3.憲法に保障された基本的人権をあらためてよみがえらせよう。

 基本的人権の丁寧な学習はこれから未来に生きていく真に人間らしい生き方をするうえで重要である。「権利 権利ばかり主張して義務を果たさない人間が多い。権利を主張する前に国民の義務を学ばせるべきである」という論調で権利学習を批判する人もいるが、国民の義務は、親が保護する子女に普通教育を受けさせる義務、勤労の義務、納税の義務だけであるのは、当たり前の事実である。義務 義務いう人々は国民になにを果たせというのか。さて、基本的人権が永久不可侵の権利として主張されたことは重要である。どういう権利が保障されているのか。色々あるが基本的人権の学習は、基本的人権の基本原則(永久不可侵・法の下の平等・不断の努力)自由権(身体の自由・精神の自由・経済活動の自由)参政権・社会権・基本的人権を守るための権利・新しい権利などを通しておこなっていきたい。

 これらの基本的人権の獲得は、まさに第12条でいうように「不断の努力」が必要である。人類史のなかでこれまでの戦いのなかでかちとられたこれらの基本的人権をただ暗記に終わらせるのでなく、実感としてエピソードや諸外国の例もふくめてこどもたちに感じさせることこそが、未来を生きるこれからの日本を良い方向に変革していく原動力になるだろう。各々の条文を語句や用語の暗記や分類だけにとどまらせずに、その思いや先人の苦悩、また今を生きる社会の課題などを教材にこの基本的人権の学習は進めていくようにしている。この基本的人権の学習の最後に、どんな条文が大切だと思ったのかをアンケートをとった。こどもたちの選んだ条文と理由は次のとおりである。

3つ選択       (生徒74 人)

第1位 憲法25条 生存権 36人

☆ 人間は貧しくとも生きられる権利は大切。
☆ やっぱり国民は元気に明るく健康にくらした方が絶対に楽しいと思うから大切だと思う。
☆ まだホームレスとかいるけど、そんな人たちも含めて日本国民なので、全員が「健康で文化的」な生活をおくれるようにもっとこの25条をおしたらいいと思う。

第2位 憲法11条 基本的人権永久不可侵の権利 28人

☆ この憲法がなければ日本は破壊されていると思う。
☆ これは、絶対大切だと思います。国民1人ひとりを大切にするのでなによりです。

第3位 憲法14条 法の下の平等 23人

☆ これがあってもただでさえ、差別がおこなわれているなかで、なくなれば大変なことになるから。
☆ この条文がないと平和にはくらせないと思う。絶対に人種・信条・性別の差別はしてはならない。

第4位 憲法18条 奴隷的拘束及び苦役からの自由11人

☆ 今まで差別されてきた人々や、戦争中、工場で労働させられる人がいたが、もうこの憲法により、それがなくなって、そのような行為がおこなわれないことが決められた。
☆ 奴隷的拘束は絶対にだめだと思う。

第5位 憲法27条 勤労の権利及び義務 10人

☆ 働かなければ経済は、ストップしてしまい、国が崩壊すると思う。
☆ 日本国民には、勤労の義務があるから、国はみんなが仕事を出来るように仕事を作らないといけないと思うから。

第6位 憲法16条 請願権 9人

☆ 請願するのは必要だと思うし、これがないともし、請願したときに差別されるかもしれないから。
☆ 自分の意見を言ったら差別されるというのをなくすのはいいことだと思う。

第7位 憲法22条 居住・職業選択の自由 9人

☆ これがないと住むところもやりたい職業も自由に決めることができないから。
☆ これがなければ親のいいなりになったりするし、自分で選べるということはすごくありがたいと思う。

第8位 憲法26条 教育を受ける権利 8人

☆ 平等が一番やし、教育も平等じゃないといけないから。教育を受けることによって、自分たちの力で生きていける力を身につけ、自立していけるから大切だと思う。

 改めて教育のなかで「憲法を丁寧に知ること」「学ぶこと」の議論をしていただければ幸いである。
(詳細は、京都教育センター通信53号をごらんください。)



2011年度 教育センター活動方針

1.基本方針

センター設立50年の節目を経て、改めて設立の理念を想起しながら、今日の新自由主義による教育改革の問題点や矛盾を明らかにし、新たな教育のあるべき方向を提起していく。

2.重点的な課題

  センター設立の経緯と理念および「三つの原則」を再学習する
  新学習指導要領の全面実施(小)、教科書採択・移行実施(中)にあたり次の課題に取り組む
@    小学校学習指導と学習評価のあり方を検討し提起する
A    中学校教科書の内容検証(特に社会科)と公正で民主的な採択のとりくみを共同してすすめる
B    教育課程編成と結びついた学校づくりをすすめるための指針を提起する

高校教育の課題を検討し、提起する
  地域と教育の関わりを検討し提起する(地域での子育て運動、子ども・父母・教職員をつなぐ)
  各研究会のあゆみを総括し発展させることをテーマとした研究討議の推進

3.公開研究会の開催

 各研究会の主体性を堅持しつつ、センターとして位置づける研究会(重点課題)の成功を(決定分) 5/28(土)[地教行研]6/25(土)[発達研]9/24(土)[地域研]11/26(土)[生指研]

4.第42回センター研究集会について

・12月24(土)25(日) 教育文化センターにて 記念講演他 9つの分科会

5.事務局体制の強化

・事務局会議:第2土曜日   事務局学習会:第4土曜日(メンバー外の参加も可)
・実務事務局体制の強化:補強と分担

6.その他

(1)記念誌「風雨強けれど光り輝く」の普及促進(残部500) 季刊誌「ひろば」の拡大普及
(2)センター室の活用と管理の基準化  ※「センター通信」「センターHP」の充実

〜事務局体制〜 

代表:野中一也 
研究委員長:築山 崇 
「ひろば」編集長:西條昭男 
事務局長:大平 勲

事務局員: 高垣忠一郎 市川 哲 高橋明裕 倉本頼一 中須賀ツギ子 倉原悠一 本田久美子 浅井定雄 中西潔 相模光弘 細田俊史 長尾 修






民主府政「落城」後、30余年の「京都の教育」を検証
★京都教育センター編『風雨強けれど 光り輝く 検証!京都の民主教育1978〜2010』

 「風雨強けれど 光り輝く」は、民主府政「落城」の1978年以来30余年間の京都の教育の変遷をまとめたもの。厳しい攻撃が相次いでいたが、「やられっぱなしではない!」この間のたたかいをまとめました。8人の編集委員〔野中一也・大平勲・小野英喜・中西潔・磯崎三郎・高橋明裕・松尾隆司・西條昭男〕が昨年の9月以来合宿を含め14回の編集会議を重ねて刊行しました。この間のたたかいの中にみなさん方の足跡が反映されています。是非、手にとってお読み下さい。



季刊『ひろば』の人気連載から37編を厳選・加筆
★早川幸生著『京都歴史たまてばこ

 「京都歴史たまてばこ」は早川幸生さんがこの間『ひろば』に連載された中から37編を加筆編纂されたものを集めたものです。調べ歩いた京都の風物詩に引き込まれること請け合いです。


*2011年1月から、京教組各支部書記局で求めることができます。
*また、申し込み用紙(PDF版)にご記入いただいて、ファックスでお申し込みいただくこともできます。

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  http://www.kyoto-kyoiku.com  検索「京都教育センター」

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