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●京都教育センター通信 
復刊第48号
 (2010.10.10発行)

【京都教育センター設立50周年記念出版】
『風雨強けれど、灯は消えず
(仮題)
−−京都の民主教育1978〜2010−−』
                  2010年12月刊行 ご期待を!

                     大平 勲(京都教育センター事務局長)



 京都教育センターは1960年7月の京教組定期大会でその設立が機関決定され、同年9月24日の第一回評議員会で正式に発足しました。以来、50年を経た訳ですが年末には記念する「研究集会」と「つどい」を開きます(4面参照)。そして、この記念すべき節目にあたって『風雨強けれど、灯は消えず――京都の民主教育:1978−2010』というタイトルの本を出版します。

 教育センターは1974年に『民主教育―戦後京都の教育運動史』を刊行し、民主府政時代の京都の教育の到達点を全国に発信しました。その蜷川民主府政が「落城」して以降30余年間、反動府政による民主教育つぶし、京教組攻撃などが相次ぎましたが、私たちは決して攻撃に甘んじていたわけではなく、その都度、智恵と力を結集して反撃しその狙いを許さない果敢な闘いを続けてきました。

 野中広務副知事を先頭にした反動勢力は、「西に文部省」の異名を取った「京都の教育」をせめて全国並みのレベルにおとしめるため、とりわけ80年代の10年間の攻撃はなりふり構わぬ激しいもので、当時の府教委を「一周遅れのトップランナー」と称するほどでした。

 私自身も80年代初めに京教組教文部長の任にあり、「組合教研攻撃」や「高校三原則つぶし」の闘いに精魂を傾ける日々を余儀なくされました。また、90年代末から2005年までの6年間、今度は委員長として府教委などと対峙してきましたが、この間はすでに全国並みの域に達したのか京都独自の攻撃は影を潜めたものの、新自由主義教育観による全国的な「教育破壊改革」が相次ぎ、私たちの学校現場も予測しがたい困難と閉塞感に直面しました。京教組はその都度、果敢に反撃の方針を打ち出し積極的な運動を提起・実践してきましたが、相次いだ闘いを総括し、中長期的な展望を指し示す点では十分ではありませんでした。その責任は私自身にも多くあることを自覚しています。そうした思いもあって、今回この30余年の攻防を総括する出版を企画しました。

 出版に当たって意図したことは、今の現場では9割近い人が「落城」後の採用であり民主府政の「恩恵」には浴してなく 現状に違和感を持たない人が増えてきていることに危機感を抱いたこと、また、この間は決して「やられっぱなし」ではなく、激しい攻撃に抗した反撃によって民主教育の真髄を理解したことを伝えたい思いがありました。攻撃は激しかったが、「革新の灯台」といわれたその「灯」は燃やし続けた足跡をタイトルに込めました。

 例えば、80年代はじめの「京都教育研究集会」や「子どもまつり」「上映運動」などは民主府政時代を上回る空前の規模で開催されている事実があります。こうした教訓をしっかりと学んで、今後の展望を見いだしていきたいとの思いが強くあります。

 この本は所謂「京教組40年史」のような網羅した紀要ではなく、教育活動や教育運動を中心にまとめたものです。 この編集にあたっては、多忙な方々8人が毎月集まり、約1年間12回の「編集会議」を経て推敲しました。そのメンバーは、野中一也代表をはじめとして次の各氏で分担執筆しました。


 まえがき    (野中一也)
 序 章 「この30余年の京都の教育」(大平 勲)
 第1章 「学力・教育課程」(小野英喜)
 第2章 「生活指導・同和教育」(中西 潔)
 第3章 「教育研究」(大平 勲) 
 第4章 「高校教育制度」(磯崎三郎)
 第5章 「教職員管理」(高橋明裕)
 第6章 「地域教育運動」(大平 勲)
 第7章 「障害児教育」(松尾隆司) 
 第8章 「京都市の教育」(西條昭男)
 年 表     (高橋明裕)

 刊行は12月になりますが、A5版280頁で価格は1,800円の予定です。 是非、お読み頂きこの間の京都の教育運動に確信を深め、これからの指針にしてほしいと願っています。



表現すること生きること
―描くこと、書くことを生活の中に
  作品の中の子どもの声を聴く

           内海 公子(八幡市立南山小学校)
 「京都教育センター通信」復刊第48号では、本文の他に写真・絵図など8枚が掲載されていますが、本ホームページでは割愛しています。くわしくは、「京都教育センター通信」復刊第48号をごらんください。


表現できない子、描けない子

(児童作品・・・・略)

 これは、転勤してすぐの5年生の4月の絵日記です。今の子どもたちはどの学年であっても絵を描くことが苦手です。特に人物画は描けません。このことをどうとらえたらよいのでしょうか。「5年生なのに・・・」とつい言ってしまうことが多いのではないでしょうか。これは、私たち教師からの見方であり、これでは子どもの姿は見えません。子どもたちは描けないのではなく描けなくさせられてきたのです。

 乳幼児期にどれだけ自然な絵を描き、親や保育者とコミニュケーションがとれてきたでしょうか。なぐり描きは子どもの言葉であり心の表現なのです。

 しかし、子どもの自然な絵はその価値を認められずに姿を消しつつあります。小学校でも同じことがおきています。○年生らしい絵を描かせたいという教師の思いばかりで引っ張り、子どもの生きた表現が見えなくなっていることが多いのではないでしょうか。まず、子どもの立場にたってきちんととら、え共感していくこと、そして、稚拙な表現の中の子どもの心をつかむことが大切だと思います。上に載せたこの絵日記は、初めて私と音楽の授業をしたときの絵です。みんな一生懸命リコーダーを吹いている姿を伝えたかったのです。

絵日記の取り組み

 子どもたちの心の表現は絵や言語で表されることが多いですが、とりわけ小学校では言語活動が重要視されます。

 しかし、言語だけを教えても生きた知識にはなりません。苦手意識の強い絵と文字で生活を綴ることで、表現の高まりも得られるのではないかと考え、高学年になっても絵日記の取り組みをしています。昨年6年生のT君を担任しました。彼は学年のボスで、ずっとみんなから怖がられてきました。

 だから教室では私とT君グループとの戦いの連続でした。学力は低く、宿題も忘れがちなT君ですが、唯一の特技がサッカーなのです。6月のある日、T君がサッカーの試合で最優秀選手に選ばれたことを絵日記に書いてきました。もらったメダルと賞状の絵と喜びが綴られていました。この絵日記を仕上げるのに何時間かけたことか。早速通信に載せて一緒に喜びました。

 その後勉強の嫌いなT君が「先生、今からでもだいじょうぶやな。」といって頑張りだしたのです。「今から」でいいのです。反抗的で見栄っ張りで自分の弱さを隠して粋がっている自分だけでなく、自分の弱さや愚かさも表現できたとき、人間は変わるのだと実感しました。

(写真・・・・略)

 絵日記ですぐに豊かな表現が期待できるとは思いませんが、ありのままの姿を受け入れてくれる人(集団)がいて、そして、気軽に絵と言葉で思いを伝えることができる実感を持つことが、豊かな表現へと発展していくので5年生の6月、あじさいの花と自分を描きました。O君は自分の顔の口が気に入らず何度も何度も描き直しました。

 見たところはとんど変わらないのですが、彼は納得のいくまで描き直したのです。このように「自分が納得する」ことが成長の過程では大切なにですが、現実では、「先生が納得する絵」が多いのではないでしょうか。

(児童作品・・・・略)

 Y君の作品は稚拙な表現ですが花の真ん中に友達をたくさん描きました。Y君にとってはこの友達を描くことに意味があったのです。クラスが変わって友達ができるかどうかの不安から抜け出した喜びを表したかったのではないでしょうか。この二人の作品はあじさいの形ではありませんが、この二人にとってはこの作品でいいのです。この作品がいいのです。写実的な表現を急がずに、内面をじっくり育てていくことを大切にしたいです。

分身・仮面作りそして川柳

 分身は自分の再生産であり、仮面は知られざるもう一人の自分の表現です。どちらも粘土が自分の手を介して生み出した自分の心の立体作品です。

 真っ白い粘土で自分そっくりなものが生み出される過程は、粘土の変化だけでなく自分を見つめ作り上げていく過程でもあります。機械では作ることができない一人ひとりの魂の入った顔になります。開眼の儀式も行いました。個人懇談会では保護者全員が自分の子どもの作品を言い当てることができました。

(児童作品・・・・略)

 仮面は仮の自分です。制作過程の中で自分がいろいろな仮面をかぶっていることを感じることができました。T子(左)は、「なぜあの顔にしたのかわからないけれど、あの仮面の顔が自分の気持ちだった。自分の本当の弱い気持ちがあの仮面になった。」と綴りました。

 そして、このT子の作品を鑑賞する中で、仲の悪かったM子がT子の持つ弱い心に共感することができました。作品から作者の心を感じようとする姿が見えてきたのです。様々な表現方法を学んできた子どもたちの締めくくりは絵と川柳でした。

(児童作品・・・・略)

・一歩ずつお母さんに近づくよ。
・自分の心で光る階段のぼりたい。
・みんなにかんしゃ、ありがとう。
・お母さん、長い道でも支えてよ。

など、温かい言葉と美しい絵が描かれた色紙を最後の参観日に披露しました。涙、涙の参観日になりました。


まとめ・・・表現することは生きること

  表現することは生きることであり、表現そのものが子どもの人格です。自分の思いを自由に表現できることは人間として生きる権利だと思います。人間性を失いかけている子どもたちに、本当の一人ひとりの生きた表現を見つけて引き出し、そして、要求として高めさせることが教育の大切な課題ではないでしょうか。

 表現を大人(社会)の都合で押しつけたり型にはめたりせず、自分の人間としての要求、意欲に基づいた自らの能動的な実践でなければ、自分の未来を切り開く力は育たないと思います。

 私自身、今までの実践を振り返り、反省も含めて自分自信に問い返しています。教育とは何だろう?と・・・

(詳細は、京都教育センター通信47号をごらんください。)




行事報告

「来春から変わる!小学校教科書を検証する」


9/20 センター公開研に32人が参加



 センター「学力研」と「国語研」の共催で開かれた公開研究会には、府内の小中高の現場や退職者、研究者、出版関係者など32人が参加して熱のこもった報告と討論が展開されました。

  「国語」についてこの間、集団的に各社の教科書を分析してこられた西條昭男さん(センター国語研)をはじめ、審良さん、倉本さん、石澤さん、得丸さんから各分野の批判と実践方向について報告されました。

 「算数」については、下田正義さん(乙訓)から京都全域で占有している「啓林館」の問題点と変化について教材に沿って話され、東教文部長から各社の比較検討が報告されました。

 特別報告の形で「どうする小学校英語」(宇治・山添光司さん)、「教科書価格の適正化」(出版労連・三木清樹さん)の提起が行われ、討論では、増ページになる新教科書では学力格差と落ちこぼれが容認されること、道徳の具体的押しつけが強要されることから私たちの実践力量を高めることの重要性が指摘されました。


〈以下に2人の感想文を紹介します。〉

●中学校で国語を担当していましたが、今年3月に退職してゆっくりと教科書を見れるようになり、自分の35年間をふりかえっています。今日ここで学んだことは「ああ、なるほど」と思うことがたくさんありました。組合関係で現職との交流もあるので広めていきたいと思います。(H)

● 高校での学習は小中の延長にあることを痛感している最近です。小学校教科書の改訂は、何年後かに高校生に対して確実な変化をもたらします。その意味で、今日の学習会に参加して、神話の掲載についてはびっくりですが、勉強させて頂きました。(M)

行事案内

第41回京都教育センター研究集会
      【設立50周年記念集会】
開催日:2010年12月25日(土)〜26日(日)




【全体集会】

日時 2010年12月25日(土)13:00〜17:00  

会場 ルビノ堀川「加茂の間」    

参加費 500円 

全体会内容

○ 記念鼎談「戦後民主教育と今日の教育課題」(仮題)
     堀尾輝久氏(前民研代表)&野中一也氏(センター代表)


○ 3人の現職教職員によるトーク「教職員の成長を促すもの」


【分科会】

日時 2010年12月26日(日)10:00〜16:00  

会場 教育文化センター全館

 センター9研究会による:「地方教育行政」「生活指導」「学力問題」「発達問題」「地域と子ども」「カウンセリング」「高校問題」「国語教育」「障害児教育」など各分科会


【設立50周年記念のつどい】

日時 2010年12月25日(土)17:30〜

会場 ルビノ堀川

会費 5,000円 (事前申し込み必要)

当面の公開研究会のご案内

「子どもの発達の筋道を考える」 

〈京都教育センター 子どもの発達と地域研究会主催〉

10月11日(月)13:00〜 京都教育文化センター301号室


「今日の生活指導実践から」 

〈京都教育センター 生活指導研究会主催〉

11月28日(日)13:00〜 京都教育文化センター301号室

新刊紹介
教育センター室でも扱っています

『思春期のゆらぎと不登校支援 U子ども・親・教師のつながり方』

 春日井敏之 著    ミネルヴァ書房  2800円+税

 U認め合う居場所とつながりの実感を  思春期・青年期の自己形成と支援のあり方、臨床教育の視点から双方にとっての支援の意味を問う。

『水源の里 綾部で文化を紡ぐ U中学生からの 地・生・輝 づくり』

吉田武彦 著     ウィンかもがわ 1500円+税

 地域の人々が支える学校、地域のにない手が育つ学校づくり。過疎の農山村地域で取り組んだ、未来に生きる豊かな学び。

『京都山科 音羽・大塚・音羽川 二千年の歩み』

       鏡山次郎 著     つむぎ出版 2500円(税込)

 ふるさと山科の二千年/中世の山科七郷と自治の伝統/音羽地域の二千年/幕末の山科史/四ノ宮地域の二千年/山科における戦争の爪痕を訪ねて/四ノ宮におけるまちづくり住民運動 他


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