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●京都教育センター通信 
復刊第43号
 (2010.4.10発行)

「真実は細部に宿る(?)」─地域にみる変化─

       京都教育センター 中西  潔



 昨年、戦後初めて総選挙を通じて自公政権に終止符を打ち、政権交代を実現させた。国民が新しいページをめくった瞬間であった。民主党中心の連立内閣が誕生して七ヶ月が過ぎたが、鳩山内閣の支持率は、世論調査で三〇%台に下落、「支持」と「不支持」が逆転した。確かに「高校授業料実質無料化」、「子ども手当支給」など国民の願いの一部は実現しようとしている。が、「政治とカネ」、「普天間基地移転問題」での迷走、「後期高齢者医療制度廃止」「労働者派遣法見直し」「教員免許更新制度見直し」「年金問題の早期解決」等々の先送り。期待はずれが、支持率の急落に繋がっているのも頷ける。願いを実現するには私たち国民の大きな取り組みが求められている。

 しかし、今まで戦後長きにわたってのし掛かっていた「重石」がはずれたことは大きい。私の住む亀岡市にも大きな変化が起きている。これまで二〇数年間取り組んできた、「子どもと教育・文化を守る亀岡市民の会」の教育請願はこれまで悉く否決されてきたが、前年度を上回る署名活動もあって、昨年十二月定例市議会において、初めて賛成多数で採択された。画期的な出来事であった。紹介議員の依頼に各会派をまわり、本会議を傍聴した身にとって鳥肌が立つ感覚を味わった。

 今回の請願は「学校耐震検査の早期実施、改築・耐震工事の早期完了」「夏期の教室環境改善へ普通教室にクーラー設置」の二つの要望であった。

 亀岡市議会の会派構成は、「新生市民クラブ」七人、「輝」七人(当時六人)、「日本共産党亀岡市会議員団」五人、「亀岡創生会議」四人、「会派に属さない議員」三人(当時四人)、の計二六人である。今回は、紹介議員を快諾された共産党市会議員団の五人に加えて、市長与党会派である「輝」六人と会派に属さない二人の議員、計一三人の賛成で請願が採択された。一票の差ではあるが、採択された事実は限りなく重い。この三月に開かれた「予算特別委員会」も傍聴した。来年度の亀岡市一般会計予算案の審議である。傍聴は、議員を除くと二人。しかし市民の傍聴はとても重要だと思った。亀岡の一般会計の規模は、二〇〇八年度決算で歳出、約三〇七億円である。提案された来年度予算案が、「市立幼稚園の統合と建設用地問題」で全会派が否決するという前代未聞の出来事もあったが、提案された予算案では、学校予算、特に耐震化に向けた学校改築・耐震化工事予算が大幅に増額された。Is値〇、七未満の学校について、平成二七年度までに一〇〇%耐震化すると明記された。

 紹介議員を代表しての立花武子議員の市議会本会議での賛成討論も圧巻であったし、本会議での質問も的を得た内容で、財政的に見通しがつけば「クーラー設置」も前向きに検討していきたい旨の理事者答弁を得た。今後の市民の運動によって、これまでの切実な市民要求実現の可能性が現実のものとなってきたと実感。(議員の質問や理事者答弁などは、亀岡市議会HPで視聴できる)

 選挙を通じて政権交代が初めて実現したことは、戦後政治史に残る画期的な出来事であるが、国民が文字通り主権者として、幸せに暮らせるような社会を実現する道は緒に就いたばかりである。しかし、確実に変わりつつあることを、人口九万人余の小さな街で実感している。「真実は細部に宿る」という言葉が、ふと脳裏に浮かんだ。  この「教育センター通信」が届く頃には、京都府知事選や府会議員補欠選挙結果が出ていると思うが、京都の教育と子どもの幸せに繋がる結果が生み出されていることを切に願わずにはいられない。




ことば・文に着目して国語力をつける

           福知山市立昭和小学校 吉田 淑子



1. 文学教育の魅力

(1)文学の嫌いな子どもはいない。

 どんな子どもも、本を選べば、「読み聞かせ」には聞き入る。お話は大すきである。(「○年生向き」などにこだわったり、「自分で読め。」と強制したりする必要はない、と私は考えている。)

(2)文学作品を読むこと自体が楽しいこと。

 文学の中で、自分以外の人間の人生を生きてみることができる。そこで「あるがままの人間の姿」を知り、「あるべき人間の姿」を学ぶ。

(3)登場人物の心情を考える体験(同化・異化)が大事。

 「今の子どもは、人と係わる力が弱くなっている。」と言われており、少年犯罪においては必ずそれが浮き彫りになってくるなど社会問題となっているところである。今こそ、他人の気持ちを思いやる経験を重ねる文学教育は重要なのではないか!


2. 文学教育のめざすもの

(1)形象としての言葉の力の育成

 ことば・文を形象として読み、豊かなイメージを描く力を育てる。

(2)文学的表現力の育成

 すぐれた文学的表現を感受する日本語の担い手を育てる。

(3)人間認識の育成

 自然や社会、人間に対する豊かな感じ方・考え方を身につける。


3. 文学教育で大事にしていること

(1)ことば・文にこだわる(着目する)ということ

 文学の読み取りで、これでなければ間違いだ、ということはないにしろ、何を言ってもOKというのではなく、ことば・文に着目しているのでなければ、「ことばの力」が付いているとは言えないと思う。「…と書いてあるから…とわかる。」「…のところで、…と思う。」という読みを基本とするべきだと考える。ただし、間違っていようが、自分の考えや思いが自由に出せる、というクラスの雰囲気は大事である。

(2)「読み聞かせ」で豊かな作品・豊かな言葉を子どもたちに

 斎藤茂太氏の「いい言葉は、いい人生をつくる」という著書をそのタイトルに惹きつけられて読んだが、教師生活の中で私はそれを実感し、座右の銘としている。言葉が荒むと生活も荒んでくるし、生活が荒んでいると言葉も荒んでくると思われる。教師も教育環境であり、いい言葉、美しい言葉、やわらかい、やさしい、うれしくなるような言葉を子どもたちに与えたいと思う。「子どもたちの語彙が不足している。」とは、いつも教師同士の会話に出てくるのであるが、ならば、少しでも語彙を増やすために、しかも豊かな言葉や文章を与えるために「読み聞かせ」をもっと大事にしては、と考えている。もちろん、読み聞かせの第一の目的は、子どもたちと豊かな時間を共有することにある。

(3)関心・意欲を喚起するために

@教室を「○○(教材の作品)の雰囲気」にする。
 ア 関連図書や関連物を持ち込み、コーナーをつくる。
 イ 授業の足跡(授業後のまとめ)を教室に掲示する。

A授業に主体的に関わらせる。
 ア 授業で用いる挿し絵を子どもたちに分担して描かせ、それを板書に使用する。その後それを授業後のまとめに利用する。
 イ ワークシートの表紙となる「好きな場面の絵」を描かせる。

(4)わたしの授業の進め方

@音読の重視…「読書百遍意自ずから通ず」との教えがあるように。すらすら読めるようでなければ内容など読み取れない。音読テスト・暗唱テストも実施する。

A一人で読んで自分の読みをもつことと、集団で読んで交流することを大事にし、学び合う楽しさを味わわせる。(一人読み→班での話し合い→全体での話し合い)

B発問は、「ここでなにがわかりますか。」「ここでどう思いますか。」が基本。…読書と同じように、順に読んでいくのが一番分かりやすいはずだからである。

C書くことの重視…「初めの感想」「書き込み」「場面の感想」「終わりの感想」など、書くことをたくさん取り入れる。作品・学年によっては、「ふきだし」「手紙」などの形でも書かせる。

(5)書くこと

 前述したさまざまな「書くこと」に取り組ませる理由は、書くことで考え、考えることで書くということが、「読み」を深めることになるからである。

@初めの感想…作品との出会いの時点での自分の感想を文にまとめる。今後の読みの中でそれをさらに深いものにしていく。教師にとっては、子どもの実態が把握できる資料となる。

A書き込み…自分の読みをもち、それを積極的に発言し、みんなの前に出せるようにするため、まずは「ひとり読み」としての「書き込み」をし、「土台」とする。私は、授業中の友達の発言でよいと思ったものや板書もどんどん書き足すように言っている。

B場面の感想…その場面を自分がどう読んだかを確かめながら文にまとめる。発言できなかったことや、友達の読みに学んだことも意識して書くようにしたい。教師にとっては形成的評価の資料ともなる。

C終わりの感想…作品をどう読んできたか、どんな作品だったかをまとめて書く。作品にもよるが、自分の生活を振り返る契機としたり、人間観や世界観について考えたり、作品世界の意味を考えたりすることもある。


4. 終わりに

 教師の教材研究を深くし、教材を自分のものとしておくことは、教師の読みを子どもたちにおしつけるためではない。子どもたちの読みを受容的に受け止めたり、心から共感の言葉を出して励ましたりして、子どもの発言がよく見えるようにするためである。

 また、どの教科でもそうであるが、学力低位の子どもをどう引き上げるかという視点を常にもつことが大事である。どの子どもにもわかりやすい、全員参加の楽しい授業を目指したい。


※実践例としての「ちいちゃんのかげおくり」は紙面の都合で省略。 【詳しくはお問い合わせを】







設立50年を迎えた京都教育センター




〜京都教育センター設立の経緯〜

 設立の背景には、京都の各大学が勤評反対声明を表明したのをきっかけに、京都での組合教研や第8次日教組全国教研(大阪)に大学研究者が共同研究者として多数参加し、積極的な問題提起を行ったことがある。京教組が1960年7月の第12回定期大会で「教育センター設立」を決定し、9月24日の第一回評議員会で府職労、全電通、地評、母親連絡会、子どもを守る会、部落解放同盟、社会党、共産党などの参加の下に結成された。 代表に細野武男氏(立命館大学総長)、事務局長に奥田修三氏(立命館大学教授)を選出した。 その「規約」では、ひろく国民の立場から、今までの教育文化の遺産を継続し発展させるなかで、国民の立場に立って教育を生み出すための研究に取り組み、その成果を国民のものにすることを目的としてうたい、教育研究と教育運動を結合するためにその名称も「研究所」ではなく「センター」とした。

 今は亡き細野代表が、季刊誌「教育運動」(第50号:1980/1)の創立20周年を記念した特集で次のように述べている。


  「京都教育センターという名称を付けたのはそれなりの理由付けがありました。運動と研究、研究と教育を結びつけたいという願いが込められ、あえて教育研究所とせずに教育に関するもろもろの研究運動の結集をはかりたいといういささか気負いにも似たものもあった、と私は思います。この点は今日でも絶えず念頭に置いて、センターは今後も運営すべきだ、と私が考えます」

 こうした活動の中から、民主教育の内容の三つの視点を提起した。

(1)全面発達(人間の能力・人格のすべての側面での全面的発達をめざす)

(2)科学的認識(自然・社会・人間についての正しい認識を持ち、労働や生産の大切さをよく身につけ、それらを人間の幸せのために役立てる力) 

(3)集団主義(「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」真理、真実を貫き、問題をみんなで考え、行動していく力)

 この視点は、その後各学校、地域での日常的教育実践のなかで検証され、今日も京都の教育研究の中心的支柱となっている。


【設立50周年の記念事業】

●2つの記念出版

(1)『自民党府政30余年の京都の教育』〈今秋刊〉


 「学力問題」「生活指導・同和教育」「高校教育」「障害児教育」「教育研究・研修」「父母住民との共同」「教職員管理」「京都市の教育」の8つの分野で総括

 昨秋よりの編集会議メンバー(野中一也、小野英喜、高橋明裕、西條昭男、中西 潔、大平 勲) 

(2)『京都の歴史教材たまて箱』(「ひろば」連載より抜粋編集)早川幸生著〈今夏刊〉


●「50周年記念のつどい」

  2010年12月25日(土)午後〜記念講演など 夕刻〜記念レセプション 於ルビノ堀川※第41回教育センター研究集会とリンクして開催(12/26は教文センターで分科会を予定)

●今年度の公開研究会やセンター通信で、センターの歴史などを設立当時の方々(多くは故人)に語っていただくことを企画します。


「京都教育センター年報(2009年度版)22号」を刊行しました

 京教組定期大会(3/6)資料として発刊しました。この年報には@第40回教育センター研究集会の全体講演、分科会の記録 A教育センター8つの研究会の年間活動まとめ B自主的教育団体の活動報告 などが収録されています。[B5版 158頁]

*ご希望の京教組組合員はセンター(752−1081)までご連絡下さい(数に限りがありますが進呈します)

新刊紹介
教育センター室でも扱っています

『思春期のゆらぎと不登校支援 U子ども・親・教師のつながり方』

 春日井敏之 著    ミネルヴァ書房  二八〇〇円+税

 U認め合う居場所とつながりの実感を  思春期・青年期の自己形成と支援のあり方、臨床教育の視点から双方にとっての支援の意味を問う。

『水源の里 綾部で文化を紡ぐ U中学生からの 地・生・輝 づくり』

吉田武彦 著     ウィンかもがわ 一五〇〇円+税

 地域の人々が支える学校、地域のにない手が育つ学校づくり。過疎の農山村地域で取り組んだ、未来に生きる豊かな学び。

『京都山科 音羽・大塚・音羽川 二千年の歩み』

       鏡山次郎 著     つむぎ出版 二五〇〇円(税込)

 ふるさと山科の二千年/中世の山科七郷と自治の伝統/音羽地域の二千年/幕末の山科史/四ノ宮地域の二千年/山科における戦争の爪痕を訪ねて/四ノ宮におけるまちづくり住民運動 他


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