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●京都教育センター通信 
復刊第31号
 (2009.3.10発行)

 「お金の心配なく学校へ行きたい」--子どもに寄り添って

           全日本教職員組合中央執行副委員長 本田久美子



 三月は、子どもたちが学校生括を終え、 希望に胸ふくらませあらたな旅立ちをする卒業式のある月です。その卒業式が、 授業料未納のため出席できず、卒業でき なかつたらどんなにか悲しいことでしょ う。昨年四月、入学金が納入されていな くて、入学式に出られず別室で待機しなくてはならなかった高校生のことが新聞で報道されていました。この時期、経済 的理由で悲しい思いをする子が出ないよ う緊急に何らかの措置のためにとりくむ ことが求められています。

 昨年の金融危機の影響で、日本でも派遣切り、雇い止め、解雇など経済危機は深刻化しています。子どもの安心のより どころである家庭を直撃しています。

 「給食のない夏休み、通行人に食べ物 をねだる小学生がいた」 「通学定期券が買えなくて学校に通えない」 「授業料が払えずに退学せざるを得ない」 「保険証 がないから病院へ行けない」 「交通事故に遭い、けがをしたにもかかわらず、『お金がない』と救急車に乗るのを拒んだ」。 先日おこなわれた全教定期大会での代議員の発言です。貧困と格差拡大が、子どもの成長・発達、学習権にも大きく影響を及ぼしています。

 今春就職予定の高校生の就職内定取り消しが、文部科学省調査でも二六九人に達しています。私立中学高校連合会が調査したところによると、十二月末現 在、二万四四九〇人が授業料を滞納し、全生徒の二・七%に達しています。 自治体などが、奨学金や緊急助成制度などおこなっていますが、基本的には国の責任で緊急助成などおこない、この時期悲しむ子が出ないようするべきです。

 全教では、広く労働組合、民主団体、地域での共同組織でつくっている子ども全国センターとともに、「子どもを襲う貧困と格差」と題しての集会を三月七日に、また「入学金・授業料・教育費緊急ホットライン」を三月八、九日に開設し、相談活動にとりくみます。

      *

 京都市教職員組合および京都教職員組合から全日本教職員組合(全教)に派遣され、東京での単身赴任の生活も早二年がたとうとしています。中央の組織は、今の情勢と中央政府所管、特に文部科学省の動向に機敏に対応し、 全国に発信することが求められます。さいわい、全教の情宣部で、新聞「全教」、「クレスコ」の編集にたずさわつていて、できるだけ全国の情勢ととりくみが組合員および教職員の方にいち早く届けられるよう努力をしています。

 また他に、子ども全国センターの事務局長として、教職員と地域との共同組織の確立と運動の推進にとりくんでいます。これは京都での父母・地域のみなさんと教育懇談会や子育てネットワークなど共同でとりくんできたこと が役立っています。他に教文局として、改訂学習指導要領、全国一斉学力テス ト、教員免許更新制に反対するとりくみや、とりわけ「教育のつどい−全国教育研究集会」成功のために力を注いでいます。昨年の京都開催では大変お世話になりました。自分の教育実践は残念ながらもう出すことはできませんが、全国の教職員の力量を高めるとともに、父母・国民とともに子どもや教育のことを語る重厚な場として大切にし、質・量ともに高めたいと思ってい ます。

 さらに世界と連帯する全教として国際局で、昨年はアメリカへ労働基本権調査に参加し、今年はILO・ユネスコ勧告を元に国際シンポジウムを開催します。さまざまな分野に所属し、仕事を担っていますが、もちろん全教として集団で論議しながら全国へ発信しています。これが一方通行にならないよう運動をキャッチボールできたらと思っています。





のんびり、ほっこり、楽しみながらの学年づくり

                   京田辺市立田辺中学校  武田 好弘


 田辺中学校に勤務して八年目。ここ数年は学年主任と生徒会担当としての役割を担うことになり、忙しい毎日であるが、二学年の五人の担任を少しでもバックアップできればと、のんびり、ほっこり、楽しみながらの学年集団づくりを提案している。

 四月には、こんな学年を作ろうと@基本的生活習慣と生活リズムをつけさせる、A生徒の自主活動を作り出す、B学習に対して前向きに取り組む姿勢を評価していく、C新しく来られた先生も含め、みんなで学年集団を見ていく、D教師同士が互いに学びあう場と交流する場をもつ、Eしんどい職場の中にあって、教職員の親睦を最重点にする。この六つの方針を作った。


リーダーを中心に学年・全校でチャレンジ ……みんなで乾杯や!

  「ベル着や服装」「掃除」「窓開けキャンペーン」「定期テスト前の学習登山」など、生徒会や委員会を中心に「みんなで声をかけよう」を合い言葉に、取り組みを展開。二年生の放課後のリーダー会では、教師も熱く語るが「声かけができているか、なぜできなかったか」を生徒同士で話し合う。二〇分間で一〇数名が力強く発言、参加した先生から「あいつがネー、中学生日記を見ているようだった」と教師自身も励まされる。最後には、生徒会長のHくんの発声で紅茶を片手に乾杯し、意思統一をはかる!楽しく団結し、いろんな課題にチャレンジしようという雰囲気を作ってくれる。そんなせいもあってか「○○係募集」と言うと、しんどいことと分かっていても絶えず数人が名乗りを上げてくれる。ありがたい。


宿題みんな出せるやろうなー!

 冬休みの宿題については曖昧にしないことを学年教師で意思統一。最後まできちんと出させようと、未提出者を援助し、九七・四%(未提出一七/六四四個)の到達点になった。期限には、未提出者三九人を集め「いよいよ三年生、言われたらする自分から脱出を!」と訴えた。最終は八名(休みがちの生徒五名を含む)が残ったが、一人一人がどうしたら提出できるのかを先生方もバックアップ。多くの生徒があきらめずに提出することで、喜びを感じることができた。(出すことは、嬉しい!)


いっしょにやりましょ、おかあちゃん!

 学年懇談会[一回目は十一月(二五名)、二回目は一月(三九名)]を学年PTAと協力し実施した。お茶を飲みながら、行事などのビデオを見てもらう。学年の現状についても○×クイズ形式で紹介。景品ありでもりあがる。(学年通信「レッツラGO」を読んでないと良い点が取れません)父母に学年でやろうとしていることを理解してもらうことで、協力体制もできてきた。その後のクラスに分かれての懇談も和気あいあいと。


いつでも、どこでも子どもの話を!

 生徒が下校すると「昨日焼きました」と“市販”のお菓子を配り、紅茶ポットを持って「どうぞ、どうぞ」と親睦担当の私が注いで回る。一日で最もホッとする時間である。時にはそれぞれから手持ちのお菓子が出てくるし、季節によってはお奨めの一品(夕張メロンやパイナップル、温州ミカン、新酒)の注文票が飛び交う。学年親睦飲み会は、T先生宅で今年も数回お世話になった。お安く、心行くまでのんびりとさせてもらう。○×クイズに景品付き、時には持ち寄ったケーキを奪い合う。しかし、どんな場でも教師の仕事柄か生徒たちの話で「こんなんやった、あんなんやった」と盛り上がってしまう。学年集団づくりには、教師集団のまとまりが欠かせないといつも強く思うのである。






第39回京都教育センター研究集会全体講演(1月24日)から
「競争社会に向き合う自己肯定感」
       ─子どもに自分を愛する心を─ A
               高垣 忠一郎さん(立命館大学教授)



乱用される「自己肯定感」

 私みたいな心理臨床家が「自己肯定感」という言葉を、さかんに言っていると、ヤフーで「自己肯定感」という言葉を検索したら三六〇〇万件ですか、それだけ多数のヒットがあるわけです。それだけ「自己肯定感」という言葉が巷にあふれています。それを見ておりますと、必ずしも私が言っておりますような意味で「自己肯定感」という言葉を使っているわけでもない。いろんな形で使われているんです。とりわけ気になるのは、「新しい歴史教科書をつくる会」の人たちも「自己肯定感」という言葉を使っていてびっくりしましたけれど。彼らの使い方は、「今の子どもたちには自己肯定感がない。だから学校が荒れたり不登校が起こったり、暴力が起こったりしているのだ」というような言い方です。そして「なぜ、今の子どもたちに自己肯定感がないかと言えば、自分の国に誇りが持てるような教育をしていないからだ」というわけです。「自分の国に誇りが持てないから、自分にも誇りが持てないのだ。だから今の子どもたちに自己肯定感を持たせるためには、自分の国に誇りを持てるような教科書で教えなければいけない。ところが今、子どもたちが使っている教科書は、自分たちが侵略戦争をやった、あるいは従軍慰安婦のような恥ずかしいことをやった、そういうことばかり教えられている。だから、自分の国に誇りが持てない。だから、自分にも誇りが持てないのだ」こういう論理です。「だから、自分たちのつくった新しい教科書で子どもたちに教えないといけないのだ」という、こういうことを言っているわけです。

 まるで「うぬぼれ鏡」に自分を映して、「俺もなかなか立派なものだ」という、そういうたぐいの自己肯定感であります。そんな「自己肯定感」を日本の子どもたちに持たせたら、もう顰蹙(ひんしゅく)ものですよね。「何という自己中心的な国なんだろう」ということになってしまいます。


「自分が自分であって大丈夫だ」という自己肯定感

 私が心理臨床の実践の中から、説き起こしてきた「自己肯定感」という言葉が、そういう形で使う「自己肯定感」と、ごっちゃになってしまっていきますと、これはとんでもないことになる。そういうことがありますので、最近、私は新日本出版社というところから『生きることと自己肯定感』という本、最近では『競争社会に向き合う自己肯定感』という本を書かせていただいたのですね。その中で「私の言っている自己肯定感はこうですよ」ということを書きました。

 そのことを今日はお話しさせていただきたいと思います。私の自己肯定感は、「自分が自分であって大丈夫だ」という自己肯定感なのですが、これは、私の前にカウンセリングを受けにこられる方々と接していると、何かこの人たちには、「自分が自分であって大丈夫」という安心感というものがないなと、いつも誰か他人でなければならないかのように、強迫観念にかられて生きている。そういう感じを受ける方が、とてもたくさんいらっしゃる。たとえばカウンセリングの中で、クライエントさんがおっしゃいましよね、それで「どうしてそんなふうに感じはるんですか?」と聞いただけで、何か自分の感じ方がおかしいと言われたかのように受け止めてしまう。そいう方々がおられます。カウンセラーは、なぜそういうふうに感じるのか、相手の感じ方を理解していこうとしてしますので、時にはそういう言い方をする場合もあるわけです。そうしますと、それだけで「あっ、私の感じ方がおかしいというふうに言われている」というふうに受け止められる方、何か、とても自分が否定されているような受け止め方をなさる。そういう受け止めをされている方を、「この人は、自分が自分であって大丈夫という感じがないな」と思うわけです。この「自分が自分であって大丈夫」という感じ方を、私は「自己肯定感」として出してきたわけです。

(高垣講演の以下は「センター年報21号」に掲載しています。ご希望の方はセンターまで申し込み下さい。)








「京都教育センター:2008年度活動総括


1.第39回京都教育センター研究集会

 1月24〜25日の二日間にわたって開催されました。「今日の子ども・学校の困難を検証し、共感とつながりを広げよう!」のテーマのもとに、閉塞した現状を突破しこれからの展望を見いだすヒントを共有することを意識した提起や議論が展開されました。全体会では、半世紀前の旭丘事件の当事者である山本正行氏の「1950年代の教育を考える」と題したプレ集会に退職教職員らが、「競争社会に向き合う自己肯定感」と題した高垣忠一郎氏の記念講演には不登校親の会などが多数参加され、この10年では最多の149名が参加しました。「格差社会と教育の貧困」をテーマとしたパネル討論でも教職員や社会福祉司、学費ゼロネットの学生らからリアルな今日実態が報告されました。二日目の分科会には118名の参加があり、二日間でののべ参加は267名となり久しぶりに活気を呈した集会として成功しました。しかし、現職教職員の参加は他の取り組みとの競合もありましたが、例年並の参加にとどまり課題を残しました。


2.公開研究会の開催

[新学習指導要領批判3回連続学習会]

(1)5月25日 : 講演「新学習指導要領の特徴と実践課題」  鋒山泰弘氏(追手門学院大学)
            報告 @「小学校算数」東 辰也氏(京教組教文部長)
               A「小学校理科」平田庄三郎氏(同志社小)

(2)9月13日 : 講演「ぶれまくる学習指導要領に振りまわされない教育課程づくり 小野英喜氏
            報告 @「ヨーロッパ学習の授業づくり」辻 健司氏(双ヶ丘中学校)
                A「説明文教材をどう教えたか」得丸浩一氏(梅津北小学校)
               B浅尾紘也氏(事務局)

(3)11月29日 : 講演「新学習指導要領と道徳教育の新段階」井ノ口淳三氏(追手門学院大学)
            報告 @「図工・美術教育はどうなるか」 上中良子氏(京都橘大学)
                A「選択廃止で技術科教育はどうなるのか」 大石祐平氏(桃山中学校)

※10月13日:[京都の高校・大学の「高学費問題を考える」フォーラム]
            講演「高等教育をめぐる二つの課題――権利としての高等教育をめざして」 細川 孝氏(龍谷大学)
           報告:京都府学連、定通みんなの会、府高、京滋私大教連、京私教

 


3.教育研究集会への参加

  「2008全国のつどい」「第58次京都教研」「民主教育推進委員会」などに多数の共同研究者が参加しましたが、一部の分科会に配置できない課題を残しました。



4.季刊誌「ひろば・京都の教育」などの発行

・今年度も春日井編集長を軸にした刊行委員会の尽力で、季刊4回の発行をすることができました。
・「京都教育センター年報」第21号を3月に発行し、大会代議員、共同研究者、各県研究所などに配布
・復刊した「センター通信」は3年目に入り、今年度も8、1月を除いて月刊ペースで発行



※事務局体制

・年間17回の事務局会議を開催  
・野中一也(代表)築山 崇、市川哲、春日井敏之、倉本頼一、高橋明裕、中須賀ツギ子、倉原悠一  中西潔、浅井定雄、東 辰也、松橋秀男、佐野幸良、大平勲(事務局長)



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