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●京都教育センター通信 
復刊第29号
 (2008.12.10発行)

 「どの子も伸びる」「できない子はいない」

         名もなく貧しく心美しい年よりたちの語らいの会 藤原 ひろ子



 50年も昔に、衣笠小学校で担任した黒光茂明さんのお母さんから、ひょこんと郵便物が届きました。それは、鯵坂真著『時代をひらく哲学』の書。8年前 のできごとです。

 鯵坂先生は1999年大阪府知事選挙の候補者。世直しボランティアで活動す る多くの青年たち、団体、個人、数えきれない皆さんと力を合わせ、輝く闘いの中で完成なさったのがこの本です。

 先生は、新しい世紀を展望しうるものは、科学的社会主義の思想以外にないという事が明確になってきている。何が理論的に正しいのかを見抜く力を私たちは強めていく必要がありましょう。と記しておられます。私、ただいま82才。 すべて職務は終了。さて残る人生をどう生きるかを考えていた矢先の頂き物でした。「あ!これだ!!」 と飛びついて退職者やお知合いに呼びかけ、「名もなく貧しく心美しい年よりたちの語らいの会」が誕生。今まる7年を越しました。

 現在、「会」の実行委員31名。平均年令74才、最高令者は91才の 丹後の堀江さん。

 人間70年、80年も経てくると、もう昔の肩書は一切無用。どなたさんとも 「さん」づけでおつき合い。在日朝鮮人の李福順さんも副会長。国籍や職業、男女の別、貧富の別などありません。但し、顔には責任はもちません。併し、嘘、 詐りはなく、心は美しいです。

 「年よりたちの語らいの会」とは−−。年よりはひとりぽっちじやない。 年よりたちと複数です。大切なのは“ 語らいかた”

 子ども達や若者に「ダサイなあ。もうそれ何べんも聞いたわ」 と敬遠されない話し方の勉強が必要です。

(1)導入は、優しくわかりやすく。
(2)なぜそうなったのか。
(3)今後 どうすべきか。

 これを制限時間を守って話す。途中で脱線し、果てしなく止まらないのは禁物。

 戦争体験を積極的に語る努力と、「会」 は参加者の全員発言を心がけ、「遠慮は無用。配慮は必要」をモットーにして います。 −−私はいつも思います。京教組で教えられ、鍛えられ「できない子はいない」 「どの子も伸びる」と民主教育ひと筋の闘いを経たからこそ今、「できない年よりはいない」「どの年よりも伸びる」 と確信が持てるのだ・・・と。

 更にこの大もとは京都教育センター三原則です。

@全面発達・・・・人間の能力・人格のすべての側面で全面発達をめざす。
A科学的認識・・・・自然・社会・人間について正しい認識をもち、労働や生産の大切さをよく身につけ、それらを人間の幸福のために役立てる力。
B集団主義・・・・「ひ とりはみんなのために、みんなはひとりのために」真理・真実をつらぬき問題をみんなで考え行動していく力。

 いつもこれが私を深く静かに支えてくれているからこそ継続があると確信 します。

 民主教育の三原則は京教組の宝。日本の目ざすべき道です。教研集会で、職場、地域、サークルで、父母と教師 が対等平等の立場で討論し、実践を重ね、更なる発展を心から期待いたします。

 教育労働者の三つの任務は、

@労働者として生活を守り豊かにすること
A教師として教育研究という仕事を守り育て創造すること
B知識人として国民 に宣伝し組織し、その中核となってたたかうこと。

 物言えぬ社会は、戦争へ向かう社会です。日々大変な状況にめげず精いっぱいふんばっておられる組合員の皆さん。退職した私どもはもうクビにはなりません。どうかどうか二の足を踏むようなことは、率直に注文をつけ私達を大いに利用して実現可能を目ざしてください。子ども達と直接触れあって仕事をなさっている皆さんと、仲好しにな れるよう待っていますよ。




労働基準法が教材です
              
京都市立伏見工業高等学校 本山 雅章


 日本国憲法、労働基準法、労働組合法、パートタイム労働法、男女雇用機会均等法、職業安定法、労働者派遣事業法、労働契約法、最低賃金法、労働基準法第三七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令、労働基準法施行規則、年少者労働基準規則、育児・介護休業法、労働安全衛生法、労働者災害保障保険法、民法、雇用保険法‥‥‥

 これ全部、私の現代社会の授業で三年生が勉強している法令です。労働法制が当たり前に機能していれば、こんなに並べ立てる必要はなのですが、労働の現場は、法令無視や法令違反が山のよう、本来は労働者を保護するペき労働諸法令が、労働者の生命を脅かし、働く権利を追 い詰めています。

 私が今の学校に異動して来たのは14年前、 そこではじめて「現代社会」の教科書を持ち、 授業をすることになりました。採用12年目の 「新採教員」が、重たい気分で授業の準備。数年後、労働者の味方「労働基準法」との出会いが、私に一筋の光を当ててくれました。世紀末の二年間、組合の執行委員を務め、教育の場とは異なるさまざまな労働問題を知り、それが教材としての労働法制に深まりと広がりとを与えました。卒業生の四割程度が就職していく工業高校です。卒業すれば私たちと同じ立場の労働者になります。「8時間労働制は19世紀末のアメリカの労働者がぁ‥・!」とか「時間外労働には25%の割増貸金が‥・」といった授業の中に出でくる話は、講義をしているというよりは、将来の仲間へのエールを送っている気になってきます。

 「人はなぜ働くのだろう」、この間いかけから 労働法制の学習が始まり、労働者である自分自身の生き方・働き方を生きた教材にしながら、 B4 12枚(裏表)の膨大なプリントで、「知るということがまず大切なのだ」という確信のも と、生徒に負担をかけながら授業を進めてきました。

 将来は家業の工務店の経営者になるという生徒もいます。労使どちらの立場に属するにせよ、労働者にとっても、中小零細企業の経営者であるにせよ、大企業の横暴がまかり通るルールなき資本主義ではたまったものではありません。 生徒たちが、労働法制の基本的な考え方の一片でも身につけて卒業してもらえらばと考えています。

 近年とかく氾濫している「課題解決能力」や 「人間力」 といった今風の「力」ではなく、科学的な批判能力を身に付けて「問題点を発見する力」、「当然の権利を正当な方法で主張する力」、そして一人ではどうにもならないときに、「多数の人々とともに行動できる力」を培っていくこ とこそ、今の教育現場に求められていることではないでしょうか。 とはいえ、講義形式で知的探求を主たる活動にしている私の授業実践では、この課題に答えられないのはいうまでもありません。私自身が一人ではなしえないことを、いろいろなタイプの先生との共同によって、生徒にとって本当に必要な力が培っていかなければなりません。

 「共同の構築」、これが私に課せられた課題なのでしょう。また、生徒たちが私たちと同じ未来の労働者であることとともに、 同じ「日本国憲法」という 土壌の中で育っていることにも気づかされてきました。






金曜サロンを再開して--職場教研を羅針盤に--
                京都府立田辺高校 毛戸 祐司



 田辺高校分会では、毎月第四金曜日をめどに放課後集まり、飲み物やお菓子を手にしながらおしゃべりする「金曜サロン」を今年再開した。一週間の仕事がようやく終わった頃に、分会員がぼちぼちと集まって来て、できれば未組の人にも来てもらう。「お疲れさま」とコーヒーか紅茶を淹れて甘い物を口にすると、みんなでほっと一息つく事ができる。ほっこりと心がなごんでそれから職場で気になる事をうちとけて話し合う。そんな金曜サロンを数年前にもやっていたのだが、多忙化におされて途絶えていた。それを今年再開したきっかけは、組織拡大の行きづまりだった。

 十年前なら職場の約半数は組合員だったが、今は二割ほどである。転勤や退職で結局少しずつ減る。若い先生に加入を呼びかけても「考えておきます」と答えてくれればいい方だ。職場の若い先生たちにとって組合に今から加入するには、相当の覚悟が必要らしい。清水の舞台から飛び降りてもらうために、ほっこりを分かち合い、何でも話せる場を重ねて、そこに若い人を巻き込みたい。広く呼びかけ、じつくり話し込むためにも、遠回りかもしれないが、息が詰 まる職場に新しい空気を入れる役割を、分会として果たしたい。

 とりあえずやってみようと、第一回を六月に開いた。御香宮の名水を汲んできてもらって、サイフォンで滝れたおいしいコーヒーを味わった。職場復帰支援の十時間講師として四月から三ヶ月間、ちょうどその日が最後の勤務という講師の方を囲んで、やりにくかった点など、ご苦労をねぎらいながら、お話をうかがうことができた。

 話題を準備した方がよい、という反省もあって、二回目の九月のサロンは月初めに行われた文化祭をテーマにした。毎週の分会役員会では職場についての交流に時間を割くようにしているが、文化祭の評価については分会役員の間でもさまざまな意見が出た。文化祭にはみんなそれぞれ意見があるのに、それを出し合う時間や雰囲気が分掌の会議でも職員会議でも充分作れない。そこが職場づくりの課題である事が、金曜サロンで取り上げると見えてくる。

 最初に自分がクラスの演劇について一枚レポートを報告し、先輩から貴重なアドバイスをいただいた。また田辺高校には民主教育の伝統と蓄積があるはずなのに、管理主義の手法に依存する中で、自主活動や集団づくりのやり方を忘れかけていることに気付かされた。 管理主義しか知らない(多くはそうした進学校出身の)若い先生から見れば、分会員の多くは 結局怠けているように見える。しかし管理主義が行きづまっている今、別の選択肢として民主的な集団づくりを(思い出して)職場全体に示す意味は大きい。その役割を分会が果たせば、若い先生も飛び降りやすくなるのではないか。

 三回目は十月の中間考査の時期、分会昼食会の後に栗まんじゅうとお茶でミニサロンを開いた。十一月の四回目は、貸金・手当等の学習の後で、田辺独特の普通科・工業科併設について、 つっこんだ議論ができた。若い人の参加はまだだが、議論の中身は職場新聞で詳しく紹介している。

 今後は役員会でヒントを探しながら、「田辺 高校もお金がかかり過ぎ?」保護者負担の問題や教育課程と学力の問題も取り上げたい。年に数回、その時々のテーマで職場教研をほっこり続けて、その成果を全体にしっかり広めていけば、旬の教育論議で分会が職場に今後の方向を示せないか。

 先が見えない闇夜を進むための羅針盤をようやく手にしかけていると思う。







―新学習指導要領批判 連続学習会 [第3回]
私たちの手で生き方を考える「道徳教育」を!

○11月29日(土)13:30 教文センター202
○講演「新学習指導要領と道徳教育の新段階」
  井ノ口淳三氏(追手門学院大学教授)
○報告
@「図工・美術教育はどうなるのか」  上中良子氏(京都橘大学教授) A「選択廃止で技術科教育はどうなるのか」 大石祐平氏(市立桃山中教諭)
・討論 ・まとめ/閉会 野中一也氏(教育センター代表)



私たちの手で生き方を考える「道徳教育」を!


  学力・教育課程研究会が主催した3回目の「新学習指導要領批判」学習会が11月29日(土)の午後開かれ、20名の少人数でしたが問題提起を受けて深く学びました。

  「新GSと道徳教育の新段階」と題して井ノロ淳三氏(追手門学院大学)が講演され、「今回の改訂で道徳教育は、愛国心の強調をはじめ全教科にわたる要として位置づけ、並々ならぬ縛りをかけてきている。それは、この間の失敗からうまくいかないことの裏返しであり、我々の手で人間 として生きる真の道徳教育を実践しよう」と訴えられました。

  「改訂でどうなる」実践報告シリーズは 今回、上中良子氏(京都橘大学)から美術について、 大石祐平氏(市立桃山中)から技術と選択教科について示唆を含んだ報告がありました。

  参加者は「道徳が学校教育の要になるのは恐いこと。現場では『心のノート』を含め、いろいろな実践を強要されがちだが、子どもに市民道徳をしっかりつけていくことも大切だと思った 」(綴喜教文部長・田中一郎)などの感想が寄せられました。

  学力研では、3回にわたった学習会(鋒山氏、小野氏、井ノロ氏の講演と6教科の報告)のまとめを作成する予定です。



堂々と?人材養成としての教育「京都21世紀教育創造フォニラム」傍聴記

 12月1日の午後、立命館小学校を会場に開催された「第2回フォーラム」は、事前申し込みであったが数百名の参加があり、要員を含めた学生が多くいた。主催は京都市教委、京都経済同友会、大学コンソーシアム京都、日経新聞社などで構成された実行委貞会(委員長:堀場厚堀場製作所社長)で圧倒的に黒スーツ姿であった。基調講演は張富士夫氏(トヨタ自動車会長)で自身の体験と企業活性化での教育の役割について淡々と語られたインパクトの薄いものだったが、2時間余に及んだパネル討論は多士済々なメンバーで展開された。(以下にその要旨)

・門川大作京都市長「京都には教育を創造した民衆のDNAがある。公立でも小中高12年の一貫カリキュラムを考えている。中2生1万人余が3000余の事業所で体験学習し、学校と企業の垣根を低くしている。学校・家庭・社会総がかりで人材の育成を。(自慢話のオンパレード)」

・松本鉱京大総長「メディアのアウトサイダーな報道が多い、コツコツ真面目にやることに注目を。京都は歴史的に大学に理解あるが、大学への政府投資はOECDで最下位は遺憾」

・陰山英男立命館小副校長「張会長の話に感銘。経済界の人は小学校低学年で理科がなくなっていることを知らない(張氏も堀場氏も領く)。学力低下は反復不足と生活習慣の乱れ、家庭力がいる。これだけのメンバーで『京都理科トップ』をやりませんか」

 最後に蔭山氏は「大阪の教育委員として学テの公表はどっちでもよい。要は先生が一生懸命やってるだけではダ メ、結果を出すようにPDACをきちんとやることだ」(張氏も同感りと力説。  ※詳細は記録あり    


◎「現場とかみ合ってないけど、一蹴せずに私たちからかみ合わせることがいるなあ」(O)



第39回京都教育センター研究集会

1月24日(土)〜25日(日)教育文化センター 全館  

[企画案]

・1日目午前(プレ集会)
 「1950年代の教育状況」山本正行氏(元旭丘中)
・1日目午後(全体会)
 「競争社会に向き合う自己肯定感」高垣忠一郎氏(立命館大学)
 (パネル討論) 企画中
・2日目午前・午後 教育センター8研究会による分科会



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