トップ 事務局 京都教育センター通信
●京都教育センター通信 
復刊第28号
 (2008.11.10発行)

 府民の意見を反映する教育委員会へー実情を伝えることから始まる
──夜間定時制募集定員増のとりくみから──
         京都の定時制・通信制教育を考えるみんなの会 事務局長 説田 三保



 京都市内の夜間定時制の募集定員は8年前の1000名から、昨年は450名、今春は440名と半減された結果、昨年42名、今春76名と多数の不合格者を生みました。京都市内の不登校中学生は982名(2007年度)、就職61名と発表されています。全日制中退者もありますから、予想されたことでした。「京都の定時制・通信制教育を考えるみんなの会」(略称:定通みんなの会・1995年4月発足・年会費千円・会員数140名)は、募集定員の削減が発表された直後から、府教委・市教委に削減の撤回を求めて申し入れを重ねてきました。毎年、定員を超える志願者のある桃山高校定時制の四十人削減した理由を、担当者は全日制の改変によるクラス増に伴う教室の確保のためと称し、定例教育委員会でも課長が同様の説明をしました。この暴挙を止めるには教育委員に実情を伝えるしかないと、私たちが例会や進路相談会でのゲスト(在校生や卒業生、保護者)の発言を収録し発行している文集『もっと知って!定時制・通信制』(2007年版)を提供したことで、大きな変化が生まれました。生徒の心情の一端が伝わったからです。

 私たちの申し入れが議題になる7月15日の京都府定例教育委員会を傍聴したのですが、3月、5月と申し入れと傍聴を重ねてきたこともあって、次々に意見が出ました。 委員:資料の『もっと知って!定時制・通信制』を一読して強く思うのですが、書かれていることを読む限り、ほとんどの子が学校嫌いで、普通の高校に入ってもついていけないか、受け入れられないのか、どちらの形で定時制に来ているのか、よく知りませんが・・・。夜間の状況も変わってきたようで、この話の限りでは、夜かならずしも行く必要が無い。広い目で考えれば、授業のスピードや先生の対応とか、もっと、ゆっくり、親切な学校が望まれているように思う。・・・もう少し抜本的に、昼間の定時制なども考えてはどうか。もう少し親切な高校や、朝からある定時制も、考えられないか。 委員:学校嫌いは小・中学校からはじまっている。小学校・中学校から落ちこぼれている。子どもの数が少なくなったのに問題が起きてきた。授業の進め方など小学校、中学校の対応も大事。・・・定員を増やすなどして・・・基本的には、その時点での対応が大事なのではないか。

 これは発言の一部です。とても同意できない個所もありますが、率直な発言に感動さえ覚えました。こうした経過もあって、7039筆の賛同署名を頂いた「京都の定時制・通信制教育を守る連絡会」の請願が報告された8月27日の定例会では、再度各委員から多くの意見が出されました。なかでも、「桃山定時制は、物理的な問題が解決されれば、募集定員は増やせるのか」との質問は、募集定員を決定する当日の発言だけに、委員の疑念の表れといえます。事務局も「定時制問題の検討委員会を立ち上げる」と発言するなど、変化が生まれてきました。また、全日制収容率は微増したものの、定時制募集定員増は実現しませんでしたが、今後に活きる課題も明らかになりました。一方、京都市教育委員会は申し入れや請願を委員会で報告せず、議題にもしていません。報告すべきとの規則がないことを理由にして、公式には情報を委員に隠していたのです。議題に挙げさせる運動と共に、規則制定が課題です。

 それにしても、不況下で経済格差が拡大している今日、「学び直しの学び舎」である夜間定時制の募集定員は、余裕をもたせるのが教育行政の責任です。

 以上、市民団体としての取り組みの一端を報告し、請願への賛同署名のお礼といたします。





「子どもの貧困」と綴り方実践
              
京都市立梅津北小学校 得丸 浩一


 なおとがこんな日記を書いてきました。

 プレゼント

 七月五日のたんじょう日プレゼントをお父さんに買ってもらうつもりだったけど、お父さんがパチンコをして、お金がなくなって、プレゼントを買ってもらえなくて、少しざんねんでした。

 刑務所から出てきた父親はほんの短い期間だけ家にいたようですが、すぐに別の女性と暮らしはじめました。

 なおとはこんな日記も書いています。

 ぼくの家はみんなお金がなくて、業務スーパーで安い物を買ってくるので、ときどきまずいこともあります。

 五月の連休明けに作文を書きました。まゆみの作文を一部だけ読みます。

 わたしは、きのう弟と一緒におるすばんをしていました。ママに七百四十三円もらって、弟とフレンドマートに行った後、京都ファミリーに行きました。歩いて行きました。

 いろいろファミリーでかいました。最後に、ダックテールで、スポンジボブの消しゴムを弟にかってあげました。本当は自分のがほしかったけど、弟が前からスポンジボブの何かがほしいと言っていたので、かってあげました。

 ダックテールでかい物が終わって、三Fの本屋さんで本を見ていると、弟がかったばかりのけしごむをなくしたので、十五分くらいさがしていました。でもみつからなかったので、あきらめて家に帰りました。

 この作文の題は「楽しいことがいっぱいあった」です。連休に家族で出かけたことを書く子が多い中で、私はまゆみの作文にさびしさを感じました。まゆみの家は母子家庭です。飲食店で仕事をする母親は連休に休めなかったのでしょう。作文はこう結ばれています。

(またいつかこんな楽しい日があったらいいな あ。)

 と思います。

 六年生のあかねはこんな日記を書いてきました。最初に「一枚文集に載せるな」というこんな但し書きがありました。 (のせたら困る、ってか、おこられそう。お母 さんに・・・)

 友達の家でお酒を飲むお母さん

 私のお母さんは、友達の家に行くと、お酒をいっぱい飲んですぐによっぱらう。

 自分で、 「今日は早よ帰るで」 っとか言うくせに、結局お母さんのせいで、帰るのが夜の十二時過ぎとか・・・。

 何でおそくなるのかと言うと、お母さんのしゃべりがすごく長くなるから。 「お菓子買ってきていいから、お酒買ってきて」

 とか、いろいろ言われるし、ハッキリ言ってつかれる・・・。

 私が何度も、 「早く帰ろう。明日学校やし」 って言っても、 「うん、分かった。分かった」 とか言いながら、帰らへんし、私はさきに帰ったりする。

 もう少し、お酒の量をへらしてほしいと思ってる。

 あかねのところは三月に両親が離婚。「男は全部ダメ」なので、もちろん私なんか真っ先に拒否されていました。

 「子どもと貧困」が新しい視点として登場しています。現場感覚としては別に新しいことはないのですが。でも、今、ここを切り口にして子どもと教育を語ることに大きな意味があるように思うのです。






教職員を繋いで─日刊「生徒指導報告メモ」─
                京丹後市立宇川中学校 藤原利昭



 学級通信活動を教育実践の中心にすえた三十六年間が終わろうとしている。担任を外れた昨年来、生徒指導主任の立場を活かし、定例(毎週一回)の生徒指導部会と「生徒指導報告メモ」=生徒指導部ニュースを発行することで、教職員集団=学校づくりを進めてきた。

 生徒と生徒、生徒と教師、教師と保護者、教師と教師を「繋ぐこと」を生徒指導方針の中心に位置づけた。「繋ぐ」ことは「相互作用」を組織することである。生徒を変えるのは生徒集団、その運動=相互作用を組織するのが教師の任務であるという確信に基づく方針である。

 「生徒指導報告メモ」の発行に当たっては、次のような方針と留意点を確認してきた。

@生徒の情報を共有する ・事象、実態などを共有することで共通認識 が形成され、方針の理解が深まり、一致し た指導と実践が可能になる

A全教職員の参加を組織する ・全教職員で全校生徒の教育に当たる ・教職員によって生徒は違った姿を見せる B毎日発行する

・指導の時機を逸しない
・感性を研ぎ澄まし緊張感をもって生徒を捉える
・「量の拡大」がなければ「質の転換」はありえない

Dあくまでも事実を尊重して書く

E生徒は変化し発展する視点で捉えて書く

F個別に深く捉えるだけでなく、周り生徒集団、家庭環境と結んで捉えて書く

 昨年度は三三五号、今年度は一七五号(十月二十一日現在)を発行したが、その内容は、生徒の実態・動向などの情報に止まらず、事象の捉え方、実践の方針、実践の総括、各行事や取り組みの状況と課題・成果、生徒指導部会の討議内容、生徒や父母、卒業生の声など多岐にわたっている。

 管理職、教諭はもとより、SC・事務職員・学校用務員・給食調理人・非常勤講師と、全ての宇川中学校の教職員が、情報や提案などを寄せて下さり、紙面が実に豊かになった。 「生徒指導報告メモ」を毎日発行し活用することで、情報や方針を共有し、時機を逸しないで、系統的且つ継続的な指導が可能となったことは言うまでもない。また、日々の生徒の動向を把握する教職員の意識も強まったと言える。さらに生徒指導報告メモの発行は、全教職員に自分の想いや意見を表明できる「場=機会」を提供することでもあり、教職員の協働関係が作られ連帯が強まったと確信している。

 毎週一回定例の生徒指導部会(各学年担任、教務、管理職、主任)は年間三十回を数え(本年度は二十一回、十月二十三日現在)、生徒指導に関わることだけではなく、授業や学力保障、各種学校行事、PTA活動など、学校教育の全ての課題について討議し、現状の交流と打開の方針を確認して実践してきた。実践の中心は担任である。定例生徒指導部会では、担任が安心して実践できる条件を整えることに留意してきた。

 「生徒指導報告メモ」以外には、部活ニュース「繋ぐ繋げ繋ごう」(三六五号)、分会にユース「UNION」(二〇六号)を発行し、生徒を繋ぎ、教職員を繋ぎ、父母を繋ぐ努力を行ってきた。人間は相互作用で発達する。相互作用を組織する手段として「通信活動」はかなり有効であることを確信する。

 生徒指導は、全ての教育実践の出発であり帰結でもある。授業=学力保障とともに、学校づくりの中心課題であり、全ての教職員が取り組まなければならない課題である。その任務に当たる生徒指導主任の役割はきわめて重要であると考える。








お金の心配なく学びたい!!

−−京都の高校・大学の「学費問題を考える」フォーラム−−

  京都教育センターの呼びかけに応えて、科学者会議京都支部など8団体による実行委員会が主催した「学費問題を考えるフォーラム」が10月13日(月・祝日)、教育文化センターで開催されました。

 集会では、細川孝氏(龍谷大学、国際人権A規約第13条の会代表)が「高等教育をめぐる二つの課題」について講演され、権利としての高等教育をめざして、国際的には常識化してきている「学費無償教育」の漸進的導入と権利としてのキャリア教育の必然性を提起されました。

 各分野からの報告では、「高学費に苦しむ2000人の学生の声を集めて、国会要請や学費ゼロネットに取り組んだ」(府学連佐伯委員長)、「定員増を求める7000要請署名活動の教訓」(定時制・通信制教育を考えるみんなの会松本世話人)、「公立高校の教育費負担増と奨学金制度の融資化」(府立高教組高田副書記長)、「教育費負担の公私間格差と府の私学助成の問題点」(京私教三宅委員長)、「大学版構造改革がもたらす私大の費用負担問題」(京滋私大教連佐々江書記長)などが深刻なデータをもとに語られました。

 大学関係者、教職員組合関係、父母、学生など37人が参加し、「公私の枠を超えて京都の教育関係者が一同に会しての久しぶりの集いは今後も発展させたい」などの感想が寄せられ、今後の活動の交流と結合を申し合わせました。



―新学習指導要領批判 連続学習会
[第3回]
改訂の「目玉」:道徳教育と  実技教科、「総合」はどうなるのか!―


○11月29日(土)13:30 教文センター202

○講演「新学習指導要領と道徳教育の新段階」

 井ノ口淳三氏(追手門学院大学教授)

○報告
@「図工・美術教育はどうなるのか」  上中良子氏(京都橘大学教授)    
A「選択廃止で技術科教育はどうなるのか」 大石祐平氏(市立桃山中教諭)

・討論 ・まとめ/閉会 野中一也氏(教育センター代表)

 ご期待ください!



第39回京都教育センター研究集会

1月24日(土)〜25日(日)教育文化センター 全館  

[企画案]

・1日目午前(プレ集会)
 「1950年代の教育状況」山本正行氏(元旭丘中)
・1日目午後(全体会)
 「競争社会に向き合う自己肯定感」高垣忠一郎氏(立命館大学)
 (パネル討論) 企画中
・2日目午前・午後 教育センター8研究会による分科会



京都教育センターホームページにアクセスを


  http://www.kyoto-kyoiku.com  検索「京都教育センター」

 京都教育センター事務局や公開研究会の活動をはじめ、センター通信、季刊「ひろば・京都の教育」、教育センター年報、研究集会、教育基本法に関する様々な資料など、多彩な情報を提供しています。



「季刊ひろば」・・・・・ご存知ですか?
−−京都で唯一の教育専門誌です−−

155号(8月刊)が刊行しました。

特集1 「ケータイ・ネット文化と子どもの世界」(尾木直樹氏も執筆)
   2 「地域で育つ子どもたち」 新学習指導要領と学校教育
      −「生きる力」「基礎・基本」を問う


◎見本誌(無料)希望の方は

 氏名・学校名・住所・電話番号を記入してFAX(075-752-1081)にお送り下さい。

◎定期購読者も募っています

 〔年4回刊 年会費2960円(送料共・年1回の振込)〕上記と同様に申し込んでください。



教育季刊誌「ひろば」156号 11月10日発行

 特集テーマ

1.現代社会と子ども−教育的指導・ケアとゼロトレランス  

2.教員養成の現状と課題ー団塊世代の退職と大学・学校現場



「京都教育センター通信」「ひろば京都の教育」をご希望の方は、電話またはファックスにてご連絡ください。
トップ 事務局 京都教育センター通信