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●京都教育センター通信 
復刊第27号
 (2008.10.10発行)

 今こそ、憲法を教育に生かすために意識的なとりくみを
                 三上 悟(京都退職教職員の会会長)




 退職して十三年半の私が、「今更何をか言わんや」ですが、最近思っていることを述べたいと思います。二〇〇六年十二月に教育基本法が改悪され、翌年五月には、憲法そのものの改悪を狙う「国民投票法」が強行されるという流れの中で、今こそ意識的に「憲法を教育に生かす」とりくみが必要だと思っていました。

 そんな中で、九月八日〜九日に新潟市で開かれた日本高齢者大会に参加しました。その分科会の中で「軍隊をもたない国・コスタリカでは、幼稚園のときから『争いは、話し合いで解決するもの』との指導がされている」との発言があり、ハッとさせられました。帰ってから、早乙女勝元さん編集のビデオ「軍隊をもたない国・コスタリカ」を改めて観ました。

 さて、憲法を教育に生かすことについて、どうすることなのか考えてみました。そこで、先輩から言われた「原点に返って考える」を思い出しました。日本国憲法の三原則は、@国民主権、A平和主義、B基本的人権の尊重です。

 二十二年教育基本法第一条「教育の目的」には、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行なわれなければならない。」(-―部分は、削除されました。)と記されていました。

 私は、「自分の頭でかんがえ、自分の判断に基づいて自己を表現し、みんなの考えとつき合わせながら結論を得る」という自主性と柔軟性をもった人間になってほしいと思ってきました。また、ともすれば騙されやすい世の中にあって、真理を愛し、真理を探究する力を育てるために、何をどうすればいいのかを、教科指導や他の分野で意識的に取り組むことが重要だと考えてきました。

 今から四十五年も前のことです。八木中学校で担任した喧嘩をよくする野球部所属の生徒H君、彼は在日朝鮮人の子どもでした。喧嘩をやめさせることより先に、彼のことをよく理解しようと考えました。当時は、日本赤十字社と朝鮮民主主義人民共和国赤十字社とで締結された「在日朝鮮人の帰還協定(カリカッタ協定)による帰還事業が始まっていた頃でした。

 三上―「君の父さんと母さんは、夫婦喧嘩することあるか?」
 H―「あるよ」
 三上―「喧嘩の種はなんや?」
 H―「わからん」
 三上―「何でわからんの?」
 H―普通の会話は、日本語やけど、喧嘩のときは朝鮮語やし、何言ってるのかわからん」
 三上―「ところで君は、将来朝鮮へ帰りたいと思っているの?」
 しばらく考えて---H―「帰りたいと思っています。」
 三上―「そうか。父さん、母さんの喧嘩の種も分かるし、将来朝鮮へ帰っても必要やから、朝鮮語の勉強したらどうやろ。京都にある『朝鮮中高級学校』へ行ったらどうえ。それからもう一つ、君はよく喧嘩するけど、その理由はいちいち聞かないけど、帰還するとき、『よく喧嘩する子やった』と思われながら別れるのと、仲良くして、良い友達として別れるのと、どっちがいいか考えような。もし君が、自分の気持ちをクラスのみんなに伝えたいなら、毎日出している『学級通信』に載せて、先生からも補足したいので、原稿を書こうと思ったら書いてな」

 ---二〜三日後、原稿が届きました。「自分は将来朝鮮へ帰ろうと思う」と、自分の気持ちを綴ってくれたのでした。さっそく学級通信に載せて、私からも補足し、「朝鮮へ帰るまでいい友達でいたい」との気持ちを伝えました。暫くして帰還事業が中止になったため帰還は実現しませんでしたが、今となればその方がよかったのかもしれません。その後喧嘩はしていません。

 文科省が削除した部分について、具体的な内容で教材化することが必要だと、心がけた毎日でした。






「自然って、楽しいね!」
     ―理科教育で大切にしたいこと―

                 向日市立第五向陽小学校 岡 敏明

一、さあ、理科が始まるよ!

 低学年理科がない今、三年生では、理科という教科が始まる学年として、子どもと自然との関わりを大切にし、自然に働きかけ、自然から学ぶ実践や授業づくりが必要となります。その中から、子ども達が、自然の事象や法則性を探究し、自然の楽しさ、美しさ、不思議さ、こわさ等を感じることで、自然科学に対して興味を持って学習できるようになるのだと思います。しかし、近年、理科は小学生にとって、比較的好きな教科でありながら、学習内容の理解が不十分であることが、指摘されています。その原因として、教育課題の配列以外に、実践、観察等「能動的にやればよい」といった短絡的な指導法への問題が考えられます。また、子ども達の中に「うその科学」― 例えば、占い、オカルト、血液型性格判断等が話題になっていることも気になります。そのような中、「教育のつどい」の理科分科会で、報告しました『昆虫の学習』のレポートを、実践の一例としてふれてみたいと思います。


二、『昆虫学習』(三年)に取り組んで!

 一学期から二学期の初めにかけて、昆虫の学習を行います。この学習を通して、動物とはどのような生き物であるか等の大切な認識を培っていきたいと考えました。子ども達にとって、昆虫への興味、関心には大きな差があり、好きな子は、とてもかわいがって世話をしましたが、そうでない子は、気持ちわるがるか、見向きもしないようなところがありました。また、たとえ昆虫が好きであっても、カブトムシやクワガタムシは好きだけれど、チョウには、関心を示さない子もいて、学習するための卵や幼虫が、あまり集まらない状態でした。そのような中でも、教室で飼い始めてからは、一つ一つの体の変化に関心を示し、卵から、幼虫、さなぎ、成虫と変化することに喜びました。そのため、他教科の授業であっても、体の変化の場面に出会った時は中断して、その様子をじっと見つめることにしました。このことから、生き物の生命現象の神秘さ、素晴らしさに感動したのではないでしょうか。そして、成虫の観察後にチョウを放してやりましたが、その時には、自然に返してやる喜びを感じる子や、自ら育てた成虫を逃がす寂しさを感じる子がいました。このように、一人一人の子ども達のつぶやきや表情も大切にしながら、教師も子ども達の気持ちに共感しながら、授業の組み立てをしていくことが大切であると思いました。

 理科は、自然や環境に左右される教科でもあります。今回の昆虫学習においては、自然が少ない地域では、卵や幼虫を集めることが困難です。そのために、校内でキャベツや柑橘類の栽培をしておくと、子ども達と共に、校内での観察活動も可能になります。このように、理科は、環境整備について、ひと工夫することが大切であると思います。


三、自然から学ぶ授業づくり!

 「改訂学習指導要領」では、理科の授業時数が大幅に増えたものの、単元の配列には、問題点が多くあります。そのため、子ども達が自然に関わり、親しむことができるような実践を大切にし、科学的認識を培うことができる授業づくりに、乙訓理科サークルの先生方と共に、学びながら進めていきたいと思います。






学級づくりで大切にしていること

              宇治田原町立田原小学校  井上 達也


一.ゲームで近づく

 学級づくりで大切にしていることの一つは、いろんな場面で、違ったタイプの子どもを組ますことです。その中心が班活動です。班の仲間がよりしゃべりやすくなるように、班で相談したり、話し合ったりするゲームをよくします。その一例を紹介します。

《粘土クイズ》  班の代表が先生から封筒に入った「お題」をもらい、音楽(三分ほど)が流れている間に「お題」の物を粘土で作ります(例えばワニなど)。音楽が終わると班員全員が見に来ます。席に戻って代表が何を作ったかを班で相談します。そして発表します。「お題」の物と合っていたら正解です。  

《どっちが好き?》  代表の好きな物は(例えば)「カレーかラーメンか」。これも班で相談して正解を求めます。

 こうしたゲームは必ずグループで楽しく話し合う活動です。人間って近くに寄らないとその人の良さはわからないので、意図的に話し合うゲームをよくします。最近の子どもたちは仲間意識が薄く、気の合う者同士は仲良くなれるが、違ったタイプは受け入れにくい。トラブルがあっても、仲良くしている子の味方にはなるがそうでない子には素知らぬ顔である。だからこそ異質のグループを意図的に作り、そこで活動させお互いのことをよく理解してほしいと思っている。班替えのたびに友達が増えてほしい。


二.ウソをつかない関係づくり

 もう一つ大切にしていることは、「信頼する」ということです。どれだけ子どものことを信頼できるのか、どれだけ愛することができるかということ。子どもたちはいろんな課題を持っていて、小手先の技術ではうまくいかない場合が多い。「だまされても信頼する」「クラスがしんどいときほど子どもに頼る」。この何年間よく意識したことである。教師にとってウソを言われるほど辛いことはない。悪いことをして暴れていても「俺がやった」と言われれば心が和みホットする。でも、ウソを言われると辛い。その子に対する信頼が揺らいでしまうからである。だから、最近では「本当のことを言える関係づくり」を意識している。

 とてもやんちゃな子どもの担任をしたときのこと。本当のことを絶対に言わない子で、「俺、ちゃうで!」とすぐ言ってしまう子であった。その子が学校の備品をつぶしたことがあって、周りの状況からみてもその子がやったのに違いないことが伺えた。でも認めない。しかもその子が一番仲のよい子からも「あいつや!」って言われていても「俺がした」って言えない。私も心が苦しかった。「なんでこの子は本当のことを言えないんやろうか」。言わないことに憐れんだ。でも、その子と二人で話したとき、初めて「俺がした」と小さい声で言ってくれた。その子も泣きながら言ったけど、私も涙が出てきた。その子と信頼がつながったと思ってうれしかった。怒って直るのならいいけれど、「ほんまのことを言えばいいにゃでー」という思いを持って日々接している。

 怒られ慣れている子、自由にされすぎている子、本当に十人十色です。子ども同士の関係も薄いので、子どもをしっかりと見つめてクラスづくりをしなくっちゃいけないと思う。








新学習指導要領批判[連続学習会U]開かれる

−−ぶれる指導要領に振りまわされず、今こそ自前の教育課程を!−−

 教育センターの公開研究会として9月13日の午後開催され、30名の参加がありました。講演された小野英喜氏(立命館大学)は、戦後7回にわたる学習指導要領の改訂内容を詳しく分析され、一覧表(A3版)でその一貫性のない変遷について批判されました。府内の学校での自前の教育課程と授業実践例を紹介され、「今こそ授業研究と教育課程づくりを学年、教科からでも」と力説されました。

 実践報告では、得丸浩一氏(市立梅津北小)が浅い認識での発表や記録に固執する指導要領をのりこえ、子どもたちの豊かな感性と表現力を育てるつづり方の実践例を語られ、辻健司氏(市立双ヶ丘中)は世界地理で3つの国しか教えない現行要領のいい加減さを指摘され、3人の学年教科担当で共同して限られた時間で豊かな内容(ヨーロッパ学習の授業づくり)を興味深く学習する展開を紹介されました。  参加された新婦人の父母は、「3ヶ国しか教えないってびっくり、もっと私たちが教科書の実態について勉強しなくては、と思った」と感想を述べられていました。



――[GS批判連続学習会V]の案内――

◇ 11月29日(土)13:00〜  教文センター202

◇「新学習指導要領と道徳教育の新段階」 井ノ口淳三氏(大阪追手門大学教授)

◇ 実践報告:道徳、芸術、総合など      ご期待ください!



第39回京都教育センター研究集会

1月24日(土)〜25日(日)教育文化センター 全館  

[企画案]

・1日目午前(プレ集会)
 「1950年代の教育状況」山本正行氏(元旭丘中)
・1日目午後(全体会)
 「競争社会に向き合う自己肯定感」高垣忠一郎氏(立命館大学)
 (パネル討論) 企画中
・2日目午前・午後 教育センター8研究会による分科会



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   2 「地域で育つ子どもたち」 新学習指導要領と学校教育
      −「生きる力」「基礎・基本」を問う


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教育季刊誌「ひろば」156号 11月10日発行

 特集テーマ

1.現代社会と子ども−教育的指導・ケアとゼロトレランス  

2.教員養成の現状と課題ー団塊世代の退職と大学・学校現場


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