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●京都教育センター通信 
復刊第26号
 (2008.9.10発行)

 実質的に未来に希望を抱いた「教育のつどい」
                 野中 一也(京都教育センター代表)



 京都で8月21日から24日まで「教育のつどい2008」が開催されました。現地実行委員会代表の一人として全日程に参加しました。右翼からの妨害をはねのけ集会成功のために尽力された皆さんに頭が下がる思いです。あらためて京都の民主勢力の底力を感じ何度か感動しました。そして「つどい」では全国各地でとりくまれている実践報告を聞く機会を多くいただきました。

 まず第一の感想は、子どものことと子どもをめぐる背景を語り合って、そこに“希望”を見出し元気をもらってまた自分の地域に帰っていったように思いました。すべてのものが市場原理でしか評価されない氷のような冷たい施策が押しつけられ、人間としてのつながりがバラバラに切り裂かれて孤立感を深めている現状があります。その本質は新自由主義といわれるものですが、「つどい」に集まって語り合う中でその本質が水面上に浮かび上がってよく見えるようになりました。

 多くの実践報告が語られましたが、その典型的なものをあげてみましょう。「教育改革」の分科会での大阪からの報告です。橋下知事は「子どもの心が明るくなる大阪」「教育日本一」をつくると言ってマスコミをフルに使って当選しました。しかし知事に当選するや否や劇的な「豹変」をし、夕張市のような赤字自治体にならないようにするといいだし、教育・福祉を含む経費節減を強行しだしました。ウソを平気で公言するその狙いは、財界の利益追求である道州制の実現をめざすものであることが明確になってきました。しかし、最初は「かなわんわ」という愚痴が共同のものとなり共感の輪となってひろがって行き、連合日教組とも共同行動がとれるようになりました。まだ先が具体的には見えませんが、明らかに“希望“が見えてきたように思います。共通の願いが共感の輪となり、民主的な力となって広がっていっています。

 次に、個人的なことなのですが、私自身の世界観が大きく広がったように思います。性教育バッシングがあれば守らなければならないと思い、防衛要員として「両性の平等」の分科会に参加しました。その不安は幸いにも杞憂に終わりました。むしろ大いに勉強させてもらいました。人間は男性・女性の「両性」だけではなく「多様な性」で成り立っており、それが根源的な人間存在であるということです。人間とは何か、ということを原理的に追っかけていく課題を背負いました。

 また、教育フォーラム「ネット・ケータイと子どもの世界」では、小・中・高の若者を中心としてネット世界の問題が語り合われました。否定的な部分だけではなく、肯定的部分を含んで考えていかねばならないと確認されました。正に弁証法的思考が要請されているように思いました。パネラーの中西新太郎さんは、「文化はバーチャルである」といっていましたが、考えさせられる提起と受け止めました。私は、世界観として、現実・地域を生活土台として理想を内包しながら「超越的世界」を一人ひとりがもつことが極めて重要であると思っています。

 個人的にも課題を背負って前向きに進んでいきたいと思っています。「教育のつどい」のよびかけの基調は、子どものことを語り、平和の文化・社会・世界を展望することでした。「つどい」では、世界に誇れる日本憲法、とりわけ九条の意義が深められていったように思います。やがて九条が日本の“伝統”になっていくように努力したいとあらためて思いました。





「教育のつどい」(国語教育)で学んだこと

                宇治市立南小倉小学校 市田 康直

1.共感できる仲間が全国にいっぱいいるんだ

 大阪の若い仲間は、綴り方のレポート報告の中で、次のように語っています。

 「学級通信を書く(綴る)時間は、私にとって忙しい日々の中で、やさしいゆったりとした気持ちになれる時間です。そして、子どもたちの作文や日記を載せた学級通信を読み合う時間は、私が何よりも元気をもらっています。」

 「『子どもがかわいいと思えたらこの仕事やっていける。』これは、サークルの先輩から教えていただいた言葉です。」

 国語の分科会に京都からレポート参加して、本当に良かったと思いました。私の学校にも、子どもに生活を綴らせながら、自分を見つめたり、仲間とつながったりしていく実践を展開している教師がいます。そして、綴ることと読み合うことを大切にして、温かい学級を作っている仲間のことを思い出しました。

 私も子どもの綴り方を読むとき、学級のみんなと読み合うとき、とても幸せな気分になります。その子自身をまるごと受け止めようと思える瞬間に出会います。読み終わったときに流れるやさしい笑顔がたまらなく好きです。


2.三年生の子どもたちと「木かげにごろり」を読む

 私のレポートは、朝鮮の民話「木かげにごろり」を実践したときの報告でした。

 民話の持つ、語り口のよさ、筋立てのわかりやすさ、繰り返しのおもしろさを子どもたちと大いに楽しみました。音読することが楽しくて、「こりゃあ、だれのゆるしをえてわしの門の前でねておる。」と地主がやれば、「地主様、木かげがどこまでのびているか、しっかり見てくだされ。木かげはまちがいなく私たちが買ったものでございます。」と百姓が返す。学級は、楽しい笑い声でいっぱいでした。一時は、「こりゃあ」が合い言葉になるくらいでした。

 そして、学び終わった子どもたちから、「本が好きになった。」「読書が好きになった。」「このお話しが大好きでした。」といううれしい感想をいっぱいもらいました。

 このレポートについて、共同研究者の先生から次のようなまとめをいただきました。

 『朝鮮の民話という特質をいかして、語り聞かせを大事にし、読みを大事に取り組んだ点が成功している。民話には民衆の願いが描かれているので、民話独自の世界を体験させることで「人間をどう見るのか」「人間認識のあり方」を子どもにつかませたい。その意味では、「ごろり」と「ごろりん」のことばのちがいを丁寧に読み、形象を豊かに読むことで百姓の意志まで見えてくる迫り方がとても良いなあと思います。また、それを受け止める集団に関して、全盲児童や友だちの少ない児童を学級通信や綴り方の中で、きちんと学級の中に位置づけ、安心していられる居場所作りを作り出している点も学ぶことがあった。』と、過分な評価をいただきました。


3.これからも学び続けたい

 「改訂学習指導要領」では、国語科で「愛国心の押しつけ」を進めようとしていること、また「昔話や神話・伝承などの読み聞かせ」と「童話」が「神話・伝承」にすりかえられることを聞きました。そのことからも、民衆の側にたった「民話」もふくめ、昔話や童話を本当に大事に子どもたちと読み合っていかなくてはならないと強く思います。全国教研から学んだことを生かして、これからも多くの仲間と共に、学び続けたいと思います。






「教育のつどい」(生活指導・自治的活動)に参加して
              綾部市立綾部中学校 森本 豊

 第12分科会では、中京大の照本祥敬さんの基調報告で「生徒指導のゼロトレランス(寛容度ゼロ)」が生徒指導体制の見直しとして強く現場に入り込みつつある現状が出されました。それに対して私たちが目指すのは、常に他者とつながりながら要求を聞き取り応答し合う共生的な関係の基盤となる自治的・文化的活動を育てる生活指導の方向性であることを明確に出されました。

 3分散会に分かれての60分ずつのレポート検討(30本)で、私の出たB分散会は「小学校の特別支援教育」「定時制高校のホームルーム」など多彩な内容でした。

 特に小学校からは、特別支援の必要な子どもとともにどのようにクラス集団の中で相互に成長しあえるかの視点から、子どもや親に徹底して寄り添った指導の実践が報告されました。指導場面で叱るときでも常に「子どもの成長の道筋」を見通した課題提示であったり、人間関係作りを土台にした上での「追い込み」と「自己変革」を迫る指導(「免疫療法」と名付けられていました!)など、ほんとうに見通しをはっきりさせ、子どもたちとダイナミックにつながる指導の報告が出され、指導される先生の粘りと発想の豊かさに感動しました。

 私は中学校一年生の学級作りで『はっきり言って、みんなキレイ事ばっかり言っていると思う』というレポートをしました。春の校外学習から自分たちの申し合わせを守れず、違反が続出したクラス。それにこだわり、自分たちでなぜそんな結果になったか、自分たちでつくった申し合わせを守るという意味は何かなど紙上討論や学級会を繰り返す中で、自治がクラスの活動であることをクラスに根付かせようとしました。授業の私語がやまない状況やいやがらせなどに対してもその方法をとりつつ、リーダー提案が否決される・取り組んでも結局守れなかったなどなかなか改善されない中での論議で、最も私語をしクラスの課題の中心であった子どもが上記タイトルの文章を書いてきた。という報告でした。

 質疑では、「班長会や学級委員の提案が二度も学級会で否決される」という点は、リーダー指導として担任の見通しに大きな課題があるのではないか?なぜ結局私語はやまなかったのか?私語ってなぜ起こるのか?中学校で求めるリーダーとはどういうリーダーか?紙上討論で本音は出るか?など、リーダーを軸にした今日的な自治活動のあり方自体の質問や意見が続出しました。 ひとり一人から集団全体まで、子どもたち自身の持つ力を引き出し、それに依拠しながら自治活動を組織することが、特に困難を抱える現場には絶対に必要だと考えます。

 綾部でも困難を抱える小学校現場から「子どもたちの自治活動が重要」という声があがり始めています。「ゼロトレランス」の「排除」「抑圧」の方向は「学校崩壊」「暴力」を激しく生み、子どもたち自身や教職員の生命をまで脅かすものになるだろうと危惧します。

 今回の教研は、学力テストや新指導要領など教育政策の迷走ぶりが際だち、マスコミを含めた世論として教育政策に対する不信が高まる情勢のもとで開かれました。一方で、教育基本法改悪阻止の全国的なうねりと確信に裏打ちされ、すべての子どもたちの成長を大事にする現場での教育実践の必要性が世論にも支持されつつある中で開催された大きな意味のある教研でした。

 確かな方向とさらに目の前の子どもたちにどう関わっていくかという課題、全国の仲間と論議する「わくわくする楽しさと厳しさ」がこの第12分科会にもあふれていました。








――北京も京都も熱く燃えた今夏――

全国の仲間からおおいに学ぶ!

 北京五輪は中国の意気込みと大国イズムを見せつけられたが、100米WRのボルトをはじめとした小国ジャマイカも光り輝いた。

 そのスポーツの祭典と併行して今夏、京都では前号の通信でも案内したように多くの全国規模の教育研究集会が開催された。

 集会規模の大小はあったものの、いずれも現地京都実行委員会の大奮闘により、「京都の教育ここにあり」の到達点を全国の仲間とともに共有することが出来た。[日本生活教育連盟(約270名)、教育科学研究会(約500名)、到達度評価研究会(約150名)、登校拒否・不登校問題全国のつどい(約750名)]。そして盆明けの4日間開催された、全教など実行委員会が主催した「教育のつどい2008」には全体会に4000名、4日間でのべ1万人の参加者があり京都の総力あげた取り組みが実っていずれも大成功を収めた。

 教育センターに結集する研究者などもこれらの代表世話人、事務局、報告者などの任を担い大きな役割を果たすことが出来た。野中一也代表は、教科研の現地代表として「苦情承り」を担当され前日の準備を含め4日間早朝から夜まで裏方も担い奮闘され、引き続いた「全国のつどい」では現地代表委員のひとりとして前日打ち合わせを含み5日間、集い成功の責任者のひとりとして皆勤された。そして、1面のレポート主張でも語られているように、多くのことを学ばれ「希望をいただいた」と述べられているのには頭の下がる思いです。

 私も教科研の裏方を果たした後、「全国のつどい」では「学校・地域づくり」「教育改革」「今日の大学問題」「教育自治フォーラム」などの分科会に一参加者として討論にも加わることができ、久しぶりに「てんこ盛りに勉強した」気分になった。この成果を秋以降のセンターとりくみにも生かせるよう決意を示したい。

 (事務局長 大平 勲)



お金の心配なく学びたい!

高校・大学の高学費問題を考える!


 世界的には高校・大学の「学費は無償」が常識化してきているのに、日本では高い学費(国立大で年間約53万、私立大で約130万)で、バイトに明け暮れることを余儀なくされている学生達から「お金の心配なく学びたい!」との切実な声が上がってきています。

 京都教育センターでは以下の各組織に呼びかけて今、「京都の高校・大学教育のあり方を考えるフォーラム」を企画中です。

 偏差値学力が家庭の経済力との相関が高いなんて、許されない事態です。どんな子ども・青年も等しく意欲を持って学べば高等教育への機会が与えられ、就学できるのが先進国の条件です。京都のいくつかの私立大学や高校では生徒の確保が経営上最優先され、教育や研究のあり方を歪める事態に陥り、公立高校でも新たな通学圏プランで「選べるが行けない」進路選択が蔓延し、その一方でこの間切り捨てられてきた定時制・通信制教育のあり方が大きな問題になってきています。

 こうしたテーマで実行委員会による「フォーラム」を以下のように企画しています。ご期待下さい!

      (予定) 10月13日(月・祝) 13:00〜16:00 於 教文センター

(実行委員会参加要請団体)高等教育研究会/日本科学者会議京都支部/京都私学教職員組合連合/京滋地区私立大学教職員組合連合/京都の定時制・通信制教育を考えるみんなの会/京都府学生自治連合会/京教組など




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   2 「地域で育つ子どもたち」 新学習指導要領と学校教育
      −「生きる力」「基礎・基本」を問う


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