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●京都教育センター通信 復刊第 4号
 (2006.9.10発行)

国会における教育基本法の論点  −−破綻した改悪勢力の「理屈」−−
                  市川 哲(京都教育センター・地方教育行政研究会)



 教育基本法「改正」案は秋の臨時国会の最大の焦点である。これを阻止すれば、同法と憲法を一体的に改悪しようとする勢力のたくらみを打ち砕くこともできよう。

 国会の議論では、教育問題を解決するために教基法を変えるとする“根拠”については「そうは言いきれない」と逃げた。「アメリカに押しつけられた」とする“言い分”も、制定時の文部省高官の言説をあげられると、「政府の発意で法案が作成され、帝国議会の審議を経て制定したことは明らか」と答えざるをえなかった。通知表が取り上げられ、「愛国心」で子どもの内心を評価することは首相も文科大臣も誤りだと認めざるをえなかった。つまり提案者は「改正」すべき理由を示すことができなかったし、また評価できないものを「教育の目標」にあげる「改正案」は存在基盤そのものを失っている。

 他にも現行法10条の「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」から、「国民全体に対し直接に責任を負う」を削除し、「この法律及び他の法律の定めるところにより」に置き換えたことが議論された。文科大臣は「旭川学テ最高裁判決」(1976年)を引いて「法律の命ずるところをそのまま執行する教育行政機関の行為は、不当な支配とはなり得ないこと、また国は必要かつ相当と認められる範囲において、教育内容についてもこれを決定する権能を有すること、が明らかにされている」とした。ここにはごまかしと問題がある。

 第一に、「学テ判決」は上記の国の主張と、国ではなく教師が教育内容と方法を決めるとする弁護側の主張の「二つの見解はいずれも極端かつ一方的」で「そのいずれをも全面的に採用することはできない」としたうえで、「学習指導要領などによる教育内容への介入は大綱的基準の設定の範囲に留まるべきである」とするのである。文科大臣の主張は一部だけを恣意的にとった曲解である。

 第二に、法律による教育行政は「不当な支配」とはなり得ないとする主張である。これは以前からの「議会制民主主義論」をベースにする。つまり国民の教育意思は選挙で国会に反映され、国会が制定する法律に具体化されるから、法律による教育行政は国民の教育意思を最もよく体現するので「不当な支配」ではないと言うのである。議会の多数派が政治的に教育を決定できるとする論の誤りは明らかだ。先の「学テ判決」も、法律は「教基法の規定及び同法の趣旨、目的に反しないように解釈されなければならない」し、また「教育行政機関がこれらの法律を運用する場合においても、当該法律規定が特定的に命じていることを執行する場合を除き、教基法10条1項にいう「不当な支配」とならないように配慮しなければならない拘束を受けているものと解される」とするところである。

 マスコミでも取り上げられるようになり、教基法に関する認識が国民の中で深まりつつある。議論すればするほど「改正」勢力には理が無く、憲法と教基法の輝きが増すのは必定である。

 この秋、今まで以上に広く、深く学習運動を展開して行けば“改悪阻止”の展望は必ず開けるだろう。



創作中心の俳句の授業
                       京都市立洛陽工業高校 中西 亮




 国語教師の多くが苦手としているのが、詩や短歌、俳句の指導ではないでしょうか。わたしが生徒のときにも、三十一文字の短歌を、二百字くらいの文章で解釈して黒板に書く先生が多かったように記憶しています。わたしも、詩や短歌などは、なにをどう指導したらよいのかいつもとまどいます。 言語には、ある事柄や思想を伝える働きと、表現することが目的になる場合の二通りあります。前者は論理性が重要ですが、後者は自由な発想や表現をします。生徒は論理的な文章が苦手なのに、意味が通じること、わかることに強くこだわります。

 評論や小説は読者と作者が分業であるのと異なり、詩は集団の中で享受され、読者は作者にもなります。そこで、詩形が最も短い俳句の創作を行うことにしました。授業で作った俳句は、作品募集に応募します。前年の受賞作品をみると、一見たいしたことがないので、もう自分が賞をとった気になっている生徒もいます。

 授業では、最初に、クイズ形式のプリントを使って、俳句の三つの決まりを説明します。一つめは季語です。春の雨、夏の雨、秋の雨、冬の雨は同じじゃないことに気づかせます。二つめは五七五、三つめは「切れ」です。俳句は「切れ」によって上下に分断されます。この二つの部分に論理的なつながりはありません。

 たとえば、「ひまわりは太陽のようだ」という一行詩を示します。ひまわりと太陽とでは組み合わせが当たり前すぎます。一方、「桜散るあなたも河馬になりなさい」(坪内稔典)だと、散る桜と河馬の間には何のつながりもなさそうです。しかし、よく考えると、二つがとても似合ってます。また、「詩のボクシング」を見せたりして、俳句は意味にこだわらなくてもいいと強調します。

  作句の当日は、固有名詞を入れないこと、と、パクリにならないことなどをはじめに注意します。人名・地名などを使うのは難しい上、他人を茶化したりする句になってしまうことがあるからです。

 作った句を友達と見せ合いっこしながら、自由に何句も作ります。たくさん作った中から二句提出です。全員提出できるのは集団の力でしょう。 提出した句は作者名を伏せ、プリントにして配ります。誰の句か想像しながら楽しく読みます。各人三句選んで発表させ、高得点句は講評をして作者を発表します。また、特に好きな一句の感想をカードに書かせ、作者に渡します。

 韻文は散文とは違います。伝達の道具ではない言語の豊かさも、生徒たちに知ってほしいと願っています。



クラス通信の発行は私の「よりどころ」
               京都府立亀岡高等学校  森本美枝子



 組合専従休職を経て、昨年春、五年ぶりに現場に戻った。現場の激変について行けるのか?そもそも現場で私は教師として通用するのか?不安いっぱいの再出発だった。

 案の定、スタートしてみると毎日が?(疑問符)の連続だった。あたりまえのようにある7時間目授業。教頭が議長を務める連絡事項ばかりの職員会議。どこでいつ決まったのかもわからないまま次々おろされてくる文書、指示。一つ一つに?を浮かべながらもその超スピードの流れに遅れまいと懸命の日々となった。

 さて一年担任となった私の最初の仕事はとりあえずクラス通信をつくること。新採で赴任した山城高校定時制で、クラス通信を通して生徒とつながり集団をつくる実践を多くの先輩教師から学んだ私は、担任になるとクラス通信をつくるようになった。「ほっと1ー4(いちよん)」と名付けた第一号には「みんなが人間として成長できる1年4組に」などと肩に力の入ったコメントを載せ、教育基本法第一条の条文まで載せている。その後は生徒の自己紹介、遠足・文化祭などに向けてのとりくみ、遠足や人権学習・進路学習の生徒の感想、期末テストまであと○日!などのいわゆるお説教?、行事日程などなど過去のノウハウをたよりに、一年間で二六号を発行した。

 教師の言葉がそのままの意味で生徒に届かず、空回りしているのではないかと思うことや、生徒同士の関係が非常に厳しくなっていると実感することが多い毎日。そんな中で、不思議に彼らはこのクラス通信をよく読む。配った後、三分は教室が静まりかえる、というのが常になった。担任のお説教は読み飛ばしても、クラスの仲間が書いたものは特によく読む。隅から隅まで読んだ後、私の目の前でくしゃくしゃに丸めて、ゴミ箱にシュート!という光景もしょっちゅうだが、全く読まずにシュート!はなかったように思う。行事予定のところだけを切り取って机に貼っているという生徒もいる。

 この一年をふり返って、このクラス通信が目に見えてこんな成果をあげたと自信をもっていえるものはない。ただ、担任としてクラスを運営していく時の心のよりどころであったということは言える。二年担任に持ち上がった今年も「ほっと2の5」というクラス通信で生徒の声やアンケートも載せ、楽しく、気楽に続けている。

 本校では、昨年度の途中から突然クラス通信を発行する時には事前に回議書を回すことが指示された。クラス通信づくりに職場ぐるみでとりくんで合評会などやっていた時代はすでに遠い昔となった感があるが、あの頃教訓化された、生徒の生の声を載せ、どんな小さなことも評価することの意味は今も変わりがないとあらためて思う。かつてのようにゆとりをもって楽しくクラス通信づくりにとりくめることを望みながらも、担任を持つ私の「よりどころ」として発信し続けようと思う。

教育センターだより


科学者会議&教育センター共同集会

教育基本法改悪反対討論集会

日時 9月23日(土)13:30〜17:00

会場 京都教育文化センター 302号室

講演 「教育基本法改悪法案」を斬る 石井拓児(名古屋大学・教育学)

    報告 ・「教育現場からみた教育基本法」大平 勲(教育センター事務局長)

       ・「私学をめぐる状況と教育基本法」(要請中)

    討論/行動提起

   〔参加 無料〕

季刊「ひろば・京都の教育」第147号

(2006年8月1日発売)


■特集1 教育相談と学校カウンセリング

 ●総論 チームを組んだ学校教育相談活動−−その意義とあり方−−・・・・高垣忠一郎(立命館大学)

 ●光と影・・・・田中徳将(立命館大学一回生)

 ●教育相談担当、コーディネーターとして・・・・平本喜美代(ほっこりスペース「あい」相談員・元京都府・公立中学校)

 ●スクールカウンセラーの働き方・・・・辰巳朋子(スクールカウンセラー)

 ●教育相談から見えてくる子どもと保護者と学校・・・・庄田節子(カウンセラー・家庭教育・民主カウンセリング研究会)


■特集2 青年教師から見た学校・子ども−−やりがいと葛藤

 ●総論 いまを生きる青年教師をささえるもの−−ともに成長する喜び−−・・・・築山 崇(京都府立大学)

 ●教員養成を通して、青年教職員の生きがいを考える・・・・小野 英喜(立命館大学)

 ●成長の実感こそが、次の成長への自信に・・・・小柴 真吾(京都府・公立小学校)

 ●日々、よろこびともどかしさの中で・・・・大川 宗一(京都府・公立高等学校)

 ●構成劇にこめられた青年教職員の願いは・・・・駒川 和洋(京都教職員組合青年部担当)


■好評連載

 ●まんが by Monpei 「ストーカー」

 ●私と京都 京都ベトナム留学生会・十年の活動・・・・ファン・リン(ベトナム出身・京都大学大学院情報学研究科)

 ●平和教育H 「国」と「原爆」を裁いた被爆者−−大阪地裁判決にみる−−・・・・小杉 功(原水爆禁止京都協議会(京都原水協)事務局長)

 ●教育・子育て ひろばるトーク

 ●早川幸生の歴史教材たまて箱(47) 井戸−−人の喉と町の活気を潤わせ続けて−−・・・・早川 幸生

 ●ひろば御意見番 墨子(ぼくし)に学ぶ憲法九条・・・・浅井 定雄(京都教育センター)


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