事務局   2014年度年報目次


京都教育センター 年報27号(2014年度)

 -- あいさつ --

憲法を教育に生かすために、教育研究と教育運動を深め、ひろげよう

                京都教育センター代表 高垣忠一郎
 

 2014年4月に野中一也代表から教育センター代表の任を引き継ぐ間もなく、安倍政権は教育委員会制度を見直す地方教育行政法改正案が国会に提出しました。京都教育センターは一貫して平和・民主主義・基本的人権を基底とする日本国憲法の精神に則り、多くの教育に関わる諸団体の方々と力をあわせて教育をよくする取り組みを強めてきました。その立場から、5月2日に「地方教育行政法」の改悪に反対し、教育の自由を守るため教育行政の独立性を保持し、子どもたちの成長・発達を保障する教育行政を求めるアピールを出しました。そのアピールが京都教育センター代表としての私の名前で出された最初のものでした。

 私は登校拒否やひきこもり問題に心理臨床家として長年かかわってきた人間であり、マクロな政治や教育の情勢よりも、個人の内面の苦悩に寄りそってきた人間であり、教育行政などマクロな視点からアピールを出すことなど考えられないことでした。だが教育センター代表として隔週に開かれる「運営委員会」での資料や報告、議論に接するにつけ、子どもや若者たちの内面深くに接したことが、今の教育情勢を個人の内面をくぐり抜けて、よりリアリティをもって観ることができる手ごたえを感じることに気づいたのです。

 とりわけ戦後70年という大きな節目にいる日本を登校拒否やひきこもりの子どもや若者たちの「生みの苦しみ」と重ねてとらえることができるのではないかと強く思うようになりました。特に安倍政権によって「平和憲法」が改悪されようとしている今日の危機において、憲法のもつ意味や意義を学ぶなかで、わたしのしている心理臨床の仕事の持つ意味にも、新しい光を当ててみることができるように思います。

 日本国憲法の根本規範は国民主権、人権尊重、永久平和の3つの原理です。さらにこれらの原理の根本に「個人の尊重(尊厳)」があります。「この世の中に生まれた一人ひとりが自分が自分であることを尊び、自分が自分でなくなることを恐れる、そういう意味での個人を大事にするという原理です」(井上ひさし・樋口陽一『「日本国憲法」を読み直す』 岩波現代文庫 2014年)この文を読んだとき、私は驚きと共に感動を覚えました。

 これは私のいう「自分が自分であって大丈夫」という自己肯定感と瓜二つではないかと。むろんそれに至った歴史や経緯はまったくちがいます。憲法の方は長い人類の歴史を踏まえ、かたや私のいう自己肯定感は、たかだか1人の心理臨床家の40年の臨床実践のなかから生まれたものにすぎません。だが、それがいま、日本という国において同時に存在していることの意味に心惹かれ、深く考えてみたくなるのです。

 平和憲法を改悪し、「戦争できる国」へと日本を変えようとする政治の暴走が始まっているこの時代に、みなさんと共に、新しい日本の歴史を築く大事業の一角を担えることを幸せに思います。ともに新しい教育の創造をめざし努力していきましょう。



 


平和と憲法を未来に引き継ぐ戦後70年に!

            京都教職員組合執行委員長 河口 隆洋
 

 戦後70年の節目に、安倍政権は、歴史の流れに逆らって新たな戦争の火種、新たな形での貧困増大の火種を掻き起そうとしています。安倍政権は、解釈改憲、違憲立法の制定、明文改憲という3つの手法で憲法破壊をすすめ、集団的自衛権の行使を可能にする法案を5月に国会に提案するとしています。

 教育の分野では、安倍「教育再生」は、憲法改悪と一体に戦争する国づくり、人づくりを進め、「世界で一番企業が活動しやすい国」の「人材育成」に奉仕する教育や学校づくりが企まれています。安倍政権下で軍事費が増加し続け、来年度予算では過去最高となる一方で、教育予算は先進国最低の水準にもかかわらず、予算を減らし、教職員定数は2年連続の純減と、子どもと教育にたいへん冷たい政治になっています。これらは、すべての子どもの人間的な成長と発達を願う圧倒的な父母、国民の願いに反するものであり、広範な国民各層と矛盾を必ず深めます。

 1985年の戦後40年に際して「荒れ野の40年」の演説を行った、当時の西ドイツの大統領で保守政治家だったヴァイツゼッカーは、自らの回想録の中で、次のように問いかけています。

 「…次の世紀に歩んでいくに当たって過去に目を開いておくことは、不可欠の条件です。/自らの歴史と向き合う用意がないと、今日自分がなぜこの場におかれているのかが理解できないでしょう。過去を否定すると、これを繰り返す危険を冒すことになります。」

 「日本の今世紀も苦難の歴史でした。この過去とどう向かい合うかは日本の人々にとっても重大な挑戦です。」

 戦争と平和の歴史にしっかり向き合って、人間の尊厳と平和の重みについて子どもたちとともに学び合い、考え合う教育実践を大いに広げていきましょう。安倍「教育再生」攻撃と対決し、子どもの声を聞き取り、子どもたちの困難を共感的に受けとめ、すべての子どもの成長と発達を保障する学校と教育の実現に向けて努力していくことを呼びかけます。

 教職員は誰でも、子どもたちが人間らしく幸せに生きていってほしいということを強く願っています。子どもたちが、戦争のない平和な社会の中で、個人として尊重されて学び、健やかに成長していくことがしっかりと保障されるように、時代と世界を見通す力、教育的な力量、仲間とつながる力を磨くことが教職員に求められています。

 今は、危険な動きと、政治・社会のいきづまりを民主的に打開する展望が背中合わせの状況です。戦後70年を新たな戦前とさせないために、また子どもたちに憲法と平和が輝く未来を引き継いでいくためにも、「教え子を再び戦場に送るな」の誓いを広げ、広範なみなさんと力を合わせて安倍政権のウソとごまかしを徹底的に明らかにして追い込み、憲法と平和を守り抜くことに全力を尽くします。


 
 「京都教育センター年報(27号)」の内容について、当ホームページに掲載されているものはその概要を編集したものであり、必ずしも年報の全文を正確に掲載しているものではありません。文責はセンター事務局にあります。詳しい内容につきましては、「京都教育センター年報(27号)」冊子をごらんください。

事務局   2014年度年報目次


              2015年3月発行
京都教育センター