事務局   2014年度年報目次

第45回京都教育センター教育研究集会 第8分科会
国語教育と子どもの人格形成

                西條 昭男(教科研究会・国語部会)

 

 今年度の京都教育センター教育研究集会「国語部会」分科会は、「国語教育と子どもの人格形成」をテーマに開催した。

 以下、報告された内容の概略を記し、感想も合わせて分科会報告とする。

<基調提案とレポートの概要>

□基調提案  「規範意識の徹底・伝え合う力」からの脱却と創造的な国語教育を今こそ
                          審良 光昭 (向日市小)


 学力向上という名で様々な取組が行われています。しかし、その内実はどうなのでしょう。教科の本質に沿ったものであることや、子ども達の発達に沿ったものになっているのでしょうか。一年生の子達が文字を覚え、読める・書けるようになった時にお手紙をよく書いてくれます。文字を使って伝える喜びにあふれています。しかし難しいことをさせられるうちに、思いが萎えてしまってはいないでしょうか。ことばの世界の中で思い描くこと、本当のことを見つめること、そして自分を表現すること、これらを喜びとできるような国語教育を語り合いたいと思います。様々な角度から、国語(ことばの教育として)の学習、授業、そして子どものとらえ方を、一緒に考えることができればと思います。

□報告@ 小学校低学年・作文教育 相模光弘(向日市小)
テーマ「先生、今日、『たぽんぽ』ある…?」
 〜書きたいことを、子どもに書かせてきて…


 小学2年生。子どもにとって、書くことの意味、成長へのつながりを考えながら実践してきました。その子が書きたいこと、書いてきたことを、担任はどう受けとめ、次に向けてどう返せばいいのか…。職場の仕事が忙しい中、子ども個々の日記を読み、一枚文集を出し続けることに、それなりに労力を割いてきました。やはりそれが、子どもの成長に大切だと考えてきたから。子どもの書くことが変わってきた…、学級の子どもどうしのつながりが変わってきた…と思えるところ、その過程を報告できたらと思います

□報告A 中学校 文学教育 駒形和洋 (京都市中)
テーマ「『故郷』の読みを通して考える友情のすがた」


 魯迅の自伝的小説である『故郷』は、中学3年の教科書に載せられています。この作品を通して魯迅が伝えたかった「希望」の中身を、「身分や境遇の違いを超えた友情は成り立つか?」というレポート作りを通して生徒一人ひとりにじっくり考えさせようとしました。評価と授業づくりの報告です。

□報告B 中学校 文学教育  荻野幸則 (東山中高)
 テーマ「小学校の文学教材を中学生が読む」


 多く、文学作品の感動は、ありきたりの学校値(知)に回収され、彼らの内部に生まれた感動は霧散してゆく。そこには作品のとらえ方の問題があり、ストーリーを追いかけることに終始する読み方の問題があると思っている。小学校で習った教材を「文学として読む」として授業化する。物語を授業で読んでも見えなかったものに気付かせることを目的としている。


<参加者の感想>

○小学校での作文教育の実践や、中学校での文学教育の取り組みを聞いて、今の国語教育のあり方や授業の組み立て方など、勉強になりました。2年生の作文の実践では、それぞれの子どもたちの様子がありありと伝わってくるようで楽しかったです。文集を読み合うことを続けていくことで少しずつ落ち着いてきて、子どもとの関わりが楽しいと言っておられたので、改めて作文教育の力を感じさせられました。小学校の教材を中学校で読むという取り組みも興味があったので、生徒がこんな反応をするのか、先生はこんな発問をしたのかと授業の様子がよくわかりよかったです。    (U)

○冒険的な実践レポートだったので、いろいろ意見や疑問が出されるかなあと予想していたのですが、やはり出されました。的確なご指摘が多かったので、ちゃんと読んでいただいたことを嬉しく思います。ご意見を参考にして、さらに修正改善を加えていこうと思いました。ありがとうございました。(K)

○今回初めて参加させていただいたのですが、様々な授業の実践方法が学べ、またその実践方法により、何を学ばせたいかを聞かせていただき、一つの教材でも様々なアプローチの仕方があることをあらためて知りました。実際の現場ではどのようなことが今行われているのかが知れてとてもよい経験ができました。こういう風に実践をして進めていけば生徒も楽しいだろうと思い、これから教師になって授業を行っていくうえで参考にしていきたいと思いました。(学生K)

○全体に亘ってよい議論を持てたと思います。小学校・相模さんの作文レポートは二人の生徒の内実がよく表れた作文だったと思います。「ゲーム」の話題云々は、いかにも生活作文の現代的課題だと思います。動物園に行ったり、大仏を見たり、といった生活経験と同列のものとして子どもたちの裡には「ゲーム」が存在しているようです。それを題材に書く子どもの問題もたしかにあると思いますが、それを熱心に読む子どもたちの方に私は注目します。中学校・駒形さんの『故郷』は申しあげたとおり、難しい教材です。議論の中にあったように、「友情」の問題として主題を抽 出することはさまざまな問題を含むことになります。レポーターがテーマとしたかったのは、おそらく「人間同士の対等性は保てるか」という問題のような気がしています。そうすると、個としての問題ではなく、この小説に於いては「近代前の社会・制度」と「近代の社会・制度」の問題が浮上してきます。 詳細まで書けませんが、以上感じたことです。(O)



 
 「京都教育センター年報(27号)」の内容について、当ホームページに掲載されているものはその概要を編集したものであり、必ずしも年報の全文を正確に掲載しているものではありません。文責はセンター事務局にあります。詳しい内容につきましては、「京都教育センター年報(27号)」冊子をごらんください。

事務局   2014年度年報目次


              2015年3月発行
京都教育センター