事務局   2014年度年報目次

第45回京都教育センター教育研究集会 第1分科会

「小中一貫校と学校統廃合を考える」

             我妻 秀範(地方教育行政研究会事務局)

 

1 はじめに

 現在、京都府内の各地域で児童生徒数の減少を口実とした学校統廃合が大規模に進行している。そこでは、単に統廃合を進めるだけでなく小中一貫校という新たな学校が設置されていることに注目する必要がある。しかし、小中一貫校については子どもの発達や学校規模についての十分な議論と実践的な研究がないままに導入され、様々な問題が起きていることが指摘されている。

 そこで本分科会は、京都府内の学校統廃合と小中一貫校の実態、その背景、教育的な問題を明らかにするために以下のような報告・討論を行った。以下はその概要である。

2 報告の要旨

(1)基調報告 「『特別な学校』を乱立させる小中一貫校・学校統廃合」
                              松岡寛(京教組教文部長)


・2014年7月、安倍内閣の「教育再生実行会議」第五次提言は12学級以上、18学級以下を「学 校規模の適正化」とし、これ以下の規模の学校の統廃合を求めている。この考えの根底には子どもの成長・発達よりも経済効率を優先する考え方がある。

・教育再生実行会議は、2014年7月に小中一貫の義務教育学校の法制化を提起したのに続い て12月22日、中教審が小中一貫校の設置を求める答申を出した(「子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構築について(中教審第178号)」)。 中教審は小中一貫校のメリットとして「中1ギャップの緩和」「(教職員の)指導方法改善への意欲」などをあげる一方で、「小学校高学年におけるリーダー性の育成が課題」という認識も示している。

・ここで重要なことは学年の区切りの弾力化の問題である。「4・3・2」制があげられている が、「9・10歳の節を全員が、同時に越えるわけではなく、子どもによってずれが生じる。その時期に次の段階に進むことは子どもたちの負担が大きいのではないか」(神戸大学の川 地亜弥子さんの指摘)という指摘に十分留意する必要がある。しかし、中教審の議論をみる限り学年の区切りを子どもの発達の観点からていねいに検証したとは言い難い。

・この間、全国では「小中」一貫校づくりと「中高」一貫校づくりが進められている。これによって公立学校の中に「小中一貫校」「中高一貫校」「普通の学校」が乱立・併存している。このことは「学校選択の自由」とあいまって実質的に義務教育段階に複線型の学校体系を持ち込むことにほかならず、教育の機会均等の原則を破壊し、公教育の平等性を根底から覆すものと言わなければならない。

(2)「京都市の小中一貫校と学校統廃合の減少と課題」  榎本知子(京都市教組)

・京都市内では1979年以降学校統廃合が推進され、かつて68校あった中学校は17校になっ た。東山区では2校の小中一貫校があるに過ぎない。京都市内の小中一貫校は「施設一体型」 4校、「施設分離型」2校に分けられる。学年の区切りでは「4・3・2制」4校、「5・4制」 2校となる。

・伏見区向島地域ではある小学校PTAから小中一貫検討の要望が出された。その後、同校PTA は京都市教委から小中一貫校について説明をうけたり東山開リ館の見学会などを実施した。 さらに向島地区の各PTAが臨時総会で推進決議をあげるとともに学区合同検討協議会が市教委に対して「平成31年度をめどに小中一貫校を」という内容の要望書を提出した。 

・これに対して地域では様々な学習会を開催するとともにビラの全戸配布などを行って問題点 を市民的に明らかにする取り組みを展開している。

・右京区京北地域ではPTA役員会で「小学校3校と中学校1校を統廃合し、小中一貫校を開 校する」問題が議論されている。これに対して地域では「がっこうと地域の未来を考える会」 などが小中一貫校問題の学習会を開催している。

(3)「東山泉小中学校の現状と課題」  人見吉晴(京都市:退職教員)

・東山泉小中学校は3小学校と1中学校を統廃合して今年4月に開校した「施設併用型5・4 制」の学校である。このため小学生は5年間を統合された小学校(旧一橋小学校の校舎を使用)で勉強し、6年生は小学校から15〜20分以上も離れた中学校(旧月輪中学校)の校舎で勉強(小学6年生の学習内容)することになる。このため6年生には小学校高学年として学校生活を送ることができない。「6年生を中学校で学ばせる施設併用型」の小中一貫 校は全国にも例がない特殊な実験である。なお、同校では中学1年生は7年生、3年生は9 年生と呼ばれる。

・6年生は日常的に下級生とともに学校生活を送る中でこそ最高学年の自覚が育ち、リーダー としての役割を果たす経験を積むことができ、成長していける。6年生が中学校校舎で学校 生活を過ごし、行事のときだけ小学校に出向いて最高学年として行動してもリーダーシップは育たない。

・また6年生は「教科担任制、50分授業、定期考査の実施、標準服の着用など中学校の学習形 態」をとるとしているが、小学生としての力が不十分なまま中学校の競争教育を受けることになれば小6ギャップとなる危険性がある。

・中学校では小学校の部活と中学校の部活が混在している。また放課後、6年生がグランドで 遊ぼうとしても中学校の部活のために遊ぶことができない。分離型を採用しているため教職員がいっそう多忙になっている。「小中一貫校はめんどくさい」という子どももいる。

(4)「小中一貫校問題と『子どもの発達の加速化』について〜西川信廣氏らの理論批判を中心に」                             藤本文朗(元滋賀大学)

・中教審などで小中一貫校を推進する中心的な役割を果たしてる研究者の一人が西川信廣氏  (現在、京都産業大学教授)である。西川氏は教育制度学を専門とする研究者で、近年、習熟度別指導や小中一貫校に関わって様々な著作を発表するとともに中央教育審議会初等中等教育部会専門員を勤めているが、心理学や発達心理学の専門家ではないことに留意する必要がある。

・西川氏は『習熟度指導・小中一貫校教育の理念と実践』(ナカニシヤ出版2006年)の中で  「子どもの身体的成長・精神的成長が昭和20年代と比較すると約2年早期化しているので、 従来の6・3制、および小学校での学級担任制が子どもの発達段階と合わなくなっているとする考え。前述した呉市二河中学校区では、昭和20年代の子どもと平成10年代の子どもとでは身体的、肉体的発達が約2年早いことを例に、さらにピアジェの発達理論を引用しながら6・3制ではなく、4(前期)・3(中期)・2(後期)制が現状に適していると考えて実践を進めている。この子どもの発達の加速化に対応できる義務教育学校にすることが二河中校区の重要な研究テーマであったのである」(下線部は報告者による)と記述している。では、本当に「子どもの発達が加速化している」のだろうか。

・最近の青年心理学の研究では確かに身体的には成長が早まっているが、精神面では生活体験の不足や忍耐力の低下が指摘されている。おおまかに言えば身体発達と精神発達のアンバランスが見られるということである。ワロンのいう発達保障という視点から教育を考えれば、小中一貫校や学年段階の区切りの変更などの教育制度いじりは教育のリストラを覆い隠すための議論である。子どもの発達に関わる議論と教育制度問題を混同させてはならない。

・そもそも発達とは何か。その発達を全面的に保障する教育や福祉とは何か。様々な研究を踏まえて言うならば、キーワードは「学ぶ意欲」「人格発達」「学力」「学校や地域での発達保障」になる。今、求められることはゆとりがなく選別されている子どもの生活時間や空間、集団を見直すことであり、不登校や引きこもりなど若者の発達の危機が広がっている中で、それを克服する方向を模索していくことである。学年段階の区切りの変更などの制度いじりをする前に各地域や各学校で取り組まれてきた様々な実践に学ぶことが重要である。また保護者の学校参加やPTAや町内の民主化も重要な課題である。

(5)「南丹市の小学校統廃合問題について」 船井・北桑田教職員組合

・南丹市教委は2011年6月、「学校教育環境整備等検討委員会」(委員長は原清治仏教大学教 授)を設置して学校統廃合について検討を始めた。市教委は2012年5月、同委員会の答申 (2012年2月提出)に基づき南丹私立小学校再編整備基本構想を発表した。内容は市内17小学校を7校に統廃合しようというものであった。その後、市教委は各小学校PTAを対象に説明会を実施したが、地域に対する説明は「職務外」ということで実施しなかった。この間、廃校になる予定の小学校区では「統廃合を考える会」が結成され、様々な取り組みが展開された。市教委主催の校区別説明会では賛成意見は賛成意見は極めて少数であった。

・南丹市の小学校統廃合問題は以下のような問題がある。@基本構想の発表(2012年5月)から市議会での基本構想議決(2013年6月)まで約1年であるなどあまりにも拙速な統廃合であること。A地域住民や保護者に対して丁寧な説明や話し合いがなされていないこと。B説明会では多くの反対意見や疑問が出されたが、教育委員会や議会はこれにきちんと答えようとしなかったこと。C今回の統廃合計画は各地域の実態や課題を無視した強引なものであること。D地域の文化センターとしての役割を140年にもわたって果たしてきた学校がなくなることは地域社会の存続にも関わる重大問題であること。D統廃合によって校区が広がり、片道30km、1時間弱の通学を強いられる子どもが出てくるが、そのことは何 ら考慮されてなかったことなどである。

・しかし、学校統廃合反対の取り組みの中で、@保守的な風土の中で各地で様々な住民運動が展開されたこと。A市議会では基本構想は可決されたものの8項目にわたる付帯決議がついたこと。B教育委員会の傍聴や市議会常任委員会の傍聴が可能になったこと。C統廃合問題を契機に各地の地域づくりの課題が明らかになり、校舎や跡地利用を含めて各地で様々な運動が展開されたことは貴重な成果であった。

・現在、校舎や体育館の改築問題やスクールバス運行の問題、廃校になる学校での閉校に向けた準備や統合校での受け入れ準備、教職員定数の確保など様々な課題がある。引き続き教育条件整備の取り組みを進めたい。

3 討論の概要

 以下は、それぞれの報告に関わっての質疑応答と総括討論の内容を整理したもので、必ずしも発言順ではないことにご留意いただきたい。

(1)学校規模・学校統廃合について

・小規模校は切磋琢磨ができないからダメという議論は根拠がない。また、小規模校という表現は性格ではない。適正規模という表現が妥当である。

・千葉大学の三輪定宣氏は1学級20人以下、全校で200人以下、子どもが歩いて通える学校 が適正規模と言っている。小規模でこそ手の届く教育ができる。

・「適正規模」でこそ子どもの学力は伸びるという主張がある中で、ある地教委幹部は「小規 模校のほうが学力が高い」という主旨の発言をした。学校規模についての実践的な研究が必要である。

・お互いが知り合える規模の学校こそが重要。小規模校であるからこそ育つ学力や能力がある。12学級以上18学級以下が「適正な学校規模」という文科省の考え方を批判していく必要がある。そのためにも学校統廃合や小中一貫校問題での全国的な交流が必要である。

・北部のある地域では学校存続の要求が小中一貫校にすり替えられた。廃校となった地域の子どもは9年間スクールバス通学をしなければならず、地域住民との日常的なふれあいの機会が減ったり体力の低下が懸念される。

(2)小中一貫校の「実態」に関わって

・京都市内の小中一貫校では「施設一体型」「施設併用型」ともに小学生の遊び場がない。小中一貫と言いながら小中の教員間の連携がない。また統合校ではその対応で手がいっぱいという状況である。

・小中一貫校では学習意欲が高まりいじめや不登校が減少すると宣伝されているが果たしてどうか。現実には間違いなく教職員の多忙化が進行している。

・小中一貫校では中1ギャップの克服をめざすとしているが、現実には小6ギャップがおきている。中学校の校舎で勉強している小学6年生は放課後グランドで遊べない。また6年生は中学校の運動会に参加するがリレーでは6年生としての存在感がない状況である。

・東山泉小中学校では6年生は中学校の一部となっているが、現実には6年生が制服を着て赤白帽をかぶっているというちぐはぐなことが起きている。外向けには小中一貫で5・4制を採用していると言っているが、中身は6・3制である。

・小中一貫校で建物は良くなるが教職員の多忙化を促進している。これではいい教育ができない。

・ある小中一貫校では「4・3・2制」を採用しているが、ここでも実質は「6・3制」。小学校 段階の「4・3」の区別も始業式や終業式などの式や会議だけ。小中教員合同の部会も中身がない。形だけの小中一貫で、教職員の多忙化が進行している。

・御所南小学校など小中一貫校の学力テストの成績が上がったということが中教審の議論の根拠になっているが、小中一貫校の成績が高いとは一概には言えない。小中一貫校の市教委のモデルは東山開リ館である。

(3)小中一貫校問題の本質は何か

・小中一貫校は教育の合理化の手段である。学校統廃合のテコとして小中一貫校が利用されている。

・義務教育段階では学年の区切りが「6・3制」、「4・3・2制」、「5・4制」が乱立している。また「施設一体型」と「施設分離型(併用型)」もあるが、それらは成果や問題が十分に検証されていない。

・小中一貫校のねらいは学校統廃合による教育予算の削減にあり、それに子どもの発達論(子どもの発達の加速化)と制度論(学年段階の区切りの変更)を組み合わせたものである。それは必然的に「複線型学校体系」の導入に行き着かざるを得ない。

・小中一貫校に賛成か反対かという議論の仕方でいいのか。諸外国では9年制の学校や10年制の学校もある。日本では小学校では9歳・10歳の壁が大きな課題であり、中学校では思春期教育が取り組まれ、多くの実践上の蓄積があることに十分留意する必要がある。その上にたっての議論が必要である。

・「4・3」制という学年段階の区分について。「9・10歳の節」は発達心理学の課題であるが、それと(学年段階の区分というと)教育制度論の混乱がある。発達論と制度論を混同してはならない。

・「発達の節がある」、だから「学年段階を区分する」という議論にはならない。むしろ問題なのは15歳の壁ではないか。次の学校段階にどう接続するのかが課題である。

・子どもの発達についての議論が教育制度論にすり替わっていることが問題である。子どもを実験台にしてはならない。

・「4・3・2」制がいいのか、「5・4」制がいいのかわからないのに形だけの小中一貫が進んでいるのはだけ問題である。今進行していることは、手術中にその目的や方法を検討するようなもの。やってはならない実験である。

・小中一貫校に賛成か反対かという問題設定ではなく「発達の節」「思春期」をどうみるのか、どうするのかという問題との関係で検討していく必要がある。

(4)学校統廃合や小中一貫校問題にどう取り組むか

・京都市教委は学校統廃合を進めるために立派な校舎を建設して学校の見栄えを良くする一方で地域の有力者層を取り込んでいる。学校統廃合や小中一貫校問題を取り組むに当たっては地域の学校に愛着をもつ保守層との連携が重要である。

・学校統廃合に対してPTAだけが取り組んでもダメ。地域をあげて統廃合反対の世論を形成する必要がある。

・小中一貫校の動きは国レベルの動きでもある。地域だけでは闘えない。

・「学力を伸ばす」という枠内の論議ではなく国民主権の担い手を育てる「民主的人格の形成」 という視点での議論が必要ではないか。

4 まとめ

 以上が分科会の報告・討論の概要である。最後に分科会のまとめとして我妻が以下の4点を指摘して討論を終えた。

 第一は、学校の適正規模に関する議論に関わって。文科省は「12学級以上、18学級以下」を適正規模としているがこれは財政効率優先の考え方に基づくものである。小規模校では子どもが伸びないという議論には根拠がない。小規模校でこそ子どもたちは行き届いた教育を受けることができる。こうした実践を積み重ねながら文科省の適正規模論を実践的に批判していく必要がある。同様に競争したら学力は伸びる、という議論も子どもたちが身につけるべき能力との関係で具体的に批判していく必要がある。

 第二に、子どもたちの成長発達をどう見るかという問題である。前述のように「子どもたちの身体的な成長は早まっているが、精神面では生活体験の不足や忍耐力の低下が指摘されている」「(子どもたちの成長を理由に「4・3・2」制を導入することについて)9・10歳の節を全員が同時に越えるわけではなく、子どもによってずれが生じる。その時期に次の段階に進むことは子どもたちの負担が大きいのではないか」という指摘は極めて重要である。子どもの発達に関する議論と学年段階の区切りの弾力化などの教育制度に関する議論を混同させてはならないという指摘に十分留意しながら、批判検討をしていく必要がある。

 第三に、小中一貫校が中高一貫校の選択的導入とあいまって義務教育段階に複線型学校体系を持ち込むことになる。これは教育の機会均等と平等性を根本から否定し、教育に階層化を持ち込むことになりかねない。教育制度の根幹に関わる問題としてしっかりおさえる必要がある。

 第四に、学校と地域の関係についてである。学校統廃合は地域から学校がなくなるだけでなく、地域そのものを衰退させることになりかねない。地域の文化センターとしての学校、子どもたちと地域住民のふれあい、将来の振興・発展という課題とあわせて学校が地域にあることの意味をもう一度考えていくことが重要である。

 今回の分科会討論では学校統廃合や小中一貫校の実態が具体的に紹介され、それぞれ討論を深め問題点を明らかにすることができたが、そうした学校に通学する子どもたちや保護者の意見が集約されればもっと議論を深めることができたと思われる。今後の課題として指摘しておきたい。

5 補足資料

 なお、研究集会後、以下のような新聞報道があった。参考資料として添付する。
(1)「小中一貫校」導入しやすく 新しい国の制度に位置づけ(「朝日」2014年12月23日) 
 「9年間を共通したカリキュラムで学ぶ「小中一貫校」が、新しい国の学校制度として位置づけられることが決まった。中央教育審議会が22日、答申したもので、今後、市町村などの教育委員会が、一貫教育を導入しやすくなるという。
 小中一貫校は、中学校で不登校などが激増する「中1ギャップ」解消などのために市町村教委が15年ほど前から始め、現在は全国に1130校ある。ただ、制度上は別々の小中学校のため、制約もあった。例えば、学ぶ内容を小中間で入れ替えたり、英語などの小中共通の教科をつくったりするには、国から特例校や研究校に指定されなければならなかった。
 答申では、2種類の小中一貫校をつくることとした。校長が1人で、同じ施設内に置くのが基本の「小中一貫教育学校(仮称)」と、施設や校長を原則別々にする「小中一貫型小・中学校(仮称)」。導入しない選択肢も含め、各教委が実情に応じて判断する…以下省略。」 │ 
(2)小中学校統廃合:1学年1学級以下は検討を…文科省手引案(「毎日」2015年1月19日)  
 「文部科学省は19日、公立小中学校の適正規模・配置の基準や考え方を示した手引案を公表した。統廃合の検討の根拠となるもので、少子化で今後増えるとみられる小規模校のデメリットを解消する目的で約60年ぶりに内容を見直した。全校で6学級以下(1学年1学級以下)の小学校は、自治体に対し統廃合の適否の早急な検討を促し、通学時間は「1時間以内」を目安とした。一方で廃校が地域衰退に直結する恐れもあるため、存続させる場合の対応策として、他校との合同授業などを示した。近く全国の自治体に通知する。
 公立小中学校は、1956年の中央教育審議会答申を受け、58年に国が省令などで、学級数については小学校では各学年でクラス替えができ、中学校では全教科で教科担任を配置できる「12〜18学級」、通学距離は小学校4キロ以内、中学校6キロ以内を基準とした。今回の手引ではこの基準は維持しつつ、統廃合に伴うバス通学も想定。新たに通学時間の目安として「おおむね1時間以内」を示し、現状よりも遠くの学校との統合を可能にした。
 中でも、6学級以下の小学校、3学級以下の中学校は教育上の課題があるとして「統廃合などの速やかな検討」を求めた。小規模校の課題として、授業で児童生徒から多様な発言を引き出しにくい▽部活動や集団行事が限定される▽教員同士の指導技術の伝達がしにくい--などを挙げた。
 一方、離島や山間部では近隣の学校間の距離が遠く統廃合は困難▽地域の核として学校存続を望む住民が多い--などの理由で存続を決めた場合は、近隣校同士の合同授業などで課題を解消するよう求めた。
 現在、少子化で公立小中学校約3万校の半数が標準の12 学級を下回る。文科省が昨年5月、全市区町村教委を対象にした調査では「(教委管内の学校は)おおむね適正規模」としたのは17%。44%が「(小規模校としての)課題はあるが現時点で検討の予定はない」と回答した。小規模校の課題は認識しつつも対策はしていない実態が浮かんだ。国に望む支援(複数回答)は教職員の加配と施設整備補助がそれぞれ7割、「統廃合の適否を検討する参考資料」も44%が挙げた。
 文科省は来年度予算案で、統廃合支援策として教員の加配や、統合で教員や児童生徒が増えた場合の学校改修費補助率のかさ上げを盛り込んだ。存続の場合の対応策としては、ITC(情報通信技術)機器を使った他校との合同授業の推進などの実証事業を予算化した。同省は「自治体が小規模校対策を検討するきっかけにしてほしい」と話している。…以下略」 


 
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              2015年3月発行
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