事務局   2011年度年報もくじ

生活指導研究会

《2011年度活動のまとめ》
                        築山 崇(生活指導研究会事務局)

   

2011年度の経過報告


1.活動の柱

 1.生活指導の目的・理念をめぐって

・子どもの実態の正確な把握・分析と子ども観・指導観の探求
・今日の社会・経済状況のもとでの集団づくり・自治活動の在り方
・キャリア教育の動向に関連して、生徒指導における「社会的適応」概念、発達保障の観点からの検討など

 2.歴史に学ぶ

・生指研30年の歩みの総括   
・京都教研生指分科会の30年の蓄積に学ぶ

 3.研究例会(原則奇数月 土曜日 午後2〜5時、各会テーマはあらかじめ設定)

2.研究例会等の経過

3月12日(土):中学校における集団づくり・自治活動の検討
        (綾部中学校からの報告)

5月14日(土):高校における多様な生徒の学力保障・生活指導をめぐって
 横内報告  (学年途中からの担任交代等局面における困難を打開し、生徒との関係をつくり、学びを取り戻す実践の報告)

 報告では、生徒との関係づくりの初期の対応における様々な工夫・配慮が参加者を集めた。「自分で確かめたこと以外、頭に入れない」「高飛車に出ない」「教師づらしない」「生徒に考えさせる。教師からの働きかけのどこかに、子どもに考えさせる要素を挿入する」「生徒の言動・行動を、決して否定しない」「介入的な指導をしない」といった実践のポイントや「集団解体・切り離し、つまり、限られたメンバーに接近する」、あるいは「学習にシフトさせる集団解体」といった方法の有効性が確認された。

 他に、学習への意識づけの工夫、評価、保護者への通信での工夫(表彰などプラス要素のみを伝える、頑張っている様子のみを伝えるなど)なども示唆的な内容であった。

 報告全体として、「子ども(生徒)が変わる」という厚い信頼感が印象的であった。また、実践に見られる生徒たちの変化は、4週間という短期間に達成されたもので、注目される。週ごとに、働きかけの重点を決めておく、情報収取を徹底する、学習の雰囲気をつくるといったことがカギになっているなどの感想もあった。

 「どろどろの人間関係のなかに入り込んでも、関係修復は無理。学習への切り替えが大事」という報告者自身のコメントも教訓的であった。

 さらに、報告者自身による評価として、教師による、“引き回し”になっていないか、生徒にとっては、若い、“かっこいい”教師はあこがれの対象になり、ついていく。しかし、強いものにあこがれるだけになって、生徒の自立を引き出せないということもあるのではないか。生徒たちの中には、“閉ざされ感”がある。人間関係のひずみが、学習放棄という崩れにつながる。単なる頑張れでは、学習できない実態があるといった提起もあった。

 別の高校の参加者からは、授業料の無償化によって、これまで来ていなかった層が来ている。問題の多い生徒に手をかけていると、他の生徒に手がまわらない。どこに焦点化するかが難しい(生徒・親とも)。他律的になっていて、管理的指導を好む生徒も目立つといった報告があった。

7月9日(土):歴史に学ぶ(1)

1.京都における民主的生活指導実践の歴史的総括作業 その1
  @京都教研生活指導分科会のレポート概要
  A京都教研生活指導分科会1988年度、‘89年度レポートについて
  *資料:全国教研レポートにみる88年度分科会の概要(津田)
    ‘88年度分科会の内容についての覚書(築山)より
  B今後の「歴史的総括」作業の進め方について

2.京都府生活指導研究協議会2011年度大会基調提案の学習・討論(細田)
     基調提案タイトル:「『規範意識』の徹底」路線と対抗し、子どもの真の自立や連帯を育てる学校を創ろう.

9月17日(土):歴史に学ぶ(2)

1.京都教研生活指導分科会 「ミニパンフ」の内容について
  ・今日の子どもの生活における困難と教育実践の焦点
  ・子どもの貧困:暮らしの質(暮らしの中における、関係の質)

・生活指導とは?
  ・私たちが目指す、生活指導実践
  ・いま、小学校、中学校、高等学校で大事にしたい生活指導の鍵
  ・生活指導を学ぶ教師の成長
  ・「生徒指導」のいま:組織化(テキストとしての『提要』)の動向。
   :学習指導要領上の位置づけ(ガイダンス機能の重視、キャリア教育の視点)

2.センター公開研究会 生活指導研究会の企画について

10月8日(土)
 1.9月例会に引き続き、11月公開研究会の企画について協議。

 2.「ミニパンフ」について、継続協議。

11月27日(日):公開研究会(今日の社会状況のもとで求められる生活指導実践の探求)

テーマ 高校生に明日につながる学習をとりもどす

報告: 高校生の学習:朱雀高校 中井秀樹先生

 朱雀高校で1990年から取り組まれている生徒の意識調査の結果ををもとに、次のような項目で詳細な報告があった。
 1.意識調査からわかること(学力問題専門部会の分析、学習に向き合わない生徒の実態)
 2.授業への取り組み方 
 3.低学力生徒にとって「学習に取り組む」とは 
 4.高学力生徒は 受験、低学力生徒は単位取得のための学習 
 5.高学力生徒の理解度の低さに愕然 
 6.「生徒の学習」の悪循環(実体を伴わない語句の暗記の積み重ね→面白くない・記憶に残らない) 
 7.低学力生徒の実態(プリント・ノートを移すだけ、試験前に丸暗記、追試があるから大丈夫など) 
 8.自分の頭で考え、実生活とつながる学習、体系的学習を取り戻すために(自分のこととしてわかること、視聴覚教材・実物の活用、到達目標の明確化、評価方法の研究、協同的な学び)

関連報告:小中学校の子どもの実態:京生研から、細田(小学校) 谷尻(中学校)

 小学校での実態として、「1年生の時から授業中の立ち歩き、教師への反抗・暴言・教室や学校からのエスケープ・トイレへのたてこもり・同級生への暴力と激しく荒れていた」子どもに、居場所を教室の中につくっていくことを基本に取り組んだ事例が報告された。

 中学校での実態としては、「粗暴・切れる子の指導」と題して、小学校時に全クラスが「学級崩壊」状況にあった生徒たちに取り組んだ3年間の実践が、厳しい養育環境を背景とした発達障害や、学年の指導体制の困難から生まれる教師不信などの問題にも触れながら、報告された。

 この二つの報告からは、格差や新たな貧困の実態が顕在化しつつある今日の社会情勢のもとで、引き続き困難な状況にある指導の実態があらためて浮き彫りになった。

12月25日(日):教育センター研究集会 生活指導・発達問題分科会

分科会テーマ:子どもを取り巻く大人社会のネットワークと子どもの発達
            (内容は、「分科会まとめ」の項を参照)

1月21日(土):センター研究集会総括を含め年間の振り返りと次年度計画議論


3.成果・到達点と課題

@当初の計画通り、隔月の研究例会の開催を、公開研究会も含めて持つことができた。
A生活指導研究会、京都教研生活指導分科会における歴史的蓄積に学ぶ取り組みに着手することができた。1980年代初頭から30年間の報告・テーマ等の一覧資料が作成され、一次的な討議を9月例会で行うことができ、初期のレポートをめぐる議論もできたが、引き続く研究はまだできていない。
B民教総会で提起された、教研分科会のミニパンフ作りは、およその構成をつくるところまでできたが、その後の具体的な内容づくりが未着手となっている。
C公開研究会では、生活指導と学力保障の双方を視野に入れた議論ができたが、小中学校における「荒れ」の今日的状況の分析とあわせて、更に深めていく必要がある。
Dセンター研究集会分科会では、学校と教育や福祉の関係諸機関、地域と学校の連携がテーマに設定され、スクールソーシャルワークという新たな切り口での報告・議論など貴重な成果が得られた。
E上記のように、重要なテーマでそれぞれの例会が持たれ、成果も見られるが、例会内容のまとめと会員への再提起、研究作業の継続などが十分行えていない。

2012年度の計画


1.活動の柱
 上記のような到達点にたって、前年度の柱を引き継ぎ、教育と福祉にまたがる問題などをあわせて研究活動に取り組む。

 *上半期の研究例会
 3月17日(「荒れ」の実態をめぐって)、5月19日、7月14日、9月中下旬

2.研究例会の持ち方
 ・年間計画と、各例会のテーマをあらかじめ設定して、計画的に取り組む。
 ・テーマごとに担当者を設定して、作業の進展を図るなどの工夫を図る。

3.研究会の体制
 *代表・事務局:築山 崇(2012年3月例会で分担・変更などを検討予定)
 *会員:下記の現会員に加えて、11年度例会への参加者など、拡大を図る。
 *広報・例会への呼びかけなどに努める。

会員(2011年度からの継続分)

 浅井 定雄、石田 暁、大平 勲、恩庄 澄夫、春日井 敏之、北村 彰、倉本 頼一、高垣 忠一郎、谷田 健治、玉井 陽一、築山 崇、 西浦 秀通、野中 一也、細田 俊史、横内 廣夫



 「京都教育センター年報(24号)」の内容について、当ホームページに掲載されているものはその概要を編集したものであり、必ずしも年報の全文を正確に掲載しているものではありません。文責はセンター事務局にあります。詳しい内容につきましては、「京都教育センター年報(24号)」冊子をごらんください。

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              2012年3月
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