事務局   2011年度年報もくじ

京都民間教育研究団体連絡協議会(京都民教連)

《2011年度活動のまとめ》
                  京都民教連事務局  審良 光昭

 

 今年度は、3.11東北大震災により、日本の価値観が大きく変わった一年であった。その一つは私達の多くが、震災そのものに対して過去の経験に学ぶ姿勢を忘れてしまっていたことである。もう一つは、原子力発電という大きな災いをいかに日本の政府やマスコミが無責任に擁護し、無責任な安心情報を流してきていたのかということである。事故に対して現実には対応できないことを未だに明らかにせず、電力不足不安をあおることで原子力発電所の再稼働に向かおうとしているのである。そうした中で、市民団体や組合などが中心になり、原子力発電所の問題点や震災以後の現地の様子から学ぶ会が京都各地で行われた。京都市のサ連協は教職員組合と共に、サークルの講座とともに原子力発電の問題点についての学習会を持つことができた。

 今年は、来年度から使われる中学校教科書が採択される年でもあった。その中で、検定済みの歴史教科書の中に、事実を誤って記載したり歴史認識を歪めたりする内容の記述がある教科書会社が、行政に対して採択を求める請願を出す動きもあった。この教科書が採択されることは教育を歪め大変危険であるということで、教科書ネットを中心に集会や採択に対して慎重な論議を求める活動が行われ、その会社の教科書採択は許さなかった。

 今年度の様々な取り組みの中で、教科書の採択の問題とともに、教科書の記述内容の問題も見えてきている。歴史教育の視点の問題や原子力発電の記述の問題とともに、他の教科でも教科書についてさらに詳しく見ていくことは子ども達に教える内容の問題となり、各サークルがそれぞれの教科書の内容をきちんと吟味し、それを交流する必要が出てきている。

 学校が人材育成の場と呼ばれるようになる中で、主体的に生きる子ども達が育つ場としての学校をどのように創っていくのかは、サークルの中でさらに活発に議論する必要があり、それを交流する場としての民教連の位置が一層明確になって来ていると考える。

 
 
◇ 第49回 近畿東海教育サークル合同研究集会
 
 
 今年の近畿東海サークル合同研究集会は2011年8月27日(土)から28日(日)に奈良教育大学付属小学校で行われ、200人を上回ることを目標に取り組まれたが、予想を大きく上回る384人の参加を得て成功に終わった。奈良では人がたくさん集まる集会は持てないといわれる中、例年の近畿東海の集会とは違った「まるごと研究会」の講座形式で、その講座の講師に学ぶという形になった。事前の論議の中で、サークルの議論の場が近畿東海の集会では大切にされてきたという意見があり、初日には2時間の分科会ももたれた。総括の中では、参加人数の増加を喜ぶ声とともに、講座がメインになることでサークルの主体性をどのように作り上げるのかということが課題として挙げられた。20
12年は秋に三重で行われる。

 
 
◇ 民教連通信・サークル案内
 
 
 現在、民教連ニュースは約240部を団体・個人に郵送している。大型の機関誌にはできない「ニュース性」を大切にしながら、講演記録や実践報告、サークルの大会案内などを掲載し発行してきた。またサークル案内では、各サークルの活動予定を毎月各職場に配布している。今後、京都府下各地域から、また多くのサークルからの情報や実践を掲載していきたい。

 
 
◇ 京都民教連集会
 
 
 2011年度の京都民教連の集会は、「じゅうじつの学年末をむかえよう」をテーマに、2012年の1月14(土)に京都教育文化センターで行った。全体講演は、川地亜弥子さん(大阪電気通信大学)にお願いし、「学童期の発達・生活・表現…子どもの声を聞く…」と題してお話いただいた。学童期の発達の特徴とともに、その時期の子ども達が綴ること(作文に書くこと)をどうとらえるか、その表現の意味についても作品をもとに具体的に話していただいたのは好評だった。「子どもの姿を通すことで、その時期の子ども達の姿がより明確に見えてきた」といった感想も寄せていただいた。その後、4つの分科会が持たれた。「心にのこる文学の授業」では、京都はぐるま研究会の鶴尾和広さんが「もちもちの木」を中心に、形象をどうとらえるかという課題意識とともに子ども達のまとめ(感想)を紹介された。また西條昭男さん(京都教育センター)からは、様々な学年の教材を通して、文学作品を読むことの楽しさが語られた。「自分をみつめ友だちを見つめる図工」では、吉澤はつ江さんや〈美術サークルアークル〉の方から、子ども達の作品のとらえ方から子どもそのものをどう見ていくかについて語られた。「足と健康を考える講座」では、健康教育サークル〈ひとみ〉の例会として取り組まれ、日本教育シューズの方から足のトラブルと靴の関係の話を聞き、実際に参加者が自分の足を測定し、自分に合う靴、子どもに合う靴について考える機会が持たれた。「もっともりあがるお楽しみ会」では、細田俊史さん(京生研)から学年のまとめにふさわしいお楽しみ会のアイディアやそこで育てたい子ども達の姿が語られ、星野由美さん(つづり方の会)も、その学級実践から子ども達の様子を交えて楽しんでいる様子が報告された。

 
 
◇ 2012年度の活動について
 
 
 教育基本法の改定をもとに指導要領が変えられ、更にそのもとで作られた教科書が小学校で使われるようになった。各教科書とも、事前に考えられていた課題とともに実際に使う中で見えてきた問題点もたくさんある。そうした問題点を各教科から出し合う中で、今の教育政策の問題点や私達の大切にしてきた教育の課題が更に明らかになるのではないかと考える。そのためには教科ごとの研究だけでなく、サークルでの研究・学習の中から見えてきた問題点は教科を超えて確かめる事が大切である。京都民教連では、教科書から見える教育の課題や、学校・子どもの様子など、サークルの研究を持ちより考えあう場を持つ必要があると考えている。
 

 「京都教育センター年報(24号)」の内容について、当ホームページに掲載されているものはその概要を編集したものであり、必ずしも年報の全文を正確に掲載しているものではありません。文責はセンター事務局にあります。詳しい内容につきましては、「京都教育センター年報(24号)」冊子をごらんください。

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              2012年3月
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