事務局   2011年度年報もくじ

第42回 京都教育センター研究集会 第二部 教育センターと各研究会の活動

《教科書採択のとりくみ》
歴史の事実を歪める自由社版・育鵬社版教科書の採択に反対するアピール

*この講演記録は、京都教育センター事務局の責任で編集し、見出しは編集者がつけました。
 

 今年は、中学校教科書の採択の年です。2012年度から使用される中学校の教科書で、新教育基本法のもとで改訂された学習指導要領にもとづいたものです。
 教科書は、学校教育において大変重要な教材です。その内容は、日本国憲法の立法の精神に即して、次代を担う主権者を育成するものとなっていなければなりません。また教育は、人格の完成をめざし、真理と平和を希求する人間の育成を期するためにおこなわれるものです。
ところが、文部科学省の検定でも多数の意見が出されている自由社版教科書と育鵬社版教科書を採択させようと、「新しい教科書をつくる会」の関係者が、動きを強めています。いま各地で教科書が展示され、意見書が集約されつつあります。この意見書を参考に教科書選定委員会で議論され、京都市においては、7月中・下旬の教科書委員会で採択される予定になっています。他の市町村でも8月上旬には採択の予定です。京都市ではこれまで3か所に分かれていたものが1か所採択に変更されています。京都府市民・教職員の意見を尊重し、公正な採択がおこなわれることが重要です。

「新しい歴史教科書をつくる会」主導で作成された「新しい歴史教科書」及び「新しい公民教科書」(自由社発行)と「新しい歴史教科書をつくる会」が分裂して結成された「日本教育再生機構」主導で作成された「新しい日本の歴史」及び「新しいみんなの公民」(育鵬社発行)は、文科省検定で他社とくらべて非常に多くの検定意見が付けられ、修正が行われました。この中には明らかな歴史的事実の誤りも含まれています。また、日本の歴史を天皇や国家を中心に描かれており、日本の過去の戦争行為を意識的に正当化する考え方も教科書全体に通底しています。公民教科書においても、個人の基本的人権よりも義務を強調し、平和主義の原則より、自衛隊容認の記述さえ出てきています。日本国憲法の基本原理である国民主権、基本的人権の尊重、平和主義のいずれについても、その記述内容は、不正確で不十分な内容と言わざるを得ません。

京都教育センターは、結成時より一貫して日本国憲法の精神に則り、教育研究と教育運動を進めてきました。また「京都 子どもと教科書を考える連絡会」に結集し、子どもたちが歴史を正しく学び成長するよう取り組みを強めてまいりました。その立場から、歴史の事実を歪め、平和や基本的人権を尊重する日本国憲法を軽視する新自由社版・育鵬社版教科書が採択され、未来を担う子どもたちに渡ることに反対します。

    2011年7月6日    京都教育センター 代表 野中一也 
 
京都教育センター教科書採択に関わるアピール賛同者  (順不同、敬称略)
                                        67名 (7/15時点)
 

・須田 稔(立命館大学名誉教授):日本国憲法の理念、原則に基づく教育、そのための教科書でなければなりません。
・重本直利(龍谷大学経営学部教授):過去の歴史的事実を歪めることは、現在、未来とも歪めることになる。
・藤岡 惇(立命館大学教授):国際社会に生きる未来の世代に対して、非常識な教科書の押し付けには反対です。
・高垣忠一郎(立命館大学教授):短期間の間によくこれだけの準備をしてくださいました。
・大同啓吾(国民融合・京都府会議事務局長):歴史の事実を歪め、今日まで社会が到達してきた段階を、ことさら歪めようとする動向に対しては、許すことはできません。
・上中良子(京都橘大学教授): “いつか来た道”に続かせてはいけない。
・高橋明裕(京都教育センター)
・松尾隆司(元京教組障害児教育部部長):なんとしても原子力発電からの撤退を実現しなければ・・・日本と世界の未来がかかっています。
・小野英喜(立命館大学非常勤講師)
・勝見哲万(前親と子の教育センター相談員)
・安達忠志(福知山教育センター代表・福知山子どもと教育を考えるネットワーク会長): 正しい歴史認識による教科書が採択されることを強く求めます。「自由社」と「育鵬社」の教科書採択は絶対されないことを強く要求します。
・中西 潔(立命館大学非常勤講師): 歴史の事実を歪めるような教科書を子どもたちに絶対に手渡してはならない
・今滝憲雄(武庫川女子大学非常勤講師):歴史の教訓をどう学び未来へ活かすか、その積極的提言も含めて日本の平和運動から多くのものを学習したいです。
・荒木 巌(京都教育センター共同研究者)
・新見俊昌(大阪保育研究所)
・築山 崇(京都教育センター研究委員長)
・倉本頼一(京都橘大学・立命館大学非常勤講師)
・黒田達也(大阪府立大学工業高等専門学校教授)
・臼井照代 (京都教育センター元事務局)
・工藤吉郎(京都音楽教育の会):君が代強制とも呼応しながらのこども不在の教育への介入。先生も先生になれない。大きな大きな声にしましょう。
・藤井進(年金者組合右京支部長):再び子どもたちの未来を暗雲で閉じ、平和な世界を破壊するような教科書採択を絶対許してはなりません。
・伊藤堅二(立命館大学名誉教授)
・小田切明徳(山宣会顧問)
・林敬子(教育相談員):教育委員各氏への良識に訴える要望と励ましの行動も取り組んだらどうでしょうか。
・石井内海(地域と教育の会副代表)
・中川益夫(香川大学名誉教授):未来を担う若者にとって教科書の内容は大変重要です。歴史を逆転させないためにも運動を強め拡げていきたいと思っています。
・鰺坂 真(関西大学名誉教授)
・浅尾紘也(京都教育センター共同研究者)
・新庄佑三:好きでもない歌を歌えって、好きでなくてもオレを愛すると言えというのと違うのか。これは橋下知事に言いたいことですが、教科書問題も似ていますね。
・畦地享平(部落問題研究所理事):アピールに全面的に賛成です。
・小寺隆幸(京都橘大学教授):子どもたちにこのような異常な歴史観を押し付けることを許してはなりません。教育委員会は教育への不当な介入をやめ現場の先生方の判断にゆだねるべきです。
・梅田 修(滋賀大学教授)
・川村善之(京都芸術大学名誉教授)
・温井徹念(元府立高校教員);以前からの「新しい歴史教科書をつくる会」の流れの動きが、今回は今までより臆面もなく声高になっているように思います。
・片方信也(日本福祉大学教授)
・中島晃(弁護士):重要な問題ですので、アピールの取り組みが成功することを願っています。
・石田智巳(立命館大学准教授)
・倉持祐二(京都橘大学教員)
・吉田 真(立命館大学名誉教授)
・藤本文朗(滋賀大学名誉教授):民主党になってよけいに教育が悪くなる。官僚がこぞって財界とつるんでいる。
・青笹哲夫(元教員)
・山崎雄介(群馬大学大学院教授):原発事故などにより国際社会の目が厳しくなっている中で、この種の排外主義的教科書を採択することは、「国益」の観点からも得策でないと考えます。
・磯崎三郎(立命館大学教員):戦前の侵略戦争や国家体制を美化し、戦後の民主的教育の蓄積に挑戦するような教科書を中学校現場で使用し、生徒の手に渡ることは絶対に許せません。
・池添廣志:歴史学習は科学に立脚した事実に基づき行われるべきであって、事実を歪めるだけでなく一定の歴史観を注入しようとする教科書には大反対です。
・上村栄一(元府立高校校長)
・上掛利博(京都府立大学教授)
・高桑正樹(大学非常勤講師)
・姫野美佐子(子どもの発達と地域研究会):こんな教科書を通してしまったら、恥ずかしくて海外の友人にも顔を向けられません。
・野中一也(京都教育センター代表)
・西條昭男(京都退職教職員の会)
・大平 勲(京都教育センター事務局長):アジア諸国との友好と連帯に水を差すような教科書を採択することは国際的な恥さらしだ。
・石澤雅雄:展示会で問題の教科書を見ました。本当にひどい内容だと思いました。このような教科書を許すことは日本国民の一人として恥ずかしいことです。
・本田久美子(京都教育センター事務局):真理を探究する子どもたちを育てるためには歴史を歪める教科書は有害です。
・倉原悠一(京都教育センター)
・中須賀ツギ子(京都教育センター)
・渕田悌二:教科書採択権は、教科書を使用する教師(子ども・保護者)にこそあるべきだ。
・植田健男(名古屋大学大学院教授)
・生源寺孝浩(京都橘大学教授):戦争への道を進もうとする人々はどこの国であっても“うそ”と“ごまかし”をします。この教科書に“うそ”と“ごまかし”があるのは戦争への準備です。
・黒田学(立命館大学准教授):このような教科書が採択されてはなりません。そもそもこんな教科書で何を教えよと言うのでしょうか?科学的に検証されていない内容が記載してあり教科書としてのレベルに達していません。
・水川隆夫(元京都女子大学教授):自由社版・育鵬社版の教科書は日本国憲法を軽視し、真理と平和を希求しない人々によってつくられたものであり、子どもたちには不要のものです。
・庄田節子(カウンセラー)
・三浦正行(立命館大学教授):読み手を「教化」の対象とするものではなく、「学びの基本」として信頼を寄せるような教科書こそ求められます。
・木全清博(滋賀大学教授)

[他に公表を控える方が4人]


 「京都教育センター年報(24号)」の内容について、当ホームページに掲載されているものはその概要を編集したものであり、必ずしも年報の全文を正確に掲載しているものではありません。文責はセンター事務局にあります。詳しい内容につきましては、「京都教育センター年報(24号)」冊子をごらんください。

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