事務局 2010年度年報もくじ

学力・教育課程研究会  2010年度研究会活動のまとめ

          小野英喜(学力・教育課程研究会事務局)



1. 2010年度の活動のまとめ
 
 今年度の活動方針は、次のテーマで研究活動を進めることができた。
(1)改訂学習指導要領と教育評価の問題点を明らかにして、改善の展望を明らかにする。
(2)子どもの学力の変化を各種の調査結果を収集し基礎学力の内容を確認する。
(3)小学校から高等学校までの教育課程編成の課題を検討する。
(4)学期に一回の例会を計画する。各種民間研究会と合同して、「学力・教育課程研究会」を例会 として開催する。
(5)研究部会委員の拡充と恒常的参加の体制を作り「委員の拡充によって部会の研究体制づくり」 と、部会のニュース『学力・教育課程研究部会便り』の発行を続ける。
  学力・教育課程の「資料配布」を会員からの情報提供を受けて積極的に進める。
 
 部会の研究活動については、「学期に一回の例会を計画する」ことができた。しかし、「教育評価の問題点を明らかにして、改善の展望を明らかにする」ことは、時間の制限で所期の目的を達成することはできなかった。(2)の「学力の変化を各種の調査結果を収集し基礎学力の内容を確認」することは、独自の調査ができず、不十分な結果に終わった。
 (5)の「部会委員の拡充と恒常的参加の体制作りを進めるために委員の拡充による部会の研究体制づくり」は、新しく事務局に加わっていただいた部会員の積極的な参加と研究部会を推進する体制作りとともに内容の充実を図ることができた。
 部会のニュース『学力・教育課程研究部会便り』の発行は、3回に止まった。
 

2. 総括
 
1.部会の研究活動について
学力・教育課程研究部会は、3年目を迎えた新体制の下に研究活動を進めることができた。昨年度に引き続き、学習指導要領の改訂に伴う教育課程づくりとの文部科学省による小学校検定教科書が出揃い、検定教科書の課題や問題点の研究を進めることができた。また、部会委員に限定した拡大事務局会議を2回、研究会を4回実施し、昨年度まではできなかった部会の活性化の一つのきっかけをつかむことができた。
学習指導要領と教科書問題については、昨年度に引き続き京都教育センターとの共催の形で、公開学習会を開催し、参加者も増え、充実した研究会になった。昨年度は、5回の部会や公開研究回答を合わせて述べ69人の参加者を得たが、今年度は、次の一覧表のとおり、6回の研究活動で述べ82人以上の参加者を得た。
今年度は、小学校の社会科、理科、国語科、算数科、英語科、芸術科・美術の教科についての研究活動を行ってきた。来年度は今年度の研究成果を引き継ぎ、中学校と高等学校の内容についても研究活動を進めていく必要がある。
 さらに、事務局会議では、当面する事務的な課題だけでなく、テーマを設定せずに研究協議をすることができた。今年度は、昨年度以上の部会の研究活動を下記のような4回の研究会を開催し、「テーマに従って」協議した。この取り組みは、来年度以降の取り組みにつなげていくことが大切である。

 回 日 程 内 容 報告者等
第1回
拡大事務局会議
5月30日
参加者8名
 
研究テーマと研究活動についての協議と学習会 ・学力問題の協議から、学力は「保障」するものかどうか、「保障」できるのかが話題になった。
第2回
第一回研究会
 
6月27日

参加11名
 
テーマ・@今日の学力問題、A小学校の改訂学習指導要領と新教科書の検討 @小学校理科の新教科書
野村治先生(田原小)
A小学校社会科の新教科書
  岸本実先生(滋賀大学)
第3回
第二回研究会
9月20日
参加31名
 
テーマ・小学校の改訂学習指導要領と教科書 @国語・教育センター国語部会、A算数・下田正義先生(向日市立第六向陽小)、B小学校英語・山添光司先生(宇治市北槙島小)
第4回
拡大事務局会議
10月10日
参加7名
 
12月26日の分科会の構成と内容、第4回研究会について ・「基礎学力とは何か」について協議、来年度の研究課題の一つにすることを決める。
 
第5回
第41回センター研究集会第3分科会
第三回研究会
12月26日
参加16名




 
 テーマ・改訂学習指導要領の教育課程編成における問題点と学力内容の変化
基調報告・鋒山泰弘先生
 
・地域の教材化する授業と獲得する学力・早川幸生先生(立命館大学)
・子どもの認識と算数・数学の教育課程・
長谷川幹先生(立命館守山中高等学校)
・生徒を授業に引きつける高校社会科の教材作りと授業・ 
大川沙織先生(京都府立南陽高校)
第6回
第四回研究会
2月5日
参加者
参加9名
要領改訂で教科教育はどう変わるか。検定教科書を見て @中学校理科・清水忠司先生(亀岡・高田中学校)
A美術教育・上中良子先生(京都橘大学)

2. 事務局会議
 
 第一回事務局会議では、4月25日の沖縄での県民集会で、日米軍事同盟に対して新しい歴史を作る端緒になるのではないかと思えるほどの大きな動きになっていることが話題になった。それは、26日付の「沖縄タイムス」に掲載された比屋根照夫氏の「歴史の鼓動とは、その時代の節々に権力の強制的な決定・介入に対する草の根の市民・民衆の声だ。」がそのことを示している。不十分ではあるが、政権の交代は、公立高校の授業料無料化と小学校一年の35人学級を勝ち取り、教育条件において一定の前進があった。それらを含め、私たちの運動と研究活動は、政治の動向を変え大きな歴史を動かすことになる。
 
3.研究会
 
 改訂学習指導要領に基づく教育活動が始まり、学校現場は極めて多忙な状態に置かれている中で、第一回の研究会を「小学校の改訂学習指導要領と新教科書の検討をテーマにして開催できた。鋒山泰弘研究部会代表の挨拶のあと、小学校社会科の「新学習指導要領と教科書」について岸本実先生から「教育内容の増加のほうが教科書のページ数の増加より多く、落ちこぼしを増やす」恐れがあることなどが具体的に報告された。また、理科について野村治先生から、「教科書のページ数が36%増えたが、授業時間数は15%しか増えていない」ことが指摘された。今回の改訂で「物の重さ」について、復活したのはよいが「物体と物質の違い」を曖昧にした教科書教材の問題点を具体的な資料とパワーポイントで示しながら報告された。

 
第二回の研究会は、京都教育センターの公開学習会の一環として、教育センター事務局と国語部会との共催になり、31人の参加者を得て研究活動を進めることができた。

 
国語部会の報告は、「新しい国語教科書を読む」と題して6項目について4人の部会員から報告があった。例えば「神話」との関連では、「伝統文化の尊重という発想から出てきた今回の神話である限り、かみさまの偉業を讃える文化があること、さらにいえばそれが日本の伝統の根幹であるということを、教科書を通じて教えようとすることになる。」と指摘された。また、「優れた文学教材が教科書に残ったが、配当時間が少なく、学習の手引きで学習内容を限定している」という問題点の指摘もあった。算数では、学習指導要領の解説に従って教科書が編集されており、話し合いや説明をするところが多くなっていること、活用の力を求めており、スパイラルによる細切れ教材になっていること、教科書採択が「全府で数年来啓林館一社のみに限定して採択しており、他の教科書採択ではないことが起こっている」ことも報告された。

 
第三回の研究会は、京都教育センター第41回研究集会の第3分科会として位置づけており、その内容はセンター研究集会のまとめとして報告している。
引き続き学習指導要領の改訂と教科教育の検討を行うため、2011年2月5日に、@中学校理科について清水忠司先生、A美術教育について上中良子先生に報告をしていただき、協議・研究を深めた。


3.今後の課題

 
2011年度は、義務教育では改訂学習指導要領に基づく教育課程と授業が本格的に実施されることになり、中学校で「教科選択の授業」が全廃、高等学校では大きな改訂など、各学校子どもの実態を踏まえてどのように教育課程として具体化するかが大きな焦点になる。
小学校では、すでに「ゆとり」が一変して「時間不足」や「特急授業」が増え、問題が起こっている。例年にも増して厳しい教科書検定、道徳教育の実施計画の作成など、改訂学習指導要領と07教育基本法による教育委員会からの締め付けが強化されている。本研究部会は、2011年度に各学校で具体化される教育課程と学習内容に注目し、調査活動と研究活動、さらに民主的な学校づくりと共に実現可能な提言などを検討していく必要がある。

 高校の学習指導要領に新しく書かれた「義務教育の内容を保障する」ことの意味の検討とともに、これに関係する学校と関係しない学校とで大きなちがいが高校教育に生じることに視点を当てる必要がある。一方では、より激しい進学競争に特化する学校も出てくるなど、学校教育法の改訂「高校教育の目的」が現実の課題になることが考えられる。

 教育評価については、学校教育法に学力内容を規定し、観点別絶対評価の4観点を3観点に変更するなど、学力評価についても大幅に変更される。今までの評価のどこに問題点があったのかを明らかにして、対応しなければならない。

 本研究会としては、来年度も引き続いて学習会を例会として開催し、今日の学力と教育課程に関する問題点を明らかにし、学校で対応できる対策を検討する。


4. 2011年度の方針と部会の研究計画


1. 部会の研究活動

     (1)改訂学習指導要領と評価の問題点を明らかにして改善の展望を明らかにする。
       2011年度は、中学校と高等学校を重点に取り組む。
(2)子どもの学力の変化を明らかにするため、各種の調査結果を収集し資料として配布し、学習指導要領と基礎学力の関係について研究活動をすすめる。
(3)学習指導要領の改訂に伴う小学校から高等学校までの教育課程編成の課題を検討する。
(4)学期に一回の例会を計画する。各種民間研究会と合同して、『学力・教育課程研究会』を例会として開催する。
(5)部会委員の拡充と恒常的参加の体制を作り「委員の拡充による部会の研究体制づくり」と、部会のニュース『学力・教育課程研究部会便り』の発行を続ける。
学力・教育課程の「資料配布」を会員からの情報提供を受けて積極的に進める。



2. 研究会の体制

【部会委員
天野正輝、 市川章人、市川 哲、井口淳三、植田健男、大八木賢治、大平 勲、 
大西真樹男、小野英喜、金子欣也、 川村善之、 柏木 正、 上中良子、 久保 齋、 澤田 稔、田中耕治、照屋美奈子、中西 潔、中須賀ツギ子、西原弘明、 仁張美之、 野中一也、人見吉晴、平田庄三郎、 平野健三、 藤原義隆、 淵田悌二、 鋒山泰弘、 
本庄 豊、 八木英二、 山上和輝、我妻秀範、 和田昌美


【事務局】
代表・ 鋒山泰弘
       事務局員・ 市川章人、 久保 齋、 平田庄三郎、 西原弘明、 平野健三、
 淵田悌二、 中西 潔、 和田昌美、 小野英喜

 「京都教育センター年報(23号)」の内容について、当ホームページに掲載されているものはその概要を編集したものであり、必ずしも年報の全文を正確に掲載しているものではありません。文責はセンター事務局にあります。詳しい内容につきましては、「京都教育センター年報(23号)」冊子をごらんください。
事務局 2010年度年報もくじ

              2011年3月
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