トップ | 教科教育 |
![]() |
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
国国語教育は改訂学習指導要領でどう変わるのか 〜私たちは、何をどのように分析し批判しなければならないのか〜 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2月15日、「改訂学習指導要領」が提示された。 この改訂は、大きな意味をもっている。とくに「国語科」については、私たちもこれまで分析してきたように、かなり意図的で大きな問題をもつものであると考えている。 今、私たちは、この改訂学習指導要領をどのような視点で分析し、「ことばの力」をのばす教育としての国語教育の内容と構造を提起していくのかを考えていきたい。 1.「学習指導要領・国語科」をねらう三つの流れ 私たちはこれまで、改訂指導要領の構造と内容を規定することになるだろうと考えられる動きを、その時々に分析し、批判しつつ、今回の改訂指導要領が、国語教育の「空洞化」をさらに深めるものになっていくのではないかと考えてきた。 その中で、私たちが重点をおいてきた視点は、次の三つである。 @ 国語教育の「空洞化」を進めてきた、言語技術主義・技能主義 A 教育基本法改悪でめざされる、国語科の「愛国心注入教科」の方向性と内容 B 「学力テスト」の強行実施によって進められる「学力」の矮小化と国語教育の変質 これらが、改訂指導要領・国語科で、どのように具体化されてきているのか、そして今後の伝達講習会での論調、新教科書として国語教材がどのように形作られていくのかなどで、どうなっていくのかの基本的視点だと考えている。 今、この改訂指導要領・国語科を批判検討することは、私たちの急務となる。そして、批判するだけでなく、私たちの考える国語教育の構造と内容を広く提起していく機会でもある。 そのために、多くの意見・提起が持ち寄られ、国語教育実践が指導要領を乗り越えて進められていくことをめざして、この三点についてより具体的に提起したい。 2. 国語教育を歪める技術主義・技能主義は 指導要領・国語科は、それが作られてきた当初から、言語技術主義・技能主義の域を出るものではなかった。それは言語の持つ「外言」の働きだけに偏重し、「内言」としての意味を押さえてこなかったことによる。 そして、それをさらに進めたのが「総合的な学習の時間」の導入によって、一部の研究者の「国語科は総合的な学習の時間の下位概念」であり「総合的な学習の時間の活動を進めるための技能の学習の場」とまで言い始める状況にまでなった「活動主義教材」の増加、そして「言語技術教育」の広まりであった。 その状況は、今回の指導要領・国語科でもますます進んでいくと考えられる。 これまでの改訂指導要領に至る審議会などの論議で、「能力」と「態度」がその中心となって論議が進められてきたことはこの国語部会通信でも提起してきたが、それが「各学年の目標と内容」、とりわけ「目標」で顕現化している。これまでの「〜こと」などの表記はほとんど「〜能力」となっている。もちろんそれは本来の「ことばの力」というものではなく、技術・技能に偏重したものである。 また「内容」についても、現行の「言語事項」に表記されているものが「領域」そのものに移行しているものも多くある。それは各領域の学習を通しての指導事項が、領域学習そのものの内容とされたものであり、より細かく指導内容が規定されたことに他ならない。 さらに、現行の「内容の取り扱い」として3の項目で提示されていたものが、それぞれの領域の(2)項として、具体的な「言語活動」が指定され、その項目数はかなり増えている。ここには、具体的な学習場面・指導方法等が示されており、それらが必ず教材化されることとなる。 このような国語科の内容規定をおさえて教科書教材が作成されていくことで、より狭いものとなることが予想される。 3. 「愛国心注入教科」としての「内容」は 教育基本法が改悪された後の指導要領の改訂であることは、この「案」では当然の事ながら強く意識されている。それは、これまでにはなかったが今回の「案」の冒頭にその全文が添付されていることからも解る。 国語科がその愛国心育成の内容を受け持つものであることは、早くから意識されていた。「道徳」の教科化が失敗に終わり、それはより強いものとなった。その内容については、これまでの審議会等での論議でも、「情緒力」などというきわめて曖昧な言葉での論議に終始していたが、次第に、「能力」で技術・技能を、そして「態度」で思想性のしばりをかけるものとなっていった経過がある。 その具体化は、これまでの指導要領・国語科が、三領域一事項で、事項が「言語事項」とされていたものが、「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」とされたことなどに現れている。 この改訂指導要領・国語科でも、「昔話」「伝説」(低)、「文語調の文章」「短歌・俳句」「慣用句・故事成語」(中)、「古文・漢文」「文語調の文章」「古典」(高)等、漠としたものとなっているが、それがどのようなものがどう教材として出されてきているかを今後厳しく見ていかねばならないだろうと思われる。また、その方法として「音読」「暗唱」等しか提示それておらず、発達段階などへの配慮を無視したものでも取り込めるものとなっている。 なぜそのようなものを学習していくことが必要なのかは曖昧にして、また何がどのように具体化されるのかも不明確なまま、このような違和感をもたざるを得ない動きは、国語教育の堕落といわざるを得ない。 4. 国語の「学力」をどう考えるのか これまでこの国語部会通信でも分析・提起をしてきたが、あの全国一斉「学力テスト」は、その実施方法だけでなく、その問題ないようそのものに大きな問題点をもっていた。 国語教育にとって、とりわけ「B問題」として作成されたものは、「PISA型読解力」の名の下に、国語の学力をきわめて矮小化し、言語活動の場面で使うことだけに限定して問題を設定することで、国語の学習をさらに技術的技能的なものに押し込めてしまうものとなることを指摘してきた。 その危惧は、この改訂指導要領・国語科で、現実のものとなってきている。 あの「学力テスト」が、「『基礎』は充実、『応用』が不十分」ということを示すことを最初から意図した、いわば「出来レース」であったという批判もある中、この改訂指導要領・国語科は、それを引継ぎ、あの「PISA型読解力」を歪曲して、言語活動を現実生活の具体的な場面だけに限定して問題に対応する技能をつけようとする、「国語の学力」を矮小化したものとなっている。 先にも指摘したとおり、現行の指導要領・国語科の第2「各学年の目標及び内容」が、
となる。 このように、現行の「3 内容の取り扱い」の項が削除され、A・B・Cの「領域」の中に、細かく提示されることとなる。それは、領域ごとに一項目程度のものであったのが、3〜5項目の具体的な「活動場面」や「方法」等について規定したものとなる。 そしてそれが、あの「読解力向上プログラム」などとして提示されたものが並ぶ。 このように、分析の三つの視点からの見ると、今回の改訂が、国語教育にとって、大きな問題をもつものであることが明らかになる。 今、改訂学習指導要領の批判検討を、さらに深く、鋭く進めていくことが、緊急の課題となる。ぜひ、多くの場でとりくんでいただきたい。 ( 京都教育センター・教科教育研究会・国語部会事務局 ) |
トップ | 教科教育 |