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教育基本法・連続学習会 2005
広げよう、深めよう「みんなで語る教育基本法」

−−わたしたちの願う教育・学校とは・・・・−−

2005年5月21日(土)午後1時半〜4時 於:京都教育センター室
2005年5月21日(土)に故・小林幸男、前・京都教育センター代表を偲んで集まりを持つと共に、小林先生の遺志を継いで学習会を行いました。以下、その概要をご報告します。(以下の記録は、京都教育センター事務局の責任においてまとめたものです)


第一部 故・小林幸男 前・京都教育センター代表から学ぶもの

 
小林幸男さんから学ぶもの
 
              野中一也(現・京都教育センター代表)挨拶

 
 長年、小林幸男先生が代表として京都教育センターをしてリードしていただいていたが、昨年亡くなられた。小林先生に学びながら、どう前向きに取り組んでいくのかを話したい。

(はじめに)

 「小林さん」と呼ばせてほしい。従来から「研究の場で、お互いに上下の差をなくいきましょう。」とお互いに「・・・・さん」で呼び合ってきた。小林さんは、憲法・教育基本法の改悪の強い動きに危惧を抱いておられると共に、とても学生が好きで、「この京都教育センター室で学生ともゼミをしたい。」という強い願いも持っておられた。小林さんが残された膨大な貴重な書籍は、中国の杭州大学に寄贈され、記念保存されることになった。小林さんの思いが世界史的に刻まれて後世に残り、継承の軌跡をつくると思う。

(小林幸男さんの年譜)

1924(大正13)年 京都府に生まれる
1946(昭和21)年 京都大学法学部入学
1949(昭和24)年 京都大学法学部卒業
1949(昭和24)年 京都大学法学部特別研修生
1953(昭和28)年 近畿大学法学部専任講師
1961(昭和36)年 近畿大学法学部教授
1969(昭和44)年 立命館大学産業社会学部
1973(昭和48)年 京都教育センター共同研究者
1983(昭和62)年 立命館大学産業社会学部定年退職・京都学園大学教授
1991(平成 3)年 京都教育センター代表
2004(平成16)年 逝去

(小林さんから学ぶもの)

 第一に、広い視野で情勢分析を考えることの重要さを教えてくれた。政治と教育の関わりでも、「日ソ外交史」研究の第一人者であり、治安維持法の外交政策の検討や、教育事象の分析視点の提起もされていた。

 第二に、子どもの発達保障の多面的な取り組みの大事さを教えてくれた。子どもを大切にされ、研究と実生活との結合を意識されていた。子どもの名前に思いも込められている。京都教育センター共同研究者、代表として、また「高校教育研究会」の世話人として活躍され、「地域に根ざす教育」の実践者でもあった。また、PTA活動にも関わり立命館大学学生部長、学部長なども歴任され、立命館大学応援団顧問もされていた。

 第三に、「民主的集団づくり」の大切さを教えてくれた。「人の輪(和)」を広げた自然的組織者であり、同時にお酒を愛された方でもあった。細野・安永・小林コンビは絶妙でもあった。小林さんの交遊の広さで「出会い」の意義も教えてくれた。
 こういう点に学びながら、私たちもさらにこれからの課題を考えたい。

 
小林先生の思い出

              藤本雅英(京都教職員組合執行委員長あいさつ)

 淵田先生から「小林先生は、本当にえらい先生」と聞かされていた。私自身も強い思い出がある。京教組の大会などであいさつを受けるが、小林先生は「あの間違った戦争」に対する強い思いを持っておられる。ただ、(あいさつの)時間が長い。一度それを言ったら、次には「資料」をつけて話をされた。あまり「あいさつ」に資料が付くなどということはめったにないことだ。あらためて私たちに対して「あの戦争を繰り返してはならない」ことを訴えたいという強い思いを感じた。

 今私たちが「憲法・教育基本法改悪を許さない」ことを考え、行動していくことが、これに応えることになる。


小林先生の思い出

              我妻秀範(元京都教職員組合教文部長)

 93年7月から2000年7月まで京教組の専従で、教文部長として、小林先生とはセンターでご一緒させてもらった。

 小林先生には一つは、センター代表ということでたいへん世話になった。センターにはいろいろな人がいて、私自身、幅広い視野が得られた。特に小林先生は、広い視野をもっておられて、そこからいろいろな提起があった。「日露戦争100年になるが、君たちは、何をするのか。」など、いろいろと違う視点からアドバイスをもらった。

 二つ目は、小林先生はいかに民主主義を大事にされていたかという点で、戦争の経験を深く捉えておられると共に、どうして戦争を防げなかったのか、などの思いを持っておられ、強いメッセージを感じることができた。

 また、「学校評議員制度」ができるという議論の中で、「地域の再結集ではないか」などと発言もされて、新しい視点を感じた。また、「何故、若い研究者を教育センターが組織できないのか」という点でも、「センターの年報を研究紀要にできないのか」とか、(今日の)資料の巻末に、「若い研究者が集まってきた」というのがあるが、これも小林先生のアイデアだったのかなと思う。その研究者の一人が一橋大学の渡辺治先生だと思う。以前、渡辺治先生に講師をお願いに行ったとき、小林先生の話を出すとたいへん驚いておられた。国際政治学の研究の上でも大きな貢献をされて、私も歴史研究を教えているが、

 今から小林先生の本を読んでも、改めて教えられることが多い。研究と教育の接点を持ちながら、いろいろと教えを受けたことが大きい。専従の7年間は、いろいろとアドバイスを受けて、偉大な先生だと思っている。


(その後、故・小林幸男先生のご家族の方からのあいさつがありました(略)



第二部 高校生たちの自主・自治活動と政治的教養

 
      話題提供者 磯崎三郎さん(京都教育センター・高校問題研究会)

第一部のあと、「高校生たちの自主・自治活動と政治的教養」というテーマで学習会を行いました。話題提供者は磯崎三郎さんで、お話の概要は以下の通りです。


 高校問題研究会の事務局をしている。小林先生から学ぶものということで、その中味ということで緊張している。昨年の第8条の学習には司会をしていた。今回、淵田先生から依頼を受けて、引き受けた。高校で日本史を教えているが、その中で高校生はどのようなことを考えているか、また高校問題研究会でどのように高校生が発言しているか、また教科書問題にもふれて話をしたい。


はじめに

 日々いろいろな出来事の中で、憲法・教育基本法がくずされようとしている。高校教師をしていて教育のことを考えざるを得なかった。私は東京で教師になろうとしていたが、募集が少なかった。京都にきたのは、京都は試験を早くやっているので受けたら、京都だけが受かった。民主府政がくずされた頃だった。それからだんだんと民主教育がくずされてきた。 今は、長年の自民党の野望である。憲法の明文改憲が行われようとしている。またドイツのように戦争の反省がきちんとできているのかが、疑問である。小泉が4年首相をしているが、次に出てくるのが安倍であって、国際的に見ても右翼の安倍がでてくるのは問題。ドイツでは、戦争反省の取り組みをしっかりしている。こうした基本をしっかり持って高校生の政治的教養も考えていきたい。

1 教育基本法第8条の規定

 どうしてなのか、新たな戦後の教育の主発点。戦前はどうだったのか、「しっかり考える」ことが保障されなかった。この反省から入っている。憲法の3つの基本点の理解、ここから始まり、その理解を言葉の上だけはなく、しっかりと生活に結びついているかということが重要。「たいへんな時代に生まれなくてよかった」などの感想がでてくる。また、間違った政治的教養を育てるようなものもでてくる。歴史教科書などもその問題。それに影響をされる子どもも出てくる。

2 高校生の意識

 日本史を教えているので、そこから入りたい。日本史の授業の中で、 国民の生活、権利拡大へのたたかいなどを取り上げている。

 生徒の意識はどうなっているのか。プリント授業をしているが、一方的になりやすいので、授業ノートをクラスに一冊まわして、意見や感想もあるが、最近の子どもは、あまりかかないで授業についてではなくて違うことを書いている子もいる。生徒の意識について、何年か前から3年学年末テストで「授業で習った近現代の日本の歴史についてどう思うか」を聞いている。「日本の悪い面ばかり教えている」(自虐史観)などの意見もある。意見の中味によって点数をつけることはない。「日本の侵略の歴史ばかり並べて嫌悪感を持たせるのはおかしい。戦争にも良い面や功績を残す面がある」という意見についてどう考えるか、との問いに対し、圧倒的に多いのは「戦争に良い面などはない。教訓を今後に生かす」というのが多い。多くの若者は基本的には「健全な」ものをもっている。また、「悪と教える方が戦争に繋がらなくて良い」。「私たちは戦争を数字の上だけしか知らないが、実際に見たら精神崩壊を起こす」など嫌悪感がつよい、とか「戦争の事実を包み隠さず教えてほしい」「しかし、南京大虐殺の写真はきつかった」などとある。

@自衛隊のイラク派兵などで「日本が戦争の道に進むのではないか」という危機感が多いのが特徴である。「アメリカの元でつねに戦争に巻き込まれやすい」もある。それを書いたのは7名である。

A全く逆に「戦争には良い面や功績を残す面があるので、一方的に悪と考えるのはどうか」というのもある。100人中15名ぐらいがそういうことを書いている。「日本が戦争によってもたらした功績はすごい。戦争はひとつの経験になった。日本だけが戦争しているわけではない、どこの国でもやってきた。戦中の戦争教育も教えるべきだ。身を挺して国を守る人になりたい」とう意見もある。この子は卒業して自衛隊に入っている。また「昔の日本があったから今の日本がある」「戦争のおかげで今の平和がある」と捉えている子もいる。「明るい出来事も教えてほしい」という意見もある。また、家族からいろいろ聞いている子もいて「おじいちゃんが、満州に渡った」など述べられている。また「日本が悪いだけでは済まない。おじいちゃんもいろいろと苦労してきた」、「今の平和な時代に生まれて良かった」と書く生徒も以前から結構ある。

 「今の日本は平和」といって良いのか。しかし、その危険性についてはあまり捉えられていないなと思う。「なぜ戦争が起きるのか」「戦争はどんな被害をもたらすか」「戦争で得をするのがだれか」など迫っていく面がある。

 日高教で、憲法に対する意識についても調査依頼がある。全国9000名の回答、憲法9条を変えるのがよいかどうかについては、変えない44%、変える14%。ただ「わからない」が約半数である。「変える」という意見でも「軍隊を持たないようにはっきり明示」などもある。「変えない方がよい」が多い学校は「平和教育」「憲法教育」などきちんとしている。「変える方がよい」は、進学校など平和教育をきちんとしていない学校である。やはり「憲法が守られる必要がある」という意識は強い。「平和の大切さ」「憲法の意義」はしっかりと定着している。しかし、憲法改悪をめぐる議論が「わからない」43%と多い。憲法をまともに読んでいない子どもも多い。高校における教育のあり方に左右されている。 私たちの高校生時代は「ベトナム戦争」の頃で、政治のことを語るのが当たり前だったが、今は大学生・高校生が政治のことを言うと「変わっているな」となる。問題点を感じる。

2 高校生の自治活動(略)

 (高校生の自治活動の様子−−−略)


おわりに

 若者の戦争・平和や教育問題への感覚・意見は健全なものが多い。正しい政治的教養・主権者意識が発達する取り組みを広げることが大切だと考えている。


質疑応答(略)

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