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それでも子どもは輝いている
──地域に子どもが活躍できる場を


京都学童保育連絡会協議会

松井信也

 京都教育センター第32回夏季研究集会「特別分科会」は地域からの7つの報告が出され、ここでは学校とはひと味違った活動がいきいきと語られるとともに、(1)どんな地域づくりをすすめていくのか、(2)地域に何を回復していくのか、(3)そのために何が課題となっているのか、を深めあいました。その中から、「やまびこ座」中村暁さん、「TUBASA」の北田久美子さんの報告を中心に地域でのさまざまな活動の一端をご紹介します。

◇「学校とは何」をテーマに創作劇づくり(やまびこ座の活動より)

 「なあ、夏休みが終わったら私どうなるの?」
 入学後まもなく不登校になった小学校一年生のA子ちゃんは、劇団では想像力いっぱいに活動してくれています。そのAちゃんがこの夏休みが終わる前にこういうのです。
 児童劇団やまびこ座は、京都の西陣地域で誕生して創立50周年を迎えた劇団です。いつも、子ども・青年・大人がいっしょに演劇を創っています。
 今回の50周年の集団創作では、そんなAちゃんも含めて「学校」を取り上げています。
 「学校」の問題を取り扱うとき、子どもや青年たちは思い思いに自分の意見を言います。しかし「それぞれの価値観、いろんな考えがある」で終わってしまったのでは、芝居づくりになりません。確かにいろいろな考えはある。けれど、一つの問題に対して真実は一つのはず。みんなで「ほんとうのこと」を見つけようと、美山町に合宿して討論を深めました。
 最初に話し合ったテーマは「学校とは何をするところか」「なぜ学校へいかなければならないか」ということでした。当初、合宿に行くまでのみんなの代表的な意見は「学校へいかなくても塾がある。友だちがいるし行くだけ」というものでした。
 で、最初に小学5年生の女の子がこう言いました。
 「何のために勉強するかとか、学校って何かなんて、子どものときにはわからないものとちゃうか。大人になってからわかるんとちゃうやろか」
 しかし、それに対して高校2年生の男の子はこういったのです。
 「大人になってからわかるんでええんやろうか? 僕は、いま自分がやっていることの意味はいま知りたい」これは大切な指摘だったと思います。
 たしかに、「学校とは何をするところか」「なぜ学校へいかなければならないか」をわからずに学校に通っていて、楽しいはずがありません。それは江戸時代に大きな石を右から左に運び、また左から右に運ばせたという拷問と何ら変わりません。自分がシステムの中でおこなっていることに対する『意味』をつかむことがとても大切なのです。悶々とした時間が過ぎました。
 脚本作りに向けて、驚くぐらいにたくさんの時間を使って小学生から青年・高齢者まで30名余が車座で討論を続けてきています。
 しかし、光明がさしました。ある高校生の女の子がこんなことを言ったのです。
 「でも私は、学校へいって友だちと一緒になってはじめて勉強する気持ちになれる」
 ……この発言は、みんなの気持ちの流れを変えました。「そういえば」と、堰を切ったようにみんなの口から発言が飛び出しはじめたのです。「学校へ行くと友だち同士で新しい知識がもらえる」「教科書に書いてあることがすべてならば、学校はいらない。教科書だけではわからないことを学ぶことができるのは、友だちや先生がいる学校だけ」「わかりあうのが勉強。そのために集団があり、先生がいるのとちがうやろうか」。
 そして、2日目の午後に、どうやら一つの「ほんとうのこと」を見つけたのです。
 学校は勉強をするところだ。算数や国語はもちろん、友だちや先生との関係の中で、生きていくための勉強をするところだ。
 まだ話し合いを深めています。「みんなで力を合わせて学ぶ場」の学校で、どうして集団からはじかれるいじめや、不登校が起こるのか?「わかること」と「問題が解ける」ことは、同じ意味なのか、そして、地域が子どもを育てることとは………、親は……、先生は……。
 「はっきり言ってたいへんな取り組みになっています。でも、みんなで一つひとつ『ほんとうのこと』を発見しながらつくりあげる作品は、まさに『最高傑作の予感』なのです。そして、子どもたちは確かなものを一つまた一つと見つけています」  中村さんは熱っぽく語ります。

◇「TUBASA」(たかつかさ児童館を拠点にした地域サークルの活動)

 昨年3月、学童保育を卒所した4年生、児童館のあそびのリーダーだった6年生の子どもたちと保護者で立ち上げた「TUBASA」は現在16世帯。親も子どもたちもつながりをもち続けたい、親たちが地域で縦の子ども集団を意識的につくりたい、子育てや教育を日常的に語り合いたいなど共通の願いをもった家庭が結びつきました。頼もしい指導者、前児童館長でもあったフッチー(淵田悌二先生)の大きな支えもありました。
 子どもたちは話し合いをもちながら活動をつくっていきます。親子30人が参加した2泊3日のキャンプやクリスマス会、フッチー先生との雲ヶ畑への山歩き、わさ谷小屋宿泊、きらら坂登山、雪山登山など活動を積みあげてきています。
 一方、親たちは子どもたちとフッチー先生の活動を支えながら、月1回懇談会を開いてきています。テーマは「総合学習って何?」「いまの小学校の様子」「自主学習どうしたら?」などから「地域での子どもの生活」「地域でTUBASAをどうすすめるか」など多岐にわたります。「教科書問題」では岩井忠熊先生を講師にお招きしました。
 北田さんは、「みんなを引っ張っていけるリーダーが、まだまだ育っていない中で、大人がどこでどういう力を出していくのか」「地域にどうひろげ、根を張っていくのか」を課題としつつ、子どもたちと親の「ひらめき」で「あそび」をどんどん広げていきたいと語ります。

◇活動の交流と理論化・発信の重要性は参加者の共通認識

 「第9回心をつなぐ中学生のつどい」(京都少年少女センター)では、小学校6年生から中学3年生までの80数名が3泊4日の合宿を通じて、仲間づくりのさまざまな活動をすすめるとともに、討論を通じて「あそびは権利」との共通の認識をもち、それを「あそび宣言」にまとめる過程を報告。その他、北区原谷での地域づくり、中高生の居場所づくり「ナイトスペース」の取り組み(桂児童館)、左京親子劇場再建の取り組みと地域(寺嶋邦子さん)、文化の創造継承と地域(京都児童青少年演劇協会)が報告されました。
 それぞれに、大人たちのつながりや青少年の居場所と活動への参加、お年寄りの力、専門家の存在などの「たいせつなこと」が語られています。こうした活動を日常的に交流し、蓄積するとともに、研究者の力も借りての理論化と発信が求められます。

(まついしんや)
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