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【子ども・教育・文化の共同・京都ネットワークのページ】

どの子も希望する高校に
──加悦谷高校定員増を求めて

加悦谷高校の定員増を求める会代表

大江京子

 加悦谷高校は「働きながら高校教育を受けたい」との子どもたちの切実な願いから「定時制」として設立され、以後野田川町、加悦町の子どもたちが通う「地域の高校」として根付き、普通科だけの小規模校として、加悦谷地域の子育て・教育を支える中核の役割を果たしてきました。
 その加悦谷高校が通学圏の拡大とI、II、III類の導入以後「入りにくい学校」に変わってきました。その実態を在校生の現状からみると、

◇ 地元の子どもたちの収容率(加悦・野田川の子ども)
【I、II、III類の収容率】
1997年 53.4%
1998年 57.8%
1999年 51.6%

 こうしたもと、地元の公立高校でありながら「地元の中学卒業生の約50%しか入れないのはおかしい」という父母・地域の声が近年よく聞かれるようになりました。
 また、加悦谷という地域は私立高校は福知山、宮津の女子校しかなく、福知山に通うとなると通学時間は1時間30分〜2時間かかり、子どもにとっても負担は大きく、親にとっても不況のもとでの経済的負担と通学時間や乗り継ぎなどへの不安が強くなっています。また、冬場の雪や天候、交通機関の乗り遅れなど、親の「送り迎え」を余儀なくされるなど、遠距離通学、下宿生活ができるかどうかは家庭環境とも大きくかかわる問題となりつつあります。
 自転車で通える距離にある地元の公立高校になぜ多くの子どもが通えないのか、不満と疑問が年々高まり、「議会請願を」という動きが起こりました。1999年12月「加悦高入学定員を考える会」発足。2000年3月、加悦高入学定員を考える懇談会実施。そして請願署名の新聞折り込みから、第一次提出まで一週間のあいだに1135名もの署名が寄せられるなど反響は予想を上回るものでした。
 不十分なままのスタートで、懇談会も多くの父母が集まって「動きをつくる」ということにならない中、「このままで署名が集まるのか」と不安を抱えたままでしたが、署名を通じて「意思表示したい」という親や子どもたちの思いが、署名数や協力してくださるお母さんたちの広がりとなり、過去十数年ない運動となりました。署名活動をしたことのないお母さん・お父さんたちが、職場で、地域で一生懸命取り組まれ、会の代表である私は、ポストおろしを40〜45ほどしましたが、それをさらに広げてくださったのは、お母さん・お父さんでした。そうした動きは子どもたちにも広がり、加悦町有権者数約6400で1665名(有権者比26%)の署名を集め、この数は加悦町始まって以来のことでした。それほど「地元の高校へ」という地域の思いは強かったことを示しています。
 署名提出後、私も含めた請願代表で議会の総務文教委員宅を趣旨説明に回りましたが、「高校は義務教育ではない」「親の教育費負担は当たり前」「子どもたちは自分の意志で高校を決めている」「個性を伸ばす教育、選択肢は広がっている」など現状認識のズレのあまりの大きさに驚かされました。自分の意志で高校を決めている子どもも、もちろんいます。しかし「行きたい学校の選択」ではなく「行ける学校の選択」をしている子どもたちも現実にはたくさんいます。中学3年生になって、初めての進路希望では圧倒的に「加悦谷高校希望」が多いのが現実なのです。自分が何をしたいのか、どんな方向に進みたいのか、決めあぐねている中学生もたくさんいます。
 かつての普通科で勉強し、進む道をじっくり考えたい子どもたちもいるのです。そんな子どもたちの現状も知らず、「個性を伸ばす教育」のもと、学力格差は確実に広がっています。
 父母の思い、先生たちの思いに耳を傾けてほしいと思いながらの議会傍聴。委員会傍聴は拒否され、議員さん方には私たちの思いは届きませんでしたが、議会広報で後から不採択を知り「どうして」と聞きにこられる方が多かったことに、私たちの取り組みの大きな前進を感じています。この春、高校入試が終りました。あらためて、予備校化する高校教育をいま一度考え直してほしいと思っています。

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