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京都教育センター 発達問題研究会

−−2003年度活動総括と2004年度活動方針−−



2003年の活動経過

2001年春に実施・集計した子どものコミュニケーションに関するアンケート(小3〜中3対象18項目)調査結果について、前年までの討議を踏まえてその分析を本格的に行ない、その報告書の刊行について検討を続けた。毎回の運営委員会で分析素案を討議修正し、あるいは個人コメントを回収・検討、夏以降は報告書の刊行に関して最終的な確認などの討議を深めた。
  また、アンケート分析と時期的に並行したが、コンピュータ社会に生きる子どもたちを取り巻く環境について、インターネットや情報機器・道具の普及などと併せて検討した。具体的には、運営委員の問題提起を踏まえ、7月5日に公開研究会「インターネット時代と子どもたちの認識・発達 −教科教育から考える− 」を開催、京都市内・府下から小中学校や高校現場の児童生徒たちの様子について、授業や学級・保健室の具体的な活動・報告にもとづいた現状理解の討議を、夏季研プレ企画として行なった。

 夏季研当日は、「インターネット時代と子どもたちの認識・発達 −モノとのかかわりから考える− 」を分科会テーマとして、<報告1 生活の変化と子どもの認識 大将軍小・嘉納隆英先生(保健体育)><報告2 高等学校の現場から  鴨泝高・井上力省先生(社会科)><報告3 実社会のものづくりの流れを大切にした授業 −売り込む棚づくりから労働の世界を垣間見る− 同志社中・沼田和也先生(技術)><報告4 子どもたちが立ち上げた和太鼓の学習 −自分たちの創作や伝統的な太鼓学習を通じて− 梅小路小・辻啓子先生(「和太鼓」)><報告5 高校の保健室から感じること 城陽高・宇野和代先生(養護教諭)><報告6 中学校の保健室から感じること 嘉楽中・いとうはるみ先生(養護教諭)>の6本のレポートを議論の中心に据え、活動・報告をもとに現状を出し合いながら「子どもたちの認識・発達」について研究し、学習・討議を深めた。

昨年度の活動の記録は、以下の通り(「アンケート」に関する討議は殆ど毎回)。
1月25日(土):研究例会(継続して取り組んでいるアンケート分析素案討議)
2月15日(土):運営委員会(アンケート分析素案討議、コメント執筆依頼に関して)
3月1日(土):座談会(アンケートをもとに現状と課題を探る)
3月29日(土):運営委員会(アンケート分析素案討議・コメント、「情報化」について)
4月19日(土):運営委員会(アンケートコメント・中学生分析について、「情報化時代の子どもたち−テクノ・ストレス」の議論)
5月31日(土):運営委員会(アンケート分析へのコメント、インターネット時代に関して)
6月 7日(土):運営委員会(アンケート、公開研究会について)
7月5日(土)午前:運営委員会(アンケート、公開研究会・夏季研について) 7月5日(土)午後:公開研究会
7月22日(火):運営委員会(アンケート報告集、公開研究会総括・夏季研分科会について)
8月30日〜31日:センター夏季研(第1分科会担当)
9月27日(土):運営委員会(コミュニケーション能力と認知発達、人格形成など議論)
10月  各支部教育研究集会参加(独自例会などはお休み)
11月8日〜9日:京都教育研究集会
11月15日(土):運営委員会(夏季研分科会総括、アンケート報告集など)
11月30日(日):アンケート報告集発行
12月6日(土):センター冬季研(アンケート調査報告)

2003年のまとめ

2003年度も前年度に引き続き、研究の焦点を「思春期の子ども」に合わせ、さらに
1 認知的能力
2 身体的・運動的能力
3 現代社会の中の思春期
という3つのテーマに沿って研究活動を進めることを追求した。
 また、情報が個人の意志とは無関係に生活の中に入り込んできている情報化社会では、情報量の増大とその変化が人々に大きなストレスを与え続けている、との問題提起から、「ケータイ文化」にどっぷりと浸かってしまった社会が、子どもたちが発達していく環境として果たして相応しいものであるかどうかという検討も含めて、集中的に議論と現状の交流に取り組んだ。

具体的には、「インターネット時代と子どもたちの認識・発達」をテーマに据えて、公開研究会(会員以外にも広く参加を呼びかけ)を7月に開催、8月の夏季研分科会でも継続テーマで「生活・学力、そして現代の人間像」などと絡めて議論し、その後もアンケート調査報告書の扱いも含めて、コミュニケーション能力と認知発達・人格形成などについて多岐にわたる議論を継続している。今後もこの「ケータイ文化」「情報化社会」と認識・発達についての研究を発展させて、その課題を明らかにしていくこととなっている。
  「子どものコミュニケーションに関するアンケート」については、小中学生に共通した特徴を踏まえて、「家庭・家族における対人関係」・「友人における対人関係」・「学級集団への帰属意識」・「学校の先生における対人関係」・「情報の入手(メディアとの関わり)」・「自己形成(自己肯定感)」などに注目し、現代の子どもの人間関係、生活実態の特徴と年齢的変化、男女比較などの視点も検討を深めつつ、分析活動を継続した。会員・関係者にも参加を呼びかけながらも、関係スタッフによる分析やコメント討議、調査報告書の発行に関する実務的な編集作業の必要から毎回の会合を運営委員会と位置付けて開催、早期の編集終了・刊行をめざした。

 夏季研での分科会午後の冒頭に、報告Aとして、作成予定冊子をもとに行なった「コミュニケーションに関するアンケート調査報告」(発達研・浅井定雄氏)は、モノを介したコミュニケーションなどについて、午後の討議の基調となった。これを期して、分析作業を終了、データとともに不十分ながらも冊子としてまとめた。この調査報告書を「子ども、父母、教師、三者による協同(共同)の学校づくりに向けて−子どもの世界のコミュニケーションの実態を考える−」と題して教育センター冬季研において報告、「子どもは、自分や友だちをどうとらえているか、父母・教師をどうとらえているか」を探った。調査結果や分析、そして報告書をどのように活用していくのかが今後の課題となっている。
 今後共、思春期以降を見据えてこれからの研究内容・テーマについても継続して模索し、「思春期の発達問題」やその課題を明らかにしていくこととなる。

研究に関して


研究を進めていく上で、以下の視点を確認してきた。
1 発達理論に基づいているか
2 社会的教育的な情勢・状況を把握しているか
3 子どもたちの実態に基づいているか
4 教育現場が求めているものになっているか
5 研究成果の活用の展望
  そして、研究活動を今後どのように社会や教育現場に還元していくのか検討し、研究内容の記録・得られた研究成果を冊子か本にまとめて、組織的な研究を継続していこうと議論を進めている。

2004年の活動方針


2004年度も「思春期の子ども」研究を継続させていくことを確認している。当面、アンケート調査報告書の活用について、その可能性を検討しているところである。この間、アンケート分析に追われて実務作業のための運営委員会を繰り返し開催してきたが、刊行を機にこの研究会のあり方を捉え直して発展させようと議論もあり、また、「インターネット時代と子どもたちの認識・発達」に関する研究の継続も求められている。
 今後も、「現代の子どものコミュニケーション」「自主活動と社会的発達」など、これまでの報告や研究を踏まえ、また会員の意見を広く取り入れながら、学校教育や社会環境など発達をめぐる問題を精力的に検討していきたい。
 定例の研究例会についても多忙化の中で月例開催を継続していくのかといった研究会運営や会員組織に関すること、あるいは研究会活動と教育センターとの連携など、改善・整理していく課題についても、活動の中から議論を深めていくこととなろう。

研究会組織体制と構成員


・代表者  宮嶋邦明(京都府立大)、築山崇(京都府立大)
・事務局  小倉昭平(元同志社高校)、関谷健(元田辺高校)、西浦秀通(伏見工高)
・運営委員 略
・会員    略

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