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第5分科会(31日)
 
民主的カウンセリング・ワークショップ
 
芦田 幸子(民主カウンセリング研究会)
 
 
 「登校拒否児童の増加傾向ストップといじめ減少」先日の厚生労働省が発表しました。
その統計の数字は本当に信頼できるものなのでしょうか?
 普通の子、まじめな子が考えられないような事件を起こし 自分の子が被害者になるかもしれないという不安だけではなく、加害者になるかもしれないという不安にかられる親、次々におこる事件とその情報や教育行政の改悪に振り回され、ますます忙しく余裕のない教師や関係者。
 最近、戦後の歴史の中では考えられないようなことが次々におこって政治・経済・教育・文化などあらゆる分野で危機が迫っています。人間が人間らしく生きられない現代日本の大人の世界の矛盾が 敏感な子ども達を彼らがそれと意識しないままに、汚れた空気のように蝕んでいっているように思われます。いじめ・不登校・非行など どの子どもにもおこりうる問題になってきています。
 父親はリストラの不安を抱え、母親は子育ての悩みを持ち‥夫婦間も社会の人間関係もギスギ
スしてきています。
 本当に人間にとって必要なもの・大切なものは何なのか、人と温かく関わるにはどうしたらいいか、人間関係をどう作っていくか、・・・・そんな共感的な人との関わり・人間関係の実習の場として また自分自身の発見や生き方の探求の場として今回も「カウンセリング・ワークショップ」がもたれ、20代から80代の方までの教師・元教師・養護教諭・相談員・母親・父親・不登校や拒食症経験者などさまざまな16名の方が参加され いろいろな話が出されました。
 
◎人間の弱さ・もろさ・恐ろしさについて
 
・宅間被告の人間像 今の時代には想像できないが、戦争中の極限状態では考えられ沖縄戦など とオーバーラップする。今の子ども達の現状は極限状態ではないか?
・宅間被告の生育暦の中で家庭でも学校でも地域でも信頼できる人に1人も出会っていない。人 間を助けることは難しいが理解してあげる人が1人でもいたら‥と思う。
・自分のことを「変なおじさん」と呼んでいた。自分が変だとわかっているところは私と同じ。 攻撃性がどちらにむくかという問題、気持ちとしてはなんとなくわからなくもない。
・どんな人間だって悪魔になる可能性がある。エリート・競争社会からの脱落、人から愛情を受 けることなく話を聞いてあげる人もなかったということで宅間被告のような人間ができたので は・・・・人間は環境で悪魔にもなる、人間の弱さ、もろさをわかった上で子育てをしたり教壇に 立ったりすること必要。
・私もいつどんな悪いことをするかわからないと思っていた。昔、死ぬことばかり考えている時 は世界中の人を殺してしまいたい気分だった。
 
◎「気持ちを話す」「心を開く」ことについて
 
・兄弟の中で1番頭がよかった2番目の子が、中3の2学期に登校拒否になった。母親はオロオ ロするばかりだったが 仕事人間で今まで親らしいことをしたことがない父親が仕事を10日 間休んで 子どもの部屋で何もいわずに座って子どもと寝食をともにした。父親が何も言わず に子どもの側についてやり、子どもは立ち直れた。
・辛い気持ちを聞いてくれる人がいてくれて、だんだんよくなったんだと思う。
 私も家族がそんな風に聞いてくれたらもっと早くよくなっていたかもしれない。私はカウンセ ラーの先生が「あなたにとってつらい、大変な問題なんですね。一緒に考えていきましょう」 といわれて救われた。
・夫を亡くした時 夫の話をされたら辛く、でもへんに慰められたらひがんでしまう状態だった。 頭ではわかっているがどうしてもその感情がおこってきた。その時はただぐちを聞いてくれる 人がありがたかった。
・下の子は小2の時にいじめにあい、不登校になった。学校に行ったらまたいじめられると中学 校にも行けない状態が続いている。それでもこの子は自分の気持ちを出すからわかりやすい。 上の子は嵯峨野高のコスモス科に行ったが高3の2学期から受験一色になり不登校になり、拒 食症になった。下の子に手がかかったせいか「うちは3人家族や」「私は見捨てられた」「1 番辛い時に母親が自分の近くにいてくれなかった」と言う。うつ状態になり徘徊したりリスト カットしたり・・・辛い気持ちが外に出せないようで何を考えているのか、どうしてほしいの かわからない。
・中1で不登校になった娘。リストカットや拒食もあった。家(家族)の中で疎外感を感じてい るようだ。私もこの子と気があわず悩んでいる。自分の気持ちを話してくれたら・・・と思う。 声が聞きたい。心を開かせなくした原因は家族?学校?社会?
  19歳になり、まるで異次元の世界で生きているようで親とはギャップがありすぎ 普通の 会話ができない。
・拒食症の根底には生きていたくない、大人になりたくない、女になりたくないという気持ちが ある。私は母親から「あんたは何も言わないからわからない」と言われてきた。そう言われる とますます何も言えなくなった。
・心を開いたり、話をしたりする根っこには信頼関係が必要ではないか。話したら受け止めてく れるとわかってないと話せない。
 
◎家族の中で
 
・家は1人っ子なので兄弟の話を聞いていてうらやましいなあと思う、反面難しいなあとも思う。 中学生になってパソコンやゲームばかりで会話が減った。映画などに一緒に行って話しができ るとホッとする。
・娘は母親を見る目が厳しい気がする。反発もあるが親も子も成長して、時間が解決してくれる ことがある。
・子どもは母親とよくけんかしている。母親との関係は父親とはまた違う何かがある。
・子どもの中でも気があう子となんかあわない子がいる。そんなことないですか。
・家族が無言では不安になる。会話がないとしんどく沈黙に耐えられない。言葉でつながってい たい。無言でもいいと思えればいいのだが・・・何をもって家族はつながっているのか確かめ たい。
・嫌いな人というのはその人の中に自分の嫌いなところを見るからという話ある。私と娘はよく ぶつかるがその娘の夫にいわせると「娘はおかあさんにそっくり」だそうだ。
・母親は尊敬できる人だ。父親はそうでもなかったが夫が父親とそっくり。結局父親をそっくり な人を選んだんだなあと思う。
・娘が不登校になった時自分に似ているとわかった。私は時代が違ったから学校になんとかいけ たけれど 娘はいけなくなった。けれどかといって今その娘とすごく仲がよいわけではない。
・私の思い描いていた家族像があって、それに近づきたい一心で、もがき続け努力しつづけたエ ネルギーはやはり自分の育った家族に原点があるのだろう。それも思いもしなかった子どもの 不登校で私の描いた家族の夢はみごとに消えた。
・成人した娘2人とも父親を大切にする。「父親は私の好きなことをさせてくれた」といってい る。それと「お前らは大器晩成型や」と言われたのがよかったといっている。「おかあさんは 口うるさいばっかりだから右から左に聞き流してきた」といわれている。
・子どもの頃自分の思っていることを言って両親にすごく激しく叱られたのでその時に自分の思 っていることを言ってはいけないだと学習した。私は生まれてきてはいけなかったんだ、学校 にもいけない自分が親に不満などいってはいけないんだと思っていた。ずっと自己否定的な考 えをしていたので今でも誰かの期待に沿う行動をとってしまい自分を犠牲にしてしまう。
・今まで両親や社会の目ばかりを気にしてきたので、本当の自分の気持ちを大切にすることが難 しい。誰かの期待に沿ってしまう自分がいる。あんまり無理せずに相手の期待に沿いたい。自 分を大切にすることと犠牲になることのさじ加減がむつかしい。
・私は父親が浮気した時などに母親から八つ当たりされてよくいじめられた。でもその結果、人 間としての目標ができ今はそれがプラスになっていると思う。
 
◎平和、社会、教育現場について
 
・今の時代目標をもっても実現できない現実がある。日本に希望がもてない。今の若い人に目標 を持てとはいえない。努力しても報われない世の中・・まちがっている。
・批判する力が大切。「国家主義が正しい、天皇が偉い」と信じて戦争して失敗した歴史から学 ばなければいけない。
・有事法案が通って「どうせぼく連戦争に行くんだから」と子どもが言う。
・報道の仕方も偏っている。北朝鮮の報道で朝鮮学校の生徒を罵倒する大人がいる。学校の通学 バスも名前の上に紙を張って走っている。生徒達はどんな気持ちでいるのだろう。
・34年間教師をしてきたが、年々学校現場は忙しくなり、教師は追われている。子どもが職員 室に何か言いにきてもパソコンの画面から目をそらすことなく、子どもの顔を見ずに対応して いる時がある。「けがしたん?ほんなら保健室行っておいで!」という具合に・・・。教師が みんなパソコンに向かいしーんとした職員室はすさまじい。こんな非人間的な場所にいるとど うかなってしまうのでは・・と思うことある。とても人間を育てる場ではない。
 
☆感想文から
 
・この会に参加して、まず自分の心が少し軽くなりました。理由はそれぞれ異なりますが娘2人 が心のバランスを崩し妻もストレスを抱えている状況で娘が通院しているクリニックから父親 が聞き役になったら方が良いとの事。ここで話したことでストレスも軽減し、そして聞き役と しての方法も少しわかった気がします。受容的、共感的に相手の話を聞いたり接したりするこ とが1番だとわかっていても親子の間ではどうしても感情が入ってしまうものですが、あまり 肩に力を入れずにそうする事ができそうになりました。多くの人の話、体験談を聞いてここ最 近落ち込んでいた自分も救われました。ぜひ次回も参加したいです。
・多様な人々が(肩書きも内面も)集まっていて議論がいろいろな側面からされていたような気 がしました。でももっともっと時間がほしい感じですね。最後に職員室の寒い様子を聞いて本 当に背筋が凍った気がしました。子ども達って今、本当に孤独に耐えているんだ。これは何と かしないと!!!私に何がきるかな?やはり私は目の前の子どもをしっかり見ていくことと社 会に働きかけることこの両方をしていきます。あまり頑張りすぎずに 楽しく。
・この激しくなった環境の中で子育て、教員としての対処の仕方に悩んでいる人の多い時代。ま た自分自身がどう生きていけばよいかと悩み苦しんでおられる方々へのカウンセリングの実態 を知り学びたくて参加。やっばりたいへんだなあ、むつかしいなあ。でもいろいろ判りかけて きたみたい。来年もぜひ参加して少しでも周りの人に温かく接しられる人間になりたいと思い ました。そのためには平和であり、自由であり、人権が守られる世の中(社会・国家)になる よう微力を尽くしたいと思いました。重たい中身のある話を思いきって話してくださった方々 に感謝します。
・今回 内容がとても幅広かった気がします。体験に基づいた軍国教育の恐ろしさなどの話を聞 いて 現在の危険な状況をふまえた“自分を大切にすること”“人生に目標を持つこと”“平 和を求めていく行動の大切さ”を改めて革識しました。自分の今の生活をゆっくり見つめられ る唯一の時間として今日の1日がありました。
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