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特別報告@
  「人事考課」導入以降、東京の学校・職場は
金子 秀夫(東京都教職員組合)
 
(1)東京の教員の人事考課制度(2000年度〜)
 
 2000年に人事考課が導入されたが、「自己申告」「業績評価」の両方から成り立っている。
  1)自己申告,面接
    当初申告,中間申告,最終申告
    校長・教頭との面談
    授業参観
    校長1次評価,教頭2次評価,教育委員会3次評価
  2)業績評価
    「学習指導,生活・進路指導,学校運営,特別活動・その他」の評価項目を,「能力,    情意,実績」の評価要素で評価
    授業観察
    校長1次評価,教頭2次評価,教育委員会3次評価
 
(2)人事考課制度(業績評価)の賃金・処遇へのリンク
 
 東京の攻撃は,「賃金・処遇」へのリンクさせる、これが狙いであり、そのことから切り離して教員評価を論じても、かみ合わないことである。
  1)教育管理職の勤勉手当に成績率導入
    一律拠出と最下位者の減給分を原資にして,上位者に再配分
  2)特別昇給を業績評価にもとづく推薦に(2001年度〜)
    ブラックボックスの中で
  3)定期昇給の延伸(2005年度〜)
    1次、2次評定(絶対評価)が、C以下の者は3月昇給延伸
  4)人事異動への「活用」
    自己申告書を出さない者は、異動を一任したものとみなす(2000年度〜)
    人事異動要綱改悪強行の中で、校長の「人事構想」にもとづく異動に(2003年度〜)
  5)業績評価と連動させた研修体系に(2003年度〜)
    業績評価と指定研修を連動させる
  6)今後、成績主義をいっそう強化する人事・給与制度見直しを計画
 
 「人事考課体制」と我々は呼んでいる。爆弾の嵐のような攻撃の中で、「教育も声域ではない」「オール都庁」と言われて、教育の特殊性や配慮がすべて奪われてきている。総務局長を教育長にして、副知事待遇にしている。
 
(3)上からの「教育改革」の具体化の中で,学校・職場は
 
  1)学校管理運営規則が改定され(1998年夏〜)
   ○「職員会議の補助機関化」「校長の強力なリーダーシップ、権限強化」といいながら、実は、徹底的に校長の権限を奪い、強化されたのは上の方針を徹底させるためだけの権限と徹底できたか問われる責任だけ。
   ○米長教育委員は、「あなたたちは教育者ではない、経営者だ。」と言い、校長は「人事は、自分の思いのまま」と言う。
  2)人事考課制度の導入で(2000年度〜)
   ○「いままでも勤務評価は行ってきた。自己申告ができたり評価の基準が明確になったのは、改善と考えていい」と自分の気持ちを無理矢理整理する校長。
   ○「私は評価する人、あなたは評価される人」という立場をわきまえてという校長。
   ○成果・結果・効率性・形の重視・・・・・・過程・背景・事情の軽視
   ○「みんなでやっていく」から「個人責任で進めていく」へ
   ○管理されることは、楽なこと。自分の持ち場だけに目を配り、学校全体の動きも知らされないし、知る必要がなくなる。経過ではなく、結果だけが知らされる。同じ学校の教職員なのに、無責任な発言や、「評論家」口調が増えていく。
 
 このように、「賃金」「人事」とのリンクで、職場から反対の声や、動きや、実践を押さえつけて、教育委員会=管理職の思い通りの運営と教育を貫徹する。
 
  3)「主幹」制度の導入で(2003年〜)
   ○着任した早々,教務主任・生活指導主任に(教職員を企画・運営層と実践層に)
   ○分掌組織に相談するより,管理職と相談して個人で提案
   ○今までの教頭の仕事を主幹がやっている。
   ○「意に反したことをやらされるので苦しい」「なるんじゃなかったと後悔」「主幹は特攻隊員のようだ。戻ることも未来に希望を持つこともできない」などの声も。
   ○一部の主幹の徹底した「暴走」が生じてきている。教職員の意見や声も聞かず,「暴走」するので,組合員の中には感情的な反発を生み出しているところもある。
  4)石原「教育改革」の嵐の中で
   ○「都立高校改革」の次は「義務教育改革」,そして都立障害児学校,都立大学,都立短大にも。
   ○教育行政による教育内容への露骨な介入
   ○「日の丸君が代」での攻撃など
 
(4)労使による「人事考課制度検討会」のとりくみから
 
(5)ILO・ユネスコ「共同専門家委員会」の画期的報告
   −−人事考課制度は,「教員の地位勧告」に抵触する−−
 
(6)いま、あらたまて思うこと、大切にしたいこと
 
1)子ども、父母、地域との直接のつながりを断ち切ることは決してできない。
2)「学校を開く」のか、「学校をともにつくる」のか
3)「説明責任を果たす」ということ
−−「説明しておきさえすれば,あとは生徒。」保護者の自己責任」になっていないか
  4)子どもたちのすべての行動を,無意識に「評価」していないか
−−「子どもたちのために」から「子どもたちとともに」へ
  6)「T先生はなんとなく暇そうなので話しやすい」
    −−おとながゆったり構えているおだやかな学校
 
特別報告@をうけての質疑
 
○「主幹制度」・・・「一部の主幹の暴走」とあるが、組合の役をしながら「主幹」をしている。 それには、組合員の中からは一定の批判もあるのではないか。
○それについての論議は執行部としてはしていない。「主幹」とは、給料表も違う。
○「自己申告書を出さない人」どのくらいの割合,組合はどう思うのか。
○1年目には多かったが,「おどし」の中で,今年は減っている。都教組は提出の有無に関わら ず本人の意志を尊重と主張している。現実的には,未提出で人事には影響させていない、今年 は人事方針が変わったので、わからないが。
○上からの方針・・・何を指すか。具体的な表現にならないか。
○校長の「人事構想」・・・これ自体がおかしいと戦っている。あの人(個人)がいる、いらな いではおかしい。上意下達の中で、教育委員会の中のスタッフではどうにもならない部分は、 ドンと降りてきている。
○どこから反撃すべきか。
○校長を含めて、共通の認識を持つようになってきている。校長の権限すら奪われていく攻撃の 中で。自分のやりたいことがやれないという状況の中で。、また、「評価」は、現在開示はさ れていないが、「開示」を要求する中で、「告知」が行われたが、これは「本人開示」できた というものではない。さらなる取り組みを、苦情機関設置の要求も大切。
○教育改革全体の中で「教職員評価」が,どのように位置づくのか。教員の意識改革を進めるた めに,このような攻撃が行われているのではないか。
○そのとおりだと思う。具体的に「戦争に子どもを送るな」が身近に感じられる。管理職を含めて「モラルダウン」が起きている。管理職・教職員も含めて。
○アンケートの結果を数値化して欲しい。
○「面接をしますか、しませんか」などでは意見が分かれ、主張をなかなか数字に表しにくい。問題点をどう浮かび上がらせるか、という視点から検討したい。
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